8月31日に「シリアへの軍事介入を決断した」と発表したアメリカのオバマ大統領の動向に注目が集まっている。
現在は軍事介入の承認を議会に求めているところだが、当然のことながら反対意見も多い。また、アメリカ国内だけでなく、ロシアのプーチン大統領が「反対」を表明するなど、国際社会にも亀裂を生むきっかけにもなっている。
オバマ大統領がシリア政府軍への攻撃を決断した理由として、「一般市民に対して化学兵器を使用した」ことを挙げている。だが、実際のところ、その信憑性についてはまだ疑問点も多い。米政界にパイプを持つ中東某国の情報機関員はこう語る。
「内戦がドロ沼化していること、政府軍が化学兵器を保有していること、シリア国内で化学兵器による死者が出たことは事実。ただし、今回取り沙汰されているケースで化学兵器を扱ったのは政権側ではなく、アルカイダと強い関係を持つ反体制派のスンニ派過激派組織『ヌスラ戦線』だという観測もある。いずれにしても、アサド政権側が使用したという決定的証拠をアメリカ政府が持っていないことは間違いないだろう」
イラク戦争で最終的に「大量破壊兵器」が発見されなかったという“前科”もあり、国際社会だけでなく、アメリカの国内世論も参戦には懐疑的だ。時事通信社元ワシントン支局長の小関哲哉氏はこう語る。
「9・11同時多発テロへの報復として、アメリカがアフガニスタンのタリバン政権へ攻撃を開始してから約12年。2003年に戦争へ踏み切り、2011年末に撤退したイラクは今も実質的には“内戦状態”だし、来年末までに戦闘部隊をすべて撤退させる予定のアフガンも、現地の情勢は“安定化”には程遠い。対テロ戦争の長期化で、アメリカ社会には疲弊感と厭戦(えんせん)気分が広がっています」
こうした背景から、本来なら独断で軍事介入できる権限を持つオバマ大統領は、あえて議会の“お墨付き”をもらおうとしているのだ。しかし、こちらもすんなり通過とはいかない可能性もあるという。小関氏が続ける。
「シリア攻撃は、財政難のために国防費の大幅削減が急務となっているアメリカの現状にもそぐわない。採決の行方はいまだ不透明ですが、来年の中間選挙で全員改選される下院では、世論を見据えて与野党問わず軍事力行使に慎重な議員が多いようです」
国内外でこれだけ反対の声が多いなか、それでもオバマ大統領がシリア攻撃に踏み切ろうとしているのは、今年4月にアサド政権に対し、「生物化学兵器の使用は“一線を越えるもの”であり、アメリカは懲罰として軍事行動を発動する」と警告しているからだ。
もし実際にシリア政府軍が化学兵器を使用しているとすれば、このまま放置して“言行不一致”となった場合のリスクは高くつく……というわけだ。
つまり、オバマ大統領は「行くも地獄、戻るも地獄」の袋小路でジレンマに直面しているということ。早ければ11日にも、軍事介入の承認がアメリカ議会で採決される。
■週刊プレイボーイ38号「『ハンパすぎる』シリア攻撃で日本に“爆風”が飛んでくる!!」 【関連記事】
・元外務省・佐藤 優×国際ジャーナリスト・河合洋一郎が解読! 「緊迫するシリア情勢の裏側」
・加藤嘉一「中東の安定のカギを握るのが、アメリカのリーダーシップということは今も変わりません」
・アメリカでワーキングプア人口が膨らんでいる原因は?
・加藤嘉一「エジプトの混乱と同様の事態は、将来の日本にも十分起こり得ます!」
・元オバマ大統領SSが語る、ホワイトハウス過酷勤務の実態
現在は軍事介入の承認を議会に求めているところだが、当然のことながら反対意見も多い。また、アメリカ国内だけでなく、ロシアのプーチン大統領が「反対」を表明するなど、国際社会にも亀裂を生むきっかけにもなっている。
オバマ大統領がシリア政府軍への攻撃を決断した理由として、「一般市民に対して化学兵器を使用した」ことを挙げている。だが、実際のところ、その信憑性についてはまだ疑問点も多い。米政界にパイプを持つ中東某国の情報機関員はこう語る。
「内戦がドロ沼化していること、政府軍が化学兵器を保有していること、シリア国内で化学兵器による死者が出たことは事実。ただし、今回取り沙汰されているケースで化学兵器を扱ったのは政権側ではなく、アルカイダと強い関係を持つ反体制派のスンニ派過激派組織『ヌスラ戦線』だという観測もある。いずれにしても、アサド政権側が使用したという決定的証拠をアメリカ政府が持っていないことは間違いないだろう」
イラク戦争で最終的に「大量破壊兵器」が発見されなかったという“前科”もあり、国際社会だけでなく、アメリカの国内世論も参戦には懐疑的だ。時事通信社元ワシントン支局長の小関哲哉氏はこう語る。
「9・11同時多発テロへの報復として、アメリカがアフガニスタンのタリバン政権へ攻撃を開始してから約12年。2003年に戦争へ踏み切り、2011年末に撤退したイラクは今も実質的には“内戦状態”だし、来年末までに戦闘部隊をすべて撤退させる予定のアフガンも、現地の情勢は“安定化”には程遠い。対テロ戦争の長期化で、アメリカ社会には疲弊感と厭戦(えんせん)気分が広がっています」
こうした背景から、本来なら独断で軍事介入できる権限を持つオバマ大統領は、あえて議会の“お墨付き”をもらおうとしているのだ。しかし、こちらもすんなり通過とはいかない可能性もあるという。小関氏が続ける。
「シリア攻撃は、財政難のために国防費の大幅削減が急務となっているアメリカの現状にもそぐわない。採決の行方はいまだ不透明ですが、来年の中間選挙で全員改選される下院では、世論を見据えて与野党問わず軍事力行使に慎重な議員が多いようです」
国内外でこれだけ反対の声が多いなか、それでもオバマ大統領がシリア攻撃に踏み切ろうとしているのは、今年4月にアサド政権に対し、「生物化学兵器の使用は“一線を越えるもの”であり、アメリカは懲罰として軍事行動を発動する」と警告しているからだ。
もし実際にシリア政府軍が化学兵器を使用しているとすれば、このまま放置して“言行不一致”となった場合のリスクは高くつく……というわけだ。
つまり、オバマ大統領は「行くも地獄、戻るも地獄」の袋小路でジレンマに直面しているということ。早ければ11日にも、軍事介入の承認がアメリカ議会で採決される。
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