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「国防」と「外交」の要となるインテリジェンス(情報)とは?

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防衛省と外務省という、ふたつの組織で働いてきた経験から「国防」と「外交」の要ともいうべきインテリジェンス(情報)の世界を解説しつつ、その重要性を理解していない日本の現状に警鐘を鳴らす『防衛省と外務省 歪んだ二つのインテリジェンス組織』。

尖閣諸島周辺の緊張が高まり、アメリカ政府の「通信傍受」が話題となるなか、国と国との息詰まるような「情報戦」の姿が具体的に、そして著者である福山隆氏の危機感とともに語られている。福山氏に聞いた。

―今回、こうして「インテリジェンス」、つまり「情報」をテーマに本を書かれた最大の理由は?

「この本にも何度も書きましたが、『知恵なき国は亡ぶ』といって、インテリジェンスは国が国際社会の中で生き残っていくためになくてはならない『防寒着』のようなモノです。また、そのように大切な『インテリジェンス』は、それを使う側にしっかりとした『志』があって初めて生きる……。逆の言い方をすれば『志なき国家に情報はいらない』というのが私の基本的な考えです。

ところが、戦後の日本が米国の占領政策の影響下をいまだに抜けられず、国家存亡のカギを握る『外交』『軍事』に関わるインテリジェンスもまた、米国と、その意思をまるで『伝声管』のように伝えるだけの外務省によって完全に支配されています。国防や軍事に関する情報までが防衛省ではなく、外務省経由でしか伝わらないという、極めて特異な状況が続いています。

私はかつて防衛庁(当時)から出向し、日米安保の最前線ともいうべき外務省北米局安全保障課や大韓民国駐在武官として働くなかで、こうした日本のゆがんだ状況を最前線の現場で身をもって体験してきました。この現状を多くの方々に知っていただきたいと考えたことがきっかけです」

―アメリカではNSA(国家安全保障局)が一般市民を含む大量の通信情報を傍受していたことが暴露され、話題になっていますが、いわゆるインテリジェンスの世界も技術の急速な発達で収集する情報の量が爆発的に増えて、ある意味「限界」にきてはいませんか?

「確かに技術の進歩により、集められる情報の量は飛躍的に増えていますが、その網にかかる大量の情報のほとんどが『ガラクタ』だというのが現実だったりもします。ですから時代が変わり、科学技術が発達しても、われわれが『ヒューミント』と呼ぶ人的な情報源、質の高いスパイの重要性は変わることがありません。

またどんなに質の高い情報を集めても、それを“どう生かすか”はその国のリーダーの資質にかかっているということも忘れてはいけないと思います」







―インテリジェンスという観点から日本は今後どうあるべきだと考えていますか?

「NHKの大河ドラマ『八重の桜』を観ていて思うのですが、会津藩は愚直に幕府への忠誠を尽くしたが故に、最後は徳川にも見捨てられ、悲劇的な最後を迎えることになりますよね。アメリカという大国の衰退が始まり、今や米中両国の覇権争いのはざまにいる日本が、このまま今のように対米追従でいては、近い将来、会津藩のような運命が待っていないとも限りません。そうした悲劇に陥らないためにも、日本は米国に依存しないインテリジェンスと、それを生かす『志』が必要です」

―最後にひとつ、防衛省を退官された福山さんが、こうした本を出版することで当局から監視や尾行の対象にはならないのですか?

「いやいや、詳しくは言えませんが、それは『イロイロ』とありますよ……(笑)」

(構成/川喜田 研 撮影/岡倉禎志)

●福山 隆(ふくやま・たかし)







1947年生まれ、長崎県出身。防衛大学校卒業後、陸上自衛隊幹部候補生として入隊。90年、外務省に出向し、韓国駐在武官として朝鮮半島のインテリジェンスに関わる。著書に『2013年、中国・北朝鮮・ロシアが攻めてくる』(共著、幻冬舎新書)など

■『防衛省と外務省 歪んだ二つのインテリジェンス組織』







幻冬舎新書 819円







「国防」の防衛省と「外交」の外務省。東アジアの緊張が高まるなか、重要性が増すインテリジェンス(情報)活動。ふたつの組織を渡り歩いた著者がインテリジェンスの重要性と、縄張り意識と省益主義によって歯車がかみ合っていない両省の現状を鋭く指摘







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