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安倍政権が目論む限定性社員制度でクビ切りが容易に

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成長戦略の一環として労働市場の流動化を推し進めている安倍政権。その具体策として、勤務地・職務・労働時間のいずれかが限定される「限定正社員」制度の導入を検討しているが、これが正社員のクビ切りのハードルを下げると指摘されている。

限定正社員制度とは、正社員と非正社員の中間的な身分で、子育てと両立するため自宅近くの勤務地に限定して労働契約を結ぶなど、ライフスタイルに応じた働き方が選べる点がメリットだとされる。

しかし、労働問題に詳しいジャーナリストの金子雅臣氏は懸念すべきデメリットのほうが多いと危険視する。

「すでに金融・小売業界で限定正社員を採り入れている企業がありますが、賃金はおおむね従来の正社員の8割程度です」

それ以上に問題なのが、雇用の安定度が落ちるリスク。

「例えば、出版社との契約で職務を『ある特定の雑誌の編集』と書いた場合、廃刊になれば辞めざるを得ません。また、部品メーカーに入社する際、勤務地を『東京○○営業所限定』と書けば、その営業所が閉鎖されればクビになる。より解雇されやすいのが限定正社員というわけです」(金子氏)

しかも、それを不当だと訴えたところで、解雇無効とはならないのだ。

「従来の正社員は、(1)経営上の必要性、(2)解雇回避努力、(3)整理基準と人選の合理性、(4)労働者との協議という解雇4要件によって雇用が守られています。たとえ担当する職務や部署がなくなっても使用者は『本当に人員削減が必要なほど経営不振に陥っているか』『ほかの部署や勤務地への配転、出向など解雇を回避する努力を尽くしたか』といった点が問われ、労使が争う裁判となれば“解雇無効”とされるケースが大半でした。しかし、限定正社員の場合、『特定の勤務地や職種が消滅すれば契約が終了する』と就業規則や個別契約で定めていれば、4要件に優先される可能性が高い」(金子氏)

東京東部労働組合書記長の須田光照氏もこう懸念する。

「限定正社員導入の狙いは、この4要件を外し、正社員を解雇しやすくすることにあります。人事評価の低い正社員に『限定正社員になれ』と迫る企業も出てくるはず」

当然、“意図的”な閉鎖による大量解雇など、制度が悪用される可能性も捨てきれない。根本的な見直しの議論が必要だ。

(取材・文/興山英雄) 【関連記事】
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