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総監督&脚本家が語る『攻殻機動隊ARISE』制作秘話

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公開2週間で興行収入1億円を突破した『攻殻機動隊』の新作『攻殻機動隊ARISE』の第1話。この映画で総監督・キャラクターデザインを務める黄瀬和哉(きせ・かずちか)氏、シリーズ構成・脚本を務める、作家の冲方丁(うぶかた・とう)氏、ふたりのトップ対談が実現した。

■前代未聞の弱い素子(?)が新作のウリ!

―おふたりにとっての『攻殻機動隊』(以下、攻殻)シリーズとの出会いは?

黄瀬 私は映画『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』(1995年公開)に作画監督で参加してたんですが、その前から原作を読んでたんで、まさか『攻殻』が仕事になるとは……と驚いたのを覚えてますね。

冲方 僕も原作マンガから読んでたんですけど、特にあの映画がヒットしたことがうれしかった。僕は小説家デビューが96年なんですが、その当時はSFは商品にならないっていわれてた時代。でもSFで勝負したいと思っていたので、『攻殻』の映画を観て、SFいけんじゃん!と勇気をもらったんですよ。

―そんな『攻殻』に今は携わっているわけですね。ではズバリ、新シリーズの最大の魅力とは?

冲方 やっぱり攻殻機動隊創設前の過去の話というところですよね。

黄瀬 あとは弱くてなんだかかわいい素子が見られるところ(笑)。

―ええ? 素子といえば最強に強くて冷静沈着のキレ者という、「弱い」「かわいい」の対極にある存在じゃないですか! 仲間のイシカワから“メスゴリラ”呼ばわりされた屈強な女ですよ?

黄瀬 確かに今までの映画やテレビシリーズでは達観してて完璧なカリスマのような存在でしたよね。でもだからこそ、過去を描く今作は未熟な少女みたいな素子が出たら面白いんじゃないかって。

冲方 ともかく今回の1話目では、素子をボロボロに負かしてしまえ!って思って書いてましたよ(笑)。

黄瀬 肉体的にも精神的にもね。なかなか見応えのある話になってます。







冲方 そこが苦労した点でもあるんですよね。いくら公安9課創設前といっても、全身義体のサイボーグで、電脳による電子戦にも長たけてるっていう素子を、どうやって追い詰めたらいいのかと。

黄瀬 僕は冲方さんが書いてきたものを見て、「面白い」と言うだけの役割でしたけど(笑)。

冲方 いやいや、黄瀬さんこそ相当の仕事量抱えてたじゃないですか。というか、黄瀬さんの「面白い」のハードルがめちゃくちゃ高かったですしね(笑)。

■原作者からの資料はまるで挑戦状

―過去の話にスポットを当てるというのは、企画のスタート当初から決まっていたんですか?

黄瀬 いえ、最初は何も決まってない状態でしたよ。話の方向性を定めるまでも紆余曲折。

冲方 そうなんですよ。士郎さん(原作者・士郎正宗氏)が作ってくれたアイデアやプロットが実にいやらしくて(笑)、特に過去の話を想定したものじゃなく自由に決められるような資料だったので。

黄瀬 いろいろな生かし方ができる分、試されてるみたいでね(笑)。

冲方 その資料が挑戦状じみてて、「おまえはこれで何を作る? ベストを見せてみろ!」と囁いてるようでした(笑)。

黄瀬 会議でもクリエイターたちがそれぞれの立場で、別々のことを遠慮なく主張してくるから、方向性を定めるのが本当に大変だったんですよね。

―皆さんが『攻殻』好きで、それぞれの『攻殻』像を持っているからなんでしょうね。

冲方 クリエイター同士の火花がすごかったんですよ。論争のつばぜり合いみたいな感じ。総監督の黄瀬さんに「入ってくるな、黙ってて」とか言っちゃったり(笑)。

黄瀬 あんまりまとまらないようなら、全部の意見を蹴散らしちゃったりしてましたけどね(笑)。

冲方 だけど、そういうふうにぶつかり合いながらも、ひとつの作品を一丸となって作っていく現場の雰囲気を見て、僕はプロダクションI.G自体が公安9課みたいだなぁとしみじみ思ってました。

黄瀬 あんないいもんじゃないですよ(笑)。

冲方 でもまぁ……会議開くよりも、黄瀬さんと僕のふたりで、喫煙所でぷふぁ~とタバコ吹かしながらしゃべってたことが、そのまま採用・決定ってなったこと、多くなかったですか?(笑)

黄瀬 そればっかりだった。僕も冲方さんも会議ではあんまりしゃべんないでほかの人に任せてたんだけど、ふたりで喫煙所で話すときは盛り上がるから。素子を弱くしようと決めたのも喫煙所(笑)。

―喫煙所密談、ハンパないです。

冲方 そうですね。だけど本当にそういう素子の表現が一番の見どころですからね。実際、今の現実社会でもネットワークが非常に発達してて、みんなすごく傷つけられやすい時代だと思うんですよ。

黄瀬 それで挫折する人も多いし。

冲方 だからこそ若い世代の人たちには、今回の新シリーズの素子を見て、人間ここまで傷ついても死なないんだ、周りから裏切られても生きていけるんだっていう部分を感じてもらいたいですね。

黄瀬 弱くてもタフに生きていく素子に注目してもらえれば。

―今までのシリーズとはひと味もふた味も違う素子の魅力があふれているってことですね! まったく新しい『攻殻』になりそうで、楽しみすぎます!

(取材・文/昌谷大介 牛嶋 健 武松佑季[A4studio] 撮影/高橋定敬)

●冲方丁(うぶかた・とう)







1977年生まれ。代表作『マルドゥック・スクランブル』シリーズなどにより、SF業界で才能を高く評価されている小説家・脚本家。『天地明察』で本屋大賞も受賞

●黄瀬和哉(きせ・かずちか)







1965年生まれ。プロダクションI.G取締役。すご腕アニメーターとして名を馳せ、映画版『攻殻』2作品では作画監督を担当。『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』でも作画監督を務める

■『攻殻機動隊ARISE』







劇場上映、有料配信、Blu-ray&DVDなど多メディア展開による全4部作(各約50分)の新シリーズ。公安9課(攻殻機動隊)創設前から描く物語である。『S.A.C.シリーズ』でも公安9課メンバーたちの出会いを描いているが、こちらとはパラレルワールド。第1部では早速素子、バトー、トグサの共闘シーンが堪能できる 【関連記事】
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