2008年、京都に竹かごを思わせるボディの車が誕生した。遊び心の中にも強いメッセージがあり、メイド・イン・地元の文化が薫る個性と魅力は十分―果たして、販売化への道は?
■強度も注目度も抜群。匠の実験作の未来は?
「ポルシェやフェラーリなんか目じゃない注目度ですわ(笑)」
東洋竹工(京都府向日[むこう]市)の大塚正洋(まさひろ)社長はうれしそうに話す。
地元の事業者たちが共同で作ったひとり乗り電気自動車「Bamgoo(バングー)」が街を走れば、竹かごのようなボディに目を引かれた人が思わず立ち止まり、携帯やスマホでの写真撮影が始まるという。
確かに、これは目立つ!
ボディにフレームはないが、ふたりの職人が1cm×2mの竹ひご約900本を1ヵ月にわたって丹念に編んだ竹かごボディは硬い。屋根には大人ひとりが乗っても大丈夫だという。
「万一、衝突しても竹だからボディがへこみ衝撃を吸収し、また元に戻る。大事故には至りません。名前ですか? BAMBOO(竹)とGOODを単純に組み合わせただけですわ(笑)」
家庭用コンセントで充電できて最長走行距離は50kmとか。いったいどこからこんな発想が?
「もともとは、京都大学のベンチャー・ビジネス・ラボラトリー(VBL)というプロジェクトのひとつでした。先端技術と京都の伝統文化を融合させた京都らしい電気自動車を作ろうということで。5年前、私らもそうですが、いろいろな事業者が加盟する京都市産業技術研究所に製作依頼があったんです。話を聞いたときにすぐ『そりゃ面白い!』と思いました」
大塚社長が興味を持ったのは、Bamgooを作ることによって全国で増える竹の放置林への対策のシンボルになると考えたこと。そして地元企業が地元の材料と地元の技術でモノを生み出せることを示すモデルケースになると直感したからだ。実際、そうなった。
駆動システムはトヨタ製だが、ほかはすべて地元製。東洋竹工はボディを担当。佐藤喜代松商店はサイドミラーやホイールに、紫外線に強い漆「MR漆」を塗布。京都樹脂はフロントピラー(フレーム)のない視認性に優れたフロントウインドウを製作。川島織物セルコンが通気性と弾性に優れた極薄のシートを製作した。
完成したBamgooは長らく京都大学が所有・展示していたが、担当教官が退任したことで、昨年、東洋竹工が引き取った。
「それで私が頻繁に街をチョイ乗りするので世間的には目新しくなったかなと。150万円くらいで売りたいのですが今のところ売れません(笑)。もっとも、これはもともと採算を考えたらできないプロジェクトでした。私たちのコンセプトはあくまでもモデルケースづくりですから」
また同時に、大塚社長が車好きだったことも製作にひと役買った。
「私は昔からバイクも車も好きでね。50年も前の免許取り立ての16歳ではメグロ(国産大型バイク)に乗って、ほとんど未舗装の下関まで600kmを2泊も3泊もかけて行ったりとか、一杯のラーメンを食べるために岡山県まで車で仲間で繰り出したりね」
車の故障も何度も経験した。だが、たいていは自分で修理した。
「昔の車が個性的で面白いのはもちろんだけど、昔はちょっと勉強すれば自分で直せました。でも今の車はコンピューターそのものだから、もう無理。修理も高くつく」
だからこそBamgooに注目してほしいと大塚社長は思っている。ボディの竹ひごは一本単位で交換可能で漆もウインドウも地元で調達できるからだ。ズバリ、Bamgooの第2号はあるのか?
「ええ、今度はスポーツタイプの車高の低いのを作りたいなと。ただ、ハードの部分だけは半分でもどこかから補助金が出ればね。バックアップもないなかで一緒にやってくれる企業はなかなかないです。私は、この世にないもんや初めて作るもんに挑戦することが面白くて仕方がない(笑)。大企業には絶対にできませんよ」
(取材・文/樫田秀樹 撮影/五十嵐和博)
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東洋竹工(京都府向日[むこう]市)の大塚正洋(まさひろ)社長はうれしそうに話す。
地元の事業者たちが共同で作ったひとり乗り電気自動車「Bamgoo(バングー)」が街を走れば、竹かごのようなボディに目を引かれた人が思わず立ち止まり、携帯やスマホでの写真撮影が始まるという。
確かに、これは目立つ!
ボディにフレームはないが、ふたりの職人が1cm×2mの竹ひご約900本を1ヵ月にわたって丹念に編んだ竹かごボディは硬い。屋根には大人ひとりが乗っても大丈夫だという。
「万一、衝突しても竹だからボディがへこみ衝撃を吸収し、また元に戻る。大事故には至りません。名前ですか? BAMBOO(竹)とGOODを単純に組み合わせただけですわ(笑)」
家庭用コンセントで充電できて最長走行距離は50kmとか。いったいどこからこんな発想が?
「もともとは、京都大学のベンチャー・ビジネス・ラボラトリー(VBL)というプロジェクトのひとつでした。先端技術と京都の伝統文化を融合させた京都らしい電気自動車を作ろうということで。5年前、私らもそうですが、いろいろな事業者が加盟する京都市産業技術研究所に製作依頼があったんです。話を聞いたときにすぐ『そりゃ面白い!』と思いました」
大塚社長が興味を持ったのは、Bamgooを作ることによって全国で増える竹の放置林への対策のシンボルになると考えたこと。そして地元企業が地元の材料と地元の技術でモノを生み出せることを示すモデルケースになると直感したからだ。実際、そうなった。
駆動システムはトヨタ製だが、ほかはすべて地元製。東洋竹工はボディを担当。佐藤喜代松商店はサイドミラーやホイールに、紫外線に強い漆「MR漆」を塗布。京都樹脂はフロントピラー(フレーム)のない視認性に優れたフロントウインドウを製作。川島織物セルコンが通気性と弾性に優れた極薄のシートを製作した。
完成したBamgooは長らく京都大学が所有・展示していたが、担当教官が退任したことで、昨年、東洋竹工が引き取った。
「それで私が頻繁に街をチョイ乗りするので世間的には目新しくなったかなと。150万円くらいで売りたいのですが今のところ売れません(笑)。もっとも、これはもともと採算を考えたらできないプロジェクトでした。私たちのコンセプトはあくまでもモデルケースづくりですから」
また同時に、大塚社長が車好きだったことも製作にひと役買った。
「私は昔からバイクも車も好きでね。50年も前の免許取り立ての16歳ではメグロ(国産大型バイク)に乗って、ほとんど未舗装の下関まで600kmを2泊も3泊もかけて行ったりとか、一杯のラーメンを食べるために岡山県まで車で仲間で繰り出したりね」
車の故障も何度も経験した。だが、たいていは自分で修理した。
「昔の車が個性的で面白いのはもちろんだけど、昔はちょっと勉強すれば自分で直せました。でも今の車はコンピューターそのものだから、もう無理。修理も高くつく」
だからこそBamgooに注目してほしいと大塚社長は思っている。ボディの竹ひごは一本単位で交換可能で漆もウインドウも地元で調達できるからだ。ズバリ、Bamgooの第2号はあるのか?
「ええ、今度はスポーツタイプの車高の低いのを作りたいなと。ただ、ハードの部分だけは半分でもどこかから補助金が出ればね。バックアップもないなかで一緒にやってくれる企業はなかなかないです。私は、この世にないもんや初めて作るもんに挑戦することが面白くて仕方がない(笑)。大企業には絶対にできませんよ」
(取材・文/樫田秀樹 撮影/五十嵐和博)
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