税制優遇による低価格で人気の高い軽自動車。性能面でもモデルチェンジごとに新技術を搭載し、燃費、走り、室内空間にしても、コンパクトカーに劣らないほどの進化を遂げてきた。しかし、そんな軽がここ数年、増税の矢面(やおもて)に立たされている。
まず懸念されているのが、TPP(環太平洋パートナーシップ)協定交渉だ。このTPPは、締結国相互間の国境を越えた自由な貿易体制を目指すもの。そのなかにはさまざまな非関税障壁の撤廃も含まれる。もしTPP交渉の過程で、アメリカが「軽優遇は非関税障壁だから、撤廃せよ」と主張したら……軽優遇措置の撤廃に向けて動きだすきっかけになりはしないだろうか?
また、日本は現在、EUとの間で日欧経済連携協定(EPA)の締結に向け、協議を進めている。この協定は、日本とEUとの間の貿易を自由化しようというものだ。ところがその交渉の過程で、欧州自動車工業会が「日本の軽の優遇措置の撤廃」を求める声明を発表した。日本側はEUが自動車輸入に対して課している10%の関税の削減を主張しているだけに、この要求を受け入れ、軽優遇撤廃に動く可能性もゼロではない。
ただ、最も危惧するのは、EUやアメリカの要求を逆手にとり、かつ「軽と小型車との不公平廃止」を口実に、環境自動車税が復活してくることだ。
環境自動車税とは、平成22年に総務省が発表した「環境自動車税(仮称)に関する基本的な考え方」という文書に登場した新たな税金だ。現在の自動車税と自動車重量税を一本化して、「税制簡素化」するために盛り込まれた。
そして軽については、「小型自動車との税負担の格差を一定程度縮小するよう軽自動車の税負担の引上げを行なう」「引き上げに伴う増収については小型自動車等の税負担軽減に充当」という考え方が示されていたのだ。つまり、現在優遇されている軽乗用車の税金(軽自動車税)を増税し、その分、小型乗用車の税金(自動車税)を軽減することになる。
軽と、同排気量(1リットル以下)に属する小型乗用車との税額には、なんと約4倍もの開きがある。つまり、もし単純に軽の税金を小型車に合わせるとしたら、大幅な増税になる可能性がある。
この環境自動車税の導入については、その後の東日本大震災の影響などもあり、現在棚上げになっている状態。しかし総務省がいったん打ち出した政策ということは、「そうすべきである」と官僚が考えているということを示している。このまま日の目を見ずに消えるだろう、というのは、あまりにも楽観的すぎる考え方だろう。
“庶民の味方”として売れ行きを伸ばしてきた軽の魅力を保つためにも、こうしたシナリオが現実化しなければいいのだが……。
(取材・文/植村祐介 撮影/岡倉禎志)
■週刊プレイボーイ27号「軽自動車を“増税包囲網”から死守せよ!!」より 【関連記事】
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まず懸念されているのが、TPP(環太平洋パートナーシップ)協定交渉だ。このTPPは、締結国相互間の国境を越えた自由な貿易体制を目指すもの。そのなかにはさまざまな非関税障壁の撤廃も含まれる。もしTPP交渉の過程で、アメリカが「軽優遇は非関税障壁だから、撤廃せよ」と主張したら……軽優遇措置の撤廃に向けて動きだすきっかけになりはしないだろうか?
また、日本は現在、EUとの間で日欧経済連携協定(EPA)の締結に向け、協議を進めている。この協定は、日本とEUとの間の貿易を自由化しようというものだ。ところがその交渉の過程で、欧州自動車工業会が「日本の軽の優遇措置の撤廃」を求める声明を発表した。日本側はEUが自動車輸入に対して課している10%の関税の削減を主張しているだけに、この要求を受け入れ、軽優遇撤廃に動く可能性もゼロではない。
ただ、最も危惧するのは、EUやアメリカの要求を逆手にとり、かつ「軽と小型車との不公平廃止」を口実に、環境自動車税が復活してくることだ。
環境自動車税とは、平成22年に総務省が発表した「環境自動車税(仮称)に関する基本的な考え方」という文書に登場した新たな税金だ。現在の自動車税と自動車重量税を一本化して、「税制簡素化」するために盛り込まれた。
そして軽については、「小型自動車との税負担の格差を一定程度縮小するよう軽自動車の税負担の引上げを行なう」「引き上げに伴う増収については小型自動車等の税負担軽減に充当」という考え方が示されていたのだ。つまり、現在優遇されている軽乗用車の税金(軽自動車税)を増税し、その分、小型乗用車の税金(自動車税)を軽減することになる。
軽と、同排気量(1リットル以下)に属する小型乗用車との税額には、なんと約4倍もの開きがある。つまり、もし単純に軽の税金を小型車に合わせるとしたら、大幅な増税になる可能性がある。
この環境自動車税の導入については、その後の東日本大震災の影響などもあり、現在棚上げになっている状態。しかし総務省がいったん打ち出した政策ということは、「そうすべきである」と官僚が考えているということを示している。このまま日の目を見ずに消えるだろう、というのは、あまりにも楽観的すぎる考え方だろう。
“庶民の味方”として売れ行きを伸ばしてきた軽の魅力を保つためにも、こうしたシナリオが現実化しなければいいのだが……。
(取材・文/植村祐介 撮影/岡倉禎志)
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