日曜大工の道具・材料から家具、雑貨、家電、ペットまで、豊富な品揃えと安さをウリに全国各地に広がるホームセンター。その躍進を支えるのは、業界平均で3.5%程度の純利益率という驚きの薄利だ。
某ホームセンターのB主任が苦しい実情を明かす。
「自分の店ながら、薄利ぶりに驚きますよ。今夏にはライバル店に値段負けしないように、仕入れ1480円の扇風機を1490円で売ったこともありましたからね(苦笑)。もともと1980円で売りたい品を、目玉商品として店頭価格1780円にしていたところ、いきなりライバル店が1580円でチラシを打ったんです。急遽1780円から1490円に価格を差し替えてチラシ対抗しました。これなんて利益3.5%どころか、0.7%! 店長が本部に直談判しての大盤振る舞いでしたが、こんなこと、いつまでも続けられるわけがないですよねぇ……」
扇風機1台売って、儲けが10円では薄利多売にもほどがある。だが、こうしたライバル店との安売り競争は、ホームセンターにとって避けられないもの。そしてもうひとつ、ホームセンターにはつきもので、なおかつ経営を圧迫するものがある。
「実は、薄利に加えてホームセンターの経営を苦しめているのが万引きなんです。ウチの店の場合、月売り上げ平均1億2000万円に対して、万引き被害が売り上げの2%を超える250万円以上にもなる月があるんですよ。業界全体では平均1%程度らしいですが、これはマジ厳しいです」(B氏)
もちろん、お店も黙って耐えているわけではない。
「最近の防犯カメラはデジタル40倍で指先までハッキリ写り、しかも1ヵ月連続録画されますからね。周囲に警備員がいないからバレていないつもりでしょうが、全部ビデオ記録されています。店員も常習犯の顔を知っているので、いずれ現認で捕まえることになりますが、地域との関係もあるのであまり片っ端から捕まえるわけにも……」(B氏)
流通アナリストのA氏も万引きによる深刻な影響をこう指摘する。
「万引き被害の1%も、ボディブローのようにジワジワ効いてきます。利益が減ってくると最初に削るのがチラシなどの販促費です。ホームセンターのような業態の場合、販促費にかけられるのは売り上げの3~5%程度。増税と万引き被害の穴埋めで、完全に販促費分を食いつぶしてしまう計算です。これではジリ貧でしょう」
来年4月には現状の利益率に匹敵するほどの増税も控え、戦々恐々としているホームセンター業界。逆風に負けずに、いつまでも庶民の味方として頑張ってほしいものだ。
(取材/近兼拓史) 【関連記事】
・コンビニ冷蔵庫騒動は、思春期の“半径5メートル伝説”から脱皮できない若者が起こしている
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・潜入密着! “ジェネリック家電”はこうしてできる
・日本の大企業は、この10年で100兆円ため込んでいる
某ホームセンターのB主任が苦しい実情を明かす。
「自分の店ながら、薄利ぶりに驚きますよ。今夏にはライバル店に値段負けしないように、仕入れ1480円の扇風機を1490円で売ったこともありましたからね(苦笑)。もともと1980円で売りたい品を、目玉商品として店頭価格1780円にしていたところ、いきなりライバル店が1580円でチラシを打ったんです。急遽1780円から1490円に価格を差し替えてチラシ対抗しました。これなんて利益3.5%どころか、0.7%! 店長が本部に直談判しての大盤振る舞いでしたが、こんなこと、いつまでも続けられるわけがないですよねぇ……」
扇風機1台売って、儲けが10円では薄利多売にもほどがある。だが、こうしたライバル店との安売り競争は、ホームセンターにとって避けられないもの。そしてもうひとつ、ホームセンターにはつきもので、なおかつ経営を圧迫するものがある。
「実は、薄利に加えてホームセンターの経営を苦しめているのが万引きなんです。ウチの店の場合、月売り上げ平均1億2000万円に対して、万引き被害が売り上げの2%を超える250万円以上にもなる月があるんですよ。業界全体では平均1%程度らしいですが、これはマジ厳しいです」(B氏)
もちろん、お店も黙って耐えているわけではない。
「最近の防犯カメラはデジタル40倍で指先までハッキリ写り、しかも1ヵ月連続録画されますからね。周囲に警備員がいないからバレていないつもりでしょうが、全部ビデオ記録されています。店員も常習犯の顔を知っているので、いずれ現認で捕まえることになりますが、地域との関係もあるのであまり片っ端から捕まえるわけにも……」(B氏)
流通アナリストのA氏も万引きによる深刻な影響をこう指摘する。
「万引き被害の1%も、ボディブローのようにジワジワ効いてきます。利益が減ってくると最初に削るのがチラシなどの販促費です。ホームセンターのような業態の場合、販促費にかけられるのは売り上げの3~5%程度。増税と万引き被害の穴埋めで、完全に販促費分を食いつぶしてしまう計算です。これではジリ貧でしょう」
来年4月には現状の利益率に匹敵するほどの増税も控え、戦々恐々としているホームセンター業界。逆風に負けずに、いつまでも庶民の味方として頑張ってほしいものだ。
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