猪瀬直樹東京都知事が窮地に追い込まれている。
昨年11月、医療法人「徳洲会」グループから猪瀬知事が受け取った5000万円は選挙資金か、それとも個人的な借金か――仮に選挙資金ならば、公職選挙法が禁じる虚偽記載に当たる。猪瀬知事は「借用証」を公表するなどしているが、釈明の内容は二転三転するなど疑惑は深まるばかりだ。
ただ、仮に個人的な借金であったとしても「利息なし」「返済期限なし」「担保なし」で、捺印も収入印紙もない借用書一枚で5000万円もの大金を現金手渡しで貸し借りしていた事実は異様というほかない。
そもそも昨年11月の話が、なぜ今、出てきたのか。
「猪瀬知事が徳洲会から金を受け取っているとの話は、約2ヵ月前には各社ともつかんでいました。ただ、裏が取れず書けないでいた。ある社の記者は猪瀬知事本人に直当たりして、すごい剣幕で逆ギレされたそうです(苦笑)。最終的にスクープした朝日新聞の記者は検察から情報を得て書いたのですが、それが今年の11月だったということ」(全国紙社会部記者)
ちなみに、東京地検特捜部は昨年11月の時点で資金提供の事実を把握し、情報収集を開始している。
「ネタ元は徳洲会グループの元最高幹部・能宗克行(のうそう・そうゆき)氏。彼は徳洲会のドン・徳田虎雄氏の側近中の側近でしたが、虎雄氏の長女・越澤徳美(なるみ)容疑者、次女・スターン美千代容疑者らと対立、最終的には昨年9月に事務総長を解任されました。
その能宗氏が徳田家に反旗を翻ひるがえし、特捜部やマスコミに内部情報をリーク。次男・徳田毅(たけし)衆院議員の準強姦事件や昨年末の衆院選での公職選挙法違反(運動員買収)が明るみに出るのと同じ流れで、猪瀬知事の件も浮上したのです」(全国紙社会部記者)
今後、気になるのは猪瀬知事の進退、さらにはそのほかの大物政治家へ飛び火するかどうか。すでに、無所属の阿部知子衆院議員が昨年の衆院選直前、徳洲会グループから300万円を借り入れていたことが判明したが、そのほかにも、複数の大物政治家に億単位の金が流れているとの情報もある。
『トラオ 徳田虎雄 不随の病院王』の著者で、ジャーナリストの青木理(おさむ)氏はこう語る。
「徳田虎雄氏の盟友・石原慎太郎氏や亀井静香氏にまで火の粉が降りかかるのではとの声もありますが、私はこれ以上燃え広がる可能性は低いとみています。能宗氏がすべての発端になっている以上、彼が事務総長として関わった昨年9月以前の“悪事”を告白するとは考えにくい。
また、彼の性格からして、徳洲会のために尽力してくれた人に迷惑をかけるようなことはしない。それに検察もあまり動く様子が見られず、猪瀬氏についても立件に積極的な雰囲気ではないようです」
とはいえ、特捜部はすでに虎雄氏が入院している病院の特別室からパソコンを押収している。それには生々しい金のやりとりが記録されているとみられており、能宗氏の思惑とは関係なく捜査が進められる可能性もある。
「ただ、過去の記録が残っていても、時効の問題があるし、そもそも、こういった事案の違法性を法廷で立証するのは難しい。逮捕はしたものの、裁判で無罪となれば、検察の面目は丸潰れ。すでに(厚労省)村木事件や小沢(一郎)事件で検察の信用は地に落ちている。そのことで検察は及び腰になっていますが、一方で世論の動きも気になる。おそらく捜査するかしないかで頭を抱えているのではないでしょうか」(青木氏)
誰も責任を取らないで終わるか、猪瀬知事が退任に追い込まれるか、それとも、そのほかの大物政治家が……捜査の行方を見守りたい。
(取材・文/コバタカヒト[Neutral]) 【関連記事】
・猪瀬都知事と犬猿の仲“都議会のドン”が復活で五輪招致が大混乱
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昨年11月、医療法人「徳洲会」グループから猪瀬知事が受け取った5000万円は選挙資金か、それとも個人的な借金か――仮に選挙資金ならば、公職選挙法が禁じる虚偽記載に当たる。猪瀬知事は「借用証」を公表するなどしているが、釈明の内容は二転三転するなど疑惑は深まるばかりだ。
ただ、仮に個人的な借金であったとしても「利息なし」「返済期限なし」「担保なし」で、捺印も収入印紙もない借用書一枚で5000万円もの大金を現金手渡しで貸し借りしていた事実は異様というほかない。
そもそも昨年11月の話が、なぜ今、出てきたのか。
「猪瀬知事が徳洲会から金を受け取っているとの話は、約2ヵ月前には各社ともつかんでいました。ただ、裏が取れず書けないでいた。ある社の記者は猪瀬知事本人に直当たりして、すごい剣幕で逆ギレされたそうです(苦笑)。最終的にスクープした朝日新聞の記者は検察から情報を得て書いたのですが、それが今年の11月だったということ」(全国紙社会部記者)
ちなみに、東京地検特捜部は昨年11月の時点で資金提供の事実を把握し、情報収集を開始している。
「ネタ元は徳洲会グループの元最高幹部・能宗克行(のうそう・そうゆき)氏。彼は徳洲会のドン・徳田虎雄氏の側近中の側近でしたが、虎雄氏の長女・越澤徳美(なるみ)容疑者、次女・スターン美千代容疑者らと対立、最終的には昨年9月に事務総長を解任されました。
その能宗氏が徳田家に反旗を翻ひるがえし、特捜部やマスコミに内部情報をリーク。次男・徳田毅(たけし)衆院議員の準強姦事件や昨年末の衆院選での公職選挙法違反(運動員買収)が明るみに出るのと同じ流れで、猪瀬知事の件も浮上したのです」(全国紙社会部記者)
今後、気になるのは猪瀬知事の進退、さらにはそのほかの大物政治家へ飛び火するかどうか。すでに、無所属の阿部知子衆院議員が昨年の衆院選直前、徳洲会グループから300万円を借り入れていたことが判明したが、そのほかにも、複数の大物政治家に億単位の金が流れているとの情報もある。
『トラオ 徳田虎雄 不随の病院王』の著者で、ジャーナリストの青木理(おさむ)氏はこう語る。
「徳田虎雄氏の盟友・石原慎太郎氏や亀井静香氏にまで火の粉が降りかかるのではとの声もありますが、私はこれ以上燃え広がる可能性は低いとみています。能宗氏がすべての発端になっている以上、彼が事務総長として関わった昨年9月以前の“悪事”を告白するとは考えにくい。
また、彼の性格からして、徳洲会のために尽力してくれた人に迷惑をかけるようなことはしない。それに検察もあまり動く様子が見られず、猪瀬氏についても立件に積極的な雰囲気ではないようです」
とはいえ、特捜部はすでに虎雄氏が入院している病院の特別室からパソコンを押収している。それには生々しい金のやりとりが記録されているとみられており、能宗氏の思惑とは関係なく捜査が進められる可能性もある。
「ただ、過去の記録が残っていても、時効の問題があるし、そもそも、こういった事案の違法性を法廷で立証するのは難しい。逮捕はしたものの、裁判で無罪となれば、検察の面目は丸潰れ。すでに(厚労省)村木事件や小沢(一郎)事件で検察の信用は地に落ちている。そのことで検察は及び腰になっていますが、一方で世論の動きも気になる。おそらく捜査するかしないかで頭を抱えているのではないでしょうか」(青木氏)
誰も責任を取らないで終わるか、猪瀬知事が退任に追い込まれるか、それとも、そのほかの大物政治家が……捜査の行方を見守りたい。
(取材・文/コバタカヒト[Neutral]) 【関連記事】
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