集英社が夏読書を推進するナツイチ・キャンペーン。その一環として、今年のマスコットを務めたAKB48がなんと直筆で読書感想文を書いてくれました。
その感想文を一冊にまとめた文集(9月17日発売)に収録される、昭和を生き抜いた大作家・浅田次郎×平成生まれの黄金アイドル・入山杏奈による年の差対談“イイとこ出し”をお届けします!
■小説家はウソをついてなんぼ
入山 私、ステージに上がるときは全然緊張しないんですけど、実は今、すごく緊張しているんです。
浅田 失礼だけど、あなた何歳?
入山 17歳です。
浅田 『鉄道員(ぽっぽや)』が発売された1997年は、まだこの世に生まれたばかりじゃないかっ!
入山 そうなんです。
浅田 そうか……(テーブルに手をつく)。お父さんは何歳?
入山 50歳です。
浅田 僕より10歳以上も年下とは(目を閉じたまま、しばらく落ち込む)。
入山 せ、先生。大丈夫ですか?
浅田 ちょっとヘコんでしまったな。で、このたび、君が生まれる前に僕が書いていた『鉄道員』を読んでくれた、というわけだ。
入山 はい。1日で読みました!
浅田 よかったね、分厚い本じゃなくて(笑)。読んでみてどんな感想を持ちましたか?
入山 すごく感動しました! 特に印象に残っているのは、駅長さんと亡くなった娘さんが会話をするシーン。駅長さんに「なんでウソをついたの?」と聞かれて、娘さんが「だって、おっかないって思うでしょ?」と。
浅田 自分で言うのもなんだけど、そこは“殺し文句”と言っていい会話だ。
入山 それと、雪が降り積もっている北海道の描写も印象的でした。札幌には行ったことがあるんですけど、雪景色は見たことがないのでキレイだろうなぁって。
浅田 実は、あの小説は現地に行かずに書いたんだ。二十数年前の今頃、真夏の東京で書きました。
入山 そうなんですか? すごい! ということは、想像だけで書かれたんですか?
浅田 そう。僕の小説はほとんどが作り話ですよ。なぜなら僕は自分の信念として、小説家はウソをついてなんぼだと思ってるんだ。日本には自分のことを暴露的に書く、いわゆる私小説こそ文学だという伝統があるんだけど、僕はそうは思わない。だって他人の不幸を読まされるのって、つまらないじゃないか。文学はもともとが娯楽であるから面白くなければいけないし、面白く書くためには、やっぱりウソの世界を定義するのが正しいと思いますね。
■入山杏奈17歳。結婚したいお年頃?
浅田 『鉄道員』は8つの短編で構成されているけど、そのほかに興味を惹(ひ)いたものはありますか?
入山 実は、一番好きだったのは『ラブ・レター』なんです。読んでいて、思わず泣いちゃいました。
浅田 ああいった偽装結婚というのは20年ぐらい前によくあった話らしい。日本で働きたい外国人を、自分の籍に入れる見返りにお金をもらう、というね。結婚といえば、入山さんは17歳だから、そろそろ結婚したい年頃なんじゃないか?
入山 いえ、17歳ですから、結婚はまだまだ先の話です(笑)。それにAKB48は恋愛禁止ですし。
浅田 恋愛禁止? それは誰が決めたんだ? グループの決まりであろうが、それは憲法違反だ! まるで『女工哀史』(1925年刊行。当時の女性労働者に関してのルポルタージュ本)じゃないか!
入山 でも、AKB48としてステージに立つことは自分の意思でやっていることだし、そのために何かを犠牲にしているとか、苦労しているという意識はないです。
浅田 それこそ『女工哀史』そのものだな(笑)。
■スマホに関しては反論できません(笑)
浅田 では入山さんが書いてくれた『鉄道員』の感想文を読ませていただきましょう。(読んで)あなた文才あるよ。これ自分で書いた?
入山 書きました!
浅田 ふむ。これは本を読んでる人の文章だな。普段から本を読む習慣があるだろう?
入山 はい、たまに読みます。昔から、時間があると本屋さんに行って、なんとなく目に入ったものを買うのが好きなんです。
浅田 本屋に行く習慣があるのか。それならキミは大丈夫だ。
入山 ありがとうございます! 先生も本を読まれるのがお好きだと聞いたんですが。
浅田 うん。僕は小さい頃から本を読むのが大好きでね。ご飯を食べることと同じぐらい、当然のように本を読んで過ごしています。
入山 一日に何時間ぐらい本を読まれますか?
浅田 毎日4時間ぐらいですね。そのおかげもあって“退屈”というものを経験したことがないんだ。入山さんは一日のうち4時間、何かしてることはありますか?
入山 AKB48の活動ですね。それ以外だと本を読んだり、DVDを観たり、スマホを触ったり。
浅田 一日の平均スマホ時間がトータル4時間ぐらいじゃないか?
入山 そうかもしれないです。
浅田 それは不毛だ。誰かと人間関係を築けるわけでもない。そんなことに4時間もかけてるのか?
入山 反論できない……(笑)。
浅田 こないだ健康ランドに行ったら、露天風呂の中でスマホ見てるやつがいてさ。湯船につかってもまだスマホをいじってる、あの光景は異様だった。何も考えず、呼吸するみたいにスマホをいじっていると、やっぱりバカになると思いますよ。
入山 私も特に理由なくスマホを触っていたりするので、これからは気をつけます。
浅田 この機会に皆さんに言っておきたいのは、スマホを使っている4時間があれば、本が一冊読めるということ。特に『鉄道員』は、どんなに読むのが遅い人でも必ず読めます。読書は、人の心を豊かにしてくれますよ。
***
先生が入山さんにさらに激しく攻め込んだ対談完全版は文集に収録しております。そちらもぜひお楽しみください!
(取材・文/井上 慶 撮影/薮下剛士)
●浅田次郎(あさだ・じろう)
1951年生まれ、東京都出身。陸上自衛隊除隊後、アパレル業界を経て1990年に作家デビュー。著書に『地下鉄に乗って』『壬生義士伝』『お腹召しませ』『中原の虹』『終わらざる夏』などがあり、創作ジャンルの幅は多岐にわたる。近著に『赤猫異聞』『一路』などがある。2013年10月に『黒書院の六兵衛』を上梓予定
●入山杏奈(いりやま・あんな)
1995年生まれ、千葉県出身。ニックネームは“あんにん”。2010年、「AKB48第七回研究生(10期生)オーディション」に合格し、研究生を経て、2012年11月よりチームAに所属。2012年5月に発売されたシングル『真夏のSounds good!』では初めて念願の選抜メンバー入りを果たした
■『AKB48×ナツイチ直筆読書感想文集』
「ナツイチ・キャンペーン」でAKB48のメンバー85人が執筆した、85冊分の書籍の感想文を収録。税込み998円で9月17日(火)に発売予定
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■また、8月に『週刊プレイボーイ』で連載が完結した「人間道場」が、『世の中それほど不公平じゃない』とタイトルを変え、単行本として11月5日に発売予定。爽快、痛快、悩めるあなたにも全然悩んでいないあなたにも薦めたい、人生相談の決定版。予約はこちらから
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・入山杏奈『戦う女』
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・ドームツアーからAKB48に新加入! JKT48兼任・ノザワレナ「初めて劇場に立った時は震えました」
その感想文を一冊にまとめた文集(9月17日発売)に収録される、昭和を生き抜いた大作家・浅田次郎×平成生まれの黄金アイドル・入山杏奈による年の差対談“イイとこ出し”をお届けします!
■小説家はウソをついてなんぼ
入山 私、ステージに上がるときは全然緊張しないんですけど、実は今、すごく緊張しているんです。
浅田 失礼だけど、あなた何歳?
入山 17歳です。
浅田 『鉄道員(ぽっぽや)』が発売された1997年は、まだこの世に生まれたばかりじゃないかっ!
入山 そうなんです。
浅田 そうか……(テーブルに手をつく)。お父さんは何歳?
入山 50歳です。
浅田 僕より10歳以上も年下とは(目を閉じたまま、しばらく落ち込む)。
入山 せ、先生。大丈夫ですか?
浅田 ちょっとヘコんでしまったな。で、このたび、君が生まれる前に僕が書いていた『鉄道員』を読んでくれた、というわけだ。
入山 はい。1日で読みました!
浅田 よかったね、分厚い本じゃなくて(笑)。読んでみてどんな感想を持ちましたか?
入山 すごく感動しました! 特に印象に残っているのは、駅長さんと亡くなった娘さんが会話をするシーン。駅長さんに「なんでウソをついたの?」と聞かれて、娘さんが「だって、おっかないって思うでしょ?」と。
浅田 自分で言うのもなんだけど、そこは“殺し文句”と言っていい会話だ。
入山 それと、雪が降り積もっている北海道の描写も印象的でした。札幌には行ったことがあるんですけど、雪景色は見たことがないのでキレイだろうなぁって。
浅田 実は、あの小説は現地に行かずに書いたんだ。二十数年前の今頃、真夏の東京で書きました。
入山 そうなんですか? すごい! ということは、想像だけで書かれたんですか?
浅田 そう。僕の小説はほとんどが作り話ですよ。なぜなら僕は自分の信念として、小説家はウソをついてなんぼだと思ってるんだ。日本には自分のことを暴露的に書く、いわゆる私小説こそ文学だという伝統があるんだけど、僕はそうは思わない。だって他人の不幸を読まされるのって、つまらないじゃないか。文学はもともとが娯楽であるから面白くなければいけないし、面白く書くためには、やっぱりウソの世界を定義するのが正しいと思いますね。
■入山杏奈17歳。結婚したいお年頃?
浅田 『鉄道員』は8つの短編で構成されているけど、そのほかに興味を惹(ひ)いたものはありますか?
入山 実は、一番好きだったのは『ラブ・レター』なんです。読んでいて、思わず泣いちゃいました。
浅田 ああいった偽装結婚というのは20年ぐらい前によくあった話らしい。日本で働きたい外国人を、自分の籍に入れる見返りにお金をもらう、というね。結婚といえば、入山さんは17歳だから、そろそろ結婚したい年頃なんじゃないか?
入山 いえ、17歳ですから、結婚はまだまだ先の話です(笑)。それにAKB48は恋愛禁止ですし。
浅田 恋愛禁止? それは誰が決めたんだ? グループの決まりであろうが、それは憲法違反だ! まるで『女工哀史』(1925年刊行。当時の女性労働者に関してのルポルタージュ本)じゃないか!
入山 でも、AKB48としてステージに立つことは自分の意思でやっていることだし、そのために何かを犠牲にしているとか、苦労しているという意識はないです。
浅田 それこそ『女工哀史』そのものだな(笑)。
■スマホに関しては反論できません(笑)
浅田 では入山さんが書いてくれた『鉄道員』の感想文を読ませていただきましょう。(読んで)あなた文才あるよ。これ自分で書いた?
入山 書きました!
浅田 ふむ。これは本を読んでる人の文章だな。普段から本を読む習慣があるだろう?
入山 はい、たまに読みます。昔から、時間があると本屋さんに行って、なんとなく目に入ったものを買うのが好きなんです。
浅田 本屋に行く習慣があるのか。それならキミは大丈夫だ。
入山 ありがとうございます! 先生も本を読まれるのがお好きだと聞いたんですが。
浅田 うん。僕は小さい頃から本を読むのが大好きでね。ご飯を食べることと同じぐらい、当然のように本を読んで過ごしています。
入山 一日に何時間ぐらい本を読まれますか?
浅田 毎日4時間ぐらいですね。そのおかげもあって“退屈”というものを経験したことがないんだ。入山さんは一日のうち4時間、何かしてることはありますか?
入山 AKB48の活動ですね。それ以外だと本を読んだり、DVDを観たり、スマホを触ったり。
浅田 一日の平均スマホ時間がトータル4時間ぐらいじゃないか?
入山 そうかもしれないです。
浅田 それは不毛だ。誰かと人間関係を築けるわけでもない。そんなことに4時間もかけてるのか?
入山 反論できない……(笑)。
浅田 こないだ健康ランドに行ったら、露天風呂の中でスマホ見てるやつがいてさ。湯船につかってもまだスマホをいじってる、あの光景は異様だった。何も考えず、呼吸するみたいにスマホをいじっていると、やっぱりバカになると思いますよ。
入山 私も特に理由なくスマホを触っていたりするので、これからは気をつけます。
浅田 この機会に皆さんに言っておきたいのは、スマホを使っている4時間があれば、本が一冊読めるということ。特に『鉄道員』は、どんなに読むのが遅い人でも必ず読めます。読書は、人の心を豊かにしてくれますよ。
***
先生が入山さんにさらに激しく攻め込んだ対談完全版は文集に収録しております。そちらもぜひお楽しみください!
(取材・文/井上 慶 撮影/薮下剛士)
●浅田次郎(あさだ・じろう)
1951年生まれ、東京都出身。陸上自衛隊除隊後、アパレル業界を経て1990年に作家デビュー。著書に『地下鉄に乗って』『壬生義士伝』『お腹召しませ』『中原の虹』『終わらざる夏』などがあり、創作ジャンルの幅は多岐にわたる。近著に『赤猫異聞』『一路』などがある。2013年10月に『黒書院の六兵衛』を上梓予定
●入山杏奈(いりやま・あんな)
1995年生まれ、千葉県出身。ニックネームは“あんにん”。2010年、「AKB48第七回研究生(10期生)オーディション」に合格し、研究生を経て、2012年11月よりチームAに所属。2012年5月に発売されたシングル『真夏のSounds good!』では初めて念願の選抜メンバー入りを果たした
■『AKB48×ナツイチ直筆読書感想文集』
「ナツイチ・キャンペーン」でAKB48のメンバー85人が執筆した、85冊分の書籍の感想文を収録。税込み998円で9月17日(火)に発売予定
■また、8月に『週刊プレイボーイ』で連載が完結した「人間道場」が、『世の中それほど不公平じゃない』とタイトルを変え、単行本として11月5日に発売予定。爽快、痛快、悩めるあなたにも全然悩んでいないあなたにも薦めたい、人生相談の決定版。予約はこちらから
・大島優子は「共喰い」。集英社文庫『ナツイチ』キャンペーンでAKB48の読書感想文・課題図書が発表!
・【ナツイチ×AKB48コラボ記念】復活、北方謙三の人生相談!AKB48・内田眞由美の悩みをぶった斬る!
・入山杏奈『戦う女』
・サプライズ発表! AKB48グループのオリジナル新公演が約2年ぶりにスタート!
・ドームツアーからAKB48に新加入! JKT48兼任・ノザワレナ「初めて劇場に立った時は震えました」