アベノミクスで浮かれる日本経済を吹き飛ばしかねない世界金融危機の火種が、中国でくすぶっていうのをご存知だろうか? その“元凶”としていま注目を集めているのが、中国特有の「シャドーバンキング」(影の銀行)と呼ばれる金融取引だ。
まず、シャドーバンキングとはどんなものなのか説明しておこう。神戸大学大学院経済学研究科准教授の梶谷懐氏はこう語る。
「シャドーバンキングには2種類あります。ひとつは“民間金融”と呼ばれる、非正規の金融業者による短期投資。このなかには、年間40%から60%という高金利でリスクの高い貸し出しを行なう、日本のヤミ金に近い業者も多数存在します」
なんともキナ臭い金融業者だが、実は問題になっているのは、もう一方のシャドーバンキングなのだという。
「それが、銀行の簿外取引を通じて貸し出しをする“委託貸付”です。代表的な仕組みとしては、まず資金の潤沢な国有企業が四大商銀などの国有銀行から非常に低い金利でお金を借りる。それを本業の設備投資などに使うのではなく、中堅の銀行にいったん預け、資金繰りに瀕している中小企業に高金利で貸す。この”委託貸付”が、中国のシャドーバンキングで圧倒的なシェアを占めています」(梶谷氏)
貸し手側の企業にとっては高いリターンが望め、仲介する銀行は貸し倒れのリスクを負わずに手数料を取れるというメリットがある。しかし、なぜ借り手側の中小企業は、この高金利融資にみすみす手を出すようなことをするのだろうか?
「中国の国有大手銀行は、同じく国有の大手企業を融資先としてガッチリ押さえているため、民間の中小企業にわざわざリスキーな貸し出しをする必要がありません。多くの中小企業は貸し出し対象から排除されているか、そうでなくとも国有企業とは比較にならない高金利を設定されてしまう。そのため、高利でリスキーなシャドーバンキングに巨大な需要が生まれるんです」(梶谷氏)
また、実は中国では民間企業だけでなく、地方政府もシャドーバンキングから資金を調達しているという。
「独自の財源を持てず、銀行から直接お金を借りることもできない中国の地方政府は、ダミー会社をつくって銀行から融資を受け、公共事業に資金をつぎ込んできました。しかし、総額14兆元(約220兆円)にまで借金が膨れ上がったため、2010年に政府が引き締めに入った。そこで今度はシャドーバンキングに手を染めるようになったんです。彼らが躍起になったのが不動産開発。高速道路や飛行場が山のように建設され、マンション開発もどんどん進めました。しかし、その多くはゴーストタウンと化し、まったく収益を生み出すことのない不良債権となるリスクが高まっています」(梶谷氏)
特にここ3年で爆発的に拡大したとされるシャドーバンキング全体の投資規模は、実に30兆元(約480兆円)に達するとの推計もある。現代中国研究家の津上俊哉氏はこう指摘する。
「特に2009年以降、中国は『とにかく投資をすればいい』といわんばかりに、収益を生まないところにバンバン金をつぎ込みすぎた。それで経済全体が変調をきたしているんです。過去に借りた融資を返さなければならない、でもキャッシュはない。だから仕方なくシャドーバンキングを使う。借り換えるたびに金利が上がる。ますますキャッシュがなくなる――そんな投資案件が中国全土に山のようにある。多くの中小企業や地方政府は、サラ金の多重債務者のような状態になりつつあるわけです」
このように、中国では地方政府までも借金まみれになっており、それが中国バブルの崩壊、ひいては世界的金融危機の引き金になりかねないのだ。
実際、6月の最終週、中国・上海株式市場の株価が連日のように最安値を更新。マーケットは緊迫感に包まれた。その後、株価はいったん持ち直しつつあるものの、予断を許さない状況にある。中国経済の“Xデー到来”が現実にならないことを願うばかりだ。
(取材・文/興山英雄、木場隆仁)
■週刊プレイボーイ29号「中国『影の銀行』バブル崩壊で世界経済大混乱!!」より 【関連記事】
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まず、シャドーバンキングとはどんなものなのか説明しておこう。神戸大学大学院経済学研究科准教授の梶谷懐氏はこう語る。
「シャドーバンキングには2種類あります。ひとつは“民間金融”と呼ばれる、非正規の金融業者による短期投資。このなかには、年間40%から60%という高金利でリスクの高い貸し出しを行なう、日本のヤミ金に近い業者も多数存在します」
なんともキナ臭い金融業者だが、実は問題になっているのは、もう一方のシャドーバンキングなのだという。
「それが、銀行の簿外取引を通じて貸し出しをする“委託貸付”です。代表的な仕組みとしては、まず資金の潤沢な国有企業が四大商銀などの国有銀行から非常に低い金利でお金を借りる。それを本業の設備投資などに使うのではなく、中堅の銀行にいったん預け、資金繰りに瀕している中小企業に高金利で貸す。この”委託貸付”が、中国のシャドーバンキングで圧倒的なシェアを占めています」(梶谷氏)
貸し手側の企業にとっては高いリターンが望め、仲介する銀行は貸し倒れのリスクを負わずに手数料を取れるというメリットがある。しかし、なぜ借り手側の中小企業は、この高金利融資にみすみす手を出すようなことをするのだろうか?
「中国の国有大手銀行は、同じく国有の大手企業を融資先としてガッチリ押さえているため、民間の中小企業にわざわざリスキーな貸し出しをする必要がありません。多くの中小企業は貸し出し対象から排除されているか、そうでなくとも国有企業とは比較にならない高金利を設定されてしまう。そのため、高利でリスキーなシャドーバンキングに巨大な需要が生まれるんです」(梶谷氏)
また、実は中国では民間企業だけでなく、地方政府もシャドーバンキングから資金を調達しているという。
「独自の財源を持てず、銀行から直接お金を借りることもできない中国の地方政府は、ダミー会社をつくって銀行から融資を受け、公共事業に資金をつぎ込んできました。しかし、総額14兆元(約220兆円)にまで借金が膨れ上がったため、2010年に政府が引き締めに入った。そこで今度はシャドーバンキングに手を染めるようになったんです。彼らが躍起になったのが不動産開発。高速道路や飛行場が山のように建設され、マンション開発もどんどん進めました。しかし、その多くはゴーストタウンと化し、まったく収益を生み出すことのない不良債権となるリスクが高まっています」(梶谷氏)
特にここ3年で爆発的に拡大したとされるシャドーバンキング全体の投資規模は、実に30兆元(約480兆円)に達するとの推計もある。現代中国研究家の津上俊哉氏はこう指摘する。
「特に2009年以降、中国は『とにかく投資をすればいい』といわんばかりに、収益を生まないところにバンバン金をつぎ込みすぎた。それで経済全体が変調をきたしているんです。過去に借りた融資を返さなければならない、でもキャッシュはない。だから仕方なくシャドーバンキングを使う。借り換えるたびに金利が上がる。ますますキャッシュがなくなる――そんな投資案件が中国全土に山のようにある。多くの中小企業や地方政府は、サラ金の多重債務者のような状態になりつつあるわけです」
このように、中国では地方政府までも借金まみれになっており、それが中国バブルの崩壊、ひいては世界的金融危機の引き金になりかねないのだ。
実際、6月の最終週、中国・上海株式市場の株価が連日のように最安値を更新。マーケットは緊迫感に包まれた。その後、株価はいったん持ち直しつつあるものの、予断を許さない状況にある。中国経済の“Xデー到来”が現実にならないことを願うばかりだ。
(取材・文/興山英雄、木場隆仁)
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