小笠原諸島に、海底噴火による新しい島が出現し、大きな話題を呼んでいる。
日本の領海・排他的経済水域が広がるのでは?と期待の声が上がる一方、海底火山の活発化と巨大地震発生の関連性について指摘する意見もある。東海地震、東南海地震、南海地震、およびその3つが連動する南海トラフ地震。これらの巨大地震が迫ってきているのではないか、という不安もぬぐいきれない。
内閣の重要政策に関する会議のひとつ「中央防災会議」では、上記3つの連動巨大地震の推定規模をM9.1と定めている。また、内閣府の「有識者検討会」も、南海トラフ巨大地震の経済被害は、東日本大震災の10倍、220兆円に達し、死者数は最悪で32万人と算定している。
この甚大な被害に加え、原子力発電所に万が一のことがあったらどうなるのか? 先日、やっと核燃料棒の取り出し作業が始まったばかりの福島第一原発。その深刻さは周知のとおりだ。
では、南海トラフ巨大地震で津波の直撃が予想される2つの原発。その被害状況をシミュレートしてみた。
■静岡県・浜岡原発(想定津波高10~30m)
駿河湾西端の御前崎から愛知県渥美半島まで延びる長大な遠州灘は、津波に直撃されやすい地域だ。御前崎の灯台が立つ海抜45mの岬の下には海抜2~6mの埋め立て地があり、御前崎港、海水浴場、観光施設、住宅地などが集中。岬の斜面を駆け上がり逃げられない人のために、海岸の御前崎公民館駐車場(海抜8m)に高さ約20mの鉄骨製津波避難タワーが造られている。
袋井市は、内陸2~3kmまで平均海抜4mほどの農地が広がり、津波・高潮の際の避難場所がなく、江戸時代まで多くの犠牲者を出してきた。そこで江戸時代に造られたのが、直径15~20m、高さ5mほどの人工盛り土避難地「命山」だった。
現在、袋井市の海岸部を走る国道150号線沿いにはふたつの命山が残り、このうちのひとつを収容人員800人の津波避難所へ改造する工事が進んでいる。
ところが、こうした遠州灘の災害史を無視して1970年代から建造されてきたのが、中部電力「浜岡原子力発電所」(御前崎市)だ。
浜岡原発は海抜10m以下の浜辺に5基の原子炉が並び、設計初期段階には津波のリスクはほとんど考慮されなかった。2011年5月に菅直人総理(当時)が浜岡原発全運転停止を要請したのも、津波対策の不備が最大の理由だったが、2年以上が過ぎた今、日本中の原発が再稼働を目指す流れに浜岡原発も乗ろうとしている。
しかし大津波が襲ったとき、浜岡原発は無事でいられる可能性は限りなく少ない。大津波による被害で爆発が起これば、偏西風によって首都圏まで大量の放射性物質が飛んでくる。そのとき、日本は首都機能を失い、福島第一原発事故をはるかに超える大災害となるのだ。
■愛媛県・伊方原発(想定津波高2~10m)
四国電力の「伊方原子力発電所」は現在、3基すべての原子炉が停止中だが、ウランとプルトニウム混合酸化物燃料によるプルサーマル発電計画の推進に向けて積極的に再稼働を目指している。
伊方原発は佐田岬半島北側の亀浦地区のため、太平洋側から襲ってくる大津波の影響はさほど受けない。佐田岬から回り込んでくる津波があるとしても、想定波高は2~10mだ。その点では、静岡県・遠州灘の「浜岡原発」よりも安全といえるかもしれない。
しかし、無視できないのは伊方原発のある伊方町佐田岬半島の南側の被災である。この地域を襲う最大波高は、すぐ隣の八幡浜市の1.6倍近い12 .6mだ。海抜10m以下の地域は大きな被害を受ける可能性が高い。
伊方町の東には町役場があり、四国電力の職員寮や事業所もある。つまり伊方町は、伊方原発のオペレーション本部なのだ。その重要な管理機能が消滅したらどうなるのだろうか。
巨大地震と大津波の混乱のなかでコントロールが利かなくなり、原子炉が暴走を始める怖さは日本人の誰もが知るところだ。
いくら稼働停止中といえども、そこには大量の核燃料と使用済み燃料がある。ほんの少しの手違いで放射性物質が巻き散らされることになる。津波高に関係なく、その危険性は残っている。
(取材/有賀 訓) 【関連記事】
・専門家が「ギャンブル」と呼ぶ、福島第一原発4号機の核燃料取り出し作業
・南海トラフ地震で世界遺産・三保の松原と登呂遺跡が消滅する!
・三浦半島沖で6mも海底が隆起。いよいよ富士山噴火が目前か?
・揺れる日本列島! 南海トラフ巨大地震は2016年に発生する?
・漁師が証言する大地震の前兆「サガミザメのオスが揚がったら要注意」
日本の領海・排他的経済水域が広がるのでは?と期待の声が上がる一方、海底火山の活発化と巨大地震発生の関連性について指摘する意見もある。東海地震、東南海地震、南海地震、およびその3つが連動する南海トラフ地震。これらの巨大地震が迫ってきているのではないか、という不安もぬぐいきれない。
内閣の重要政策に関する会議のひとつ「中央防災会議」では、上記3つの連動巨大地震の推定規模をM9.1と定めている。また、内閣府の「有識者検討会」も、南海トラフ巨大地震の経済被害は、東日本大震災の10倍、220兆円に達し、死者数は最悪で32万人と算定している。
この甚大な被害に加え、原子力発電所に万が一のことがあったらどうなるのか? 先日、やっと核燃料棒の取り出し作業が始まったばかりの福島第一原発。その深刻さは周知のとおりだ。
では、南海トラフ巨大地震で津波の直撃が予想される2つの原発。その被害状況をシミュレートしてみた。
■静岡県・浜岡原発(想定津波高10~30m)
駿河湾西端の御前崎から愛知県渥美半島まで延びる長大な遠州灘は、津波に直撃されやすい地域だ。御前崎の灯台が立つ海抜45mの岬の下には海抜2~6mの埋め立て地があり、御前崎港、海水浴場、観光施設、住宅地などが集中。岬の斜面を駆け上がり逃げられない人のために、海岸の御前崎公民館駐車場(海抜8m)に高さ約20mの鉄骨製津波避難タワーが造られている。
袋井市は、内陸2~3kmまで平均海抜4mほどの農地が広がり、津波・高潮の際の避難場所がなく、江戸時代まで多くの犠牲者を出してきた。そこで江戸時代に造られたのが、直径15~20m、高さ5mほどの人工盛り土避難地「命山」だった。
現在、袋井市の海岸部を走る国道150号線沿いにはふたつの命山が残り、このうちのひとつを収容人員800人の津波避難所へ改造する工事が進んでいる。
ところが、こうした遠州灘の災害史を無視して1970年代から建造されてきたのが、中部電力「浜岡原子力発電所」(御前崎市)だ。
浜岡原発は海抜10m以下の浜辺に5基の原子炉が並び、設計初期段階には津波のリスクはほとんど考慮されなかった。2011年5月に菅直人総理(当時)が浜岡原発全運転停止を要請したのも、津波対策の不備が最大の理由だったが、2年以上が過ぎた今、日本中の原発が再稼働を目指す流れに浜岡原発も乗ろうとしている。
しかし大津波が襲ったとき、浜岡原発は無事でいられる可能性は限りなく少ない。大津波による被害で爆発が起これば、偏西風によって首都圏まで大量の放射性物質が飛んでくる。そのとき、日本は首都機能を失い、福島第一原発事故をはるかに超える大災害となるのだ。
■愛媛県・伊方原発(想定津波高2~10m)
四国電力の「伊方原子力発電所」は現在、3基すべての原子炉が停止中だが、ウランとプルトニウム混合酸化物燃料によるプルサーマル発電計画の推進に向けて積極的に再稼働を目指している。
伊方原発は佐田岬半島北側の亀浦地区のため、太平洋側から襲ってくる大津波の影響はさほど受けない。佐田岬から回り込んでくる津波があるとしても、想定波高は2~10mだ。その点では、静岡県・遠州灘の「浜岡原発」よりも安全といえるかもしれない。
しかし、無視できないのは伊方原発のある伊方町佐田岬半島の南側の被災である。この地域を襲う最大波高は、すぐ隣の八幡浜市の1.6倍近い12 .6mだ。海抜10m以下の地域は大きな被害を受ける可能性が高い。
伊方町の東には町役場があり、四国電力の職員寮や事業所もある。つまり伊方町は、伊方原発のオペレーション本部なのだ。その重要な管理機能が消滅したらどうなるのだろうか。
巨大地震と大津波の混乱のなかでコントロールが利かなくなり、原子炉が暴走を始める怖さは日本人の誰もが知るところだ。
いくら稼働停止中といえども、そこには大量の核燃料と使用済み燃料がある。ほんの少しの手違いで放射性物質が巻き散らされることになる。津波高に関係なく、その危険性は残っている。
(取材/有賀 訓) 【関連記事】
・専門家が「ギャンブル」と呼ぶ、福島第一原発4号機の核燃料取り出し作業
・南海トラフ地震で世界遺産・三保の松原と登呂遺跡が消滅する!
・三浦半島沖で6mも海底が隆起。いよいよ富士山噴火が目前か?
・揺れる日本列島! 南海トラフ巨大地震は2016年に発生する?
・漁師が証言する大地震の前兆「サガミザメのオスが揚がったら要注意」