戸田恵梨香主演のドラマで、その後、映画も公開された『SPEC』シリーズ。作中では、未来を予知したり、他人の心の中を読んだりするなど、さまざま“SPEC”を持った能力者(SPECホルダー)が登場するが、ああした特殊能力者の存在は、物語の中だけの話ではないかもしれない。
例えば日本人特有とされる「日本耳」。「日本耳」とは、敏感かつ繊細に音を感じ取り、音からさまざまなイメージを描く能力に長けていることで、欧米人には見られない日本人特有の能力だという。ソニーマーケティングとネオマーケティングが、20代から50代までの男女計500名を対象に聴感覚の共同調査を実施したところ、この「日本耳」を持っている人が約10人に1人の割合でいることが判明した。この調査結果を受けて、専門家は次のようなコメントをしている。
「『日本語は発音が世界一美しい言語』と言われることがありますが、『さんさんと降り注ぐ』、『しんしんと積もる』などの擬音語や擬態語は、特定状況の些細な違いを細かに表現し、豊かに伝えるために紡がれた日本語ならではの表現です。音に対して繊細な感覚を持つことで、人の想像力、創造性は豊かになります。『日本耳』とは、耳から広がる想像力が欧米人とは異なる日本人特有の能力でしょう」とは、同調査を監修した精神科医の名越康文氏だ。
例えば、竹が石を打つ音が持つ風情を利用し、景色と空間のイメージをさらに深く味わえるようにと設置された日本庭園で見られる「ししおどし」は、音からさまざまなイメージを大きく膨らませるという日本特有の感覚を養ってきた。そのため、言語にも日本固有の音の表現が多く生まれたのだろうと、名越氏は分析する。
さらに同調査で、500人の中から働いている259人を対象に、職場での出世・昇給の早さを確認したところ、「出世・昇給が比較的早い」人の割合は全体では35.9%なのに対し、「日本耳」を持っている人は56.0%に上る結果となった。
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考えられる要因としては、コミュニケーション能力に関する調査の7項目すべてにおいて「日本耳」を持っている人は、全体を10~30%上回る高い数値だったことから「日本耳」=コミュニケーション能力が高い=出世・昇給が比較的早いのではないか?と推察できるそうだ。他人の話をよく聞き、さらに言葉の先にあるものをイメージして応対していることが、出世や昇給に影響しているのかもしれない。
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一方で、この調査結果を受けて憂慮する専門家もいる。
「調査結果を見ると、現代において日本人特有の『日本耳』が減少していることが見てとれます。些細な音に耳を澄まし、聴感覚を研ぎ澄ます機会、あるいは繊細な音を楽しむ環境が失われつつあるのかもしれません」とは、音環境コンサルタントの斎藤寛氏だ。斎藤氏は、日本人の約10人に1人しか「日本耳」の人がいなくなってしまったと感じているのだ。
「しかし『日本耳』を育てる・取り戻す方法はあります。日々の生活で、できる限り本来の音を忠実に再現する『高音質』に触れ、繊細な音に耳を澄ませ、想像力を広げる楽しみを持つことが重要です。『日本耳』を育て守ることは、日本人ならではの感性や意識を守り育てるという視点からも大切なことであると考えています」(斎藤氏)
確かに今回の調査結果では、音楽を聴くときの機材(環境)に対するこだわりが、全体が30.8%なのに対して、「日本耳」を持つ人は72.3%だったり、音質についても全体が48.0%なのに対して、「日本耳」を持つ人は83.0%と、はるかに上回っている。加えて「日本耳」を持っている人は、数年前の若い頃よりも現在のほうが聴く力が増していると感じている人が多く、逆にそれ以外の人はここ数年で聴く力が減少している自覚があることも判明した。
なお、ソニーホームエンタテインメント&サウンド事業本部の小野木康裕氏は、「ソニーのウォークマンは、楽曲製作者が意図した音や楽器本来の音の響き・臨場感を忠実に再現することが高音質へのこだわりであると考え、よりいっそう臨場感あふれる音楽体験を提供しています。今回の調査では、「『日本耳』の持ち主は、音楽を聴くときの音質や機材(環境)にこだわりを持っている」ことがわかりましたが、これは私たちのこだわりと合致しており、非常に喜ばしいことだと思います」とコメントしている。
聴力は視力と同様、年齢とともに低下するといわれているが、感性や想像力などに関連する「日本耳」は、機材や音質にこだわって音楽を聴くことで、加齢に反し育てていける可能性がある。『SPEC』の作中で登場した、異常に鋭敏な聴覚を持ったSPECホルダー(ドラマ第2話登場)になるのはムリとしても、日頃から高音質な音に触れることで聴く力は鍛えられる。出世や昇給を目指して、聴く力を鍛えてみてはどうだろう。 <文/日刊SPA!取材班>
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