9月7日(日本時間8日早朝)、アルゼンチンのブエノスアイレスで開かれるIOC(国際オリンピック委員会)総会で、2020年夏季五輪の開催地が決定する。
これまで東京、マドリード(スペイン)、イスタンブール(トルコ)の3都市による熾烈な招致レースが繰り広げられてきたが、ここにきて新聞、テレビの報道などで「東京が有利」との声が多く聞こえてくる。
まず、3都市のうち一歩後退したとみられているのはイスタンブールだ。「イスラム圏初の五輪」という明確な開催理念を持ち、一時は最有力候補だったが、5月末から続く反政府デモで大失速した様子。
五輪取材の経験が豊富なスポーツライターの折山淑美氏が語る。
「イスタンブールの場合、トルコ国内の暴動に加え、隣国シリアの情勢も不安定。また、インフラ面でも不安が残る。さらに陸上選手のドーピング違反が大量に発覚したばかり。国際陸連会長は『(ドーピング問題は)招致レースには影響しない』と明言していましたが、なんらかのマイナス影響はあるとみるべきでしょう」
第1回投票で過半数を獲得する都市がなかった場合、最下位の都市を除いた2都市での決選投票となる。そして、仮にイスタンブールが1回目の投票で落選すると、東京とマドリードの決選投票となる。
IOC委員は104名(内訳はヨーロッパ45名、アジア23名、南北アメリカ18名、アフリカ12名、オセアニア6名)。そのうち98名が投票権を持ち、ヨーロッパ票は40もある。本来ならマドリードが有利となりそうだが? 長年、五輪とIOCの取材を続けるノンフィクション作家の松瀬学氏が解説する。
「投票の背景として忘れてはいけないのは、その次の2024年大会にフランスのパリが立候補する方針を打ち出していること。2024年は前回のパリ五輪から100周年ということもあり、パリとしてはどうしても開催したい。
また、同じくイタリアのローマも名乗りを上げようとしている。今回は会長選と追加競技決定投票も同時に行なわれる“三つどもえ選”。当然、各委員の投票行動は複雑な要素が絡んでくるので、そう単純な話ではありませんが、なかには『2020年はヨーロッパ開催を避けよう』と考える委員がいてもおかしくない」
さらに、マドリードは深刻な財政問題を抱え、スペイン国内で7月に死者79 名、負傷者130名以上を出した高速鉄道脱線事故が起こるなどインフラ面での不安要素も露呈している。
いずれにせよ、2都市とも懸念材料が多く、安全面、財政面で強い東京が“消去法”で残るというわけだ。
(取材/コバタカヒト)
■週刊プレイボーイ37号「2020年五輪招致、『東京が断然有利』はマジなのか!?」より 【関連記事】
・猪瀬都知事と犬猿の仲“都議会のドン”が復活で五輪招致が大混乱
・三浦展「東京のつくられ方」散歩 第2回「東京五輪」がいまひとつ盛り上がらない理由を東京論の視点から考える(PART1)
・東京五輪のライバル、トルコのデモはなぜ起こったのか?
・猪瀬都知事の「都営交通24時間化」構想。利用するのはいったい誰?
・レスリング「五輪除外」を決めたIOC理事会14人の“疑惑の人選過程”
これまで東京、マドリード(スペイン)、イスタンブール(トルコ)の3都市による熾烈な招致レースが繰り広げられてきたが、ここにきて新聞、テレビの報道などで「東京が有利」との声が多く聞こえてくる。
まず、3都市のうち一歩後退したとみられているのはイスタンブールだ。「イスラム圏初の五輪」という明確な開催理念を持ち、一時は最有力候補だったが、5月末から続く反政府デモで大失速した様子。
五輪取材の経験が豊富なスポーツライターの折山淑美氏が語る。
「イスタンブールの場合、トルコ国内の暴動に加え、隣国シリアの情勢も不安定。また、インフラ面でも不安が残る。さらに陸上選手のドーピング違反が大量に発覚したばかり。国際陸連会長は『(ドーピング問題は)招致レースには影響しない』と明言していましたが、なんらかのマイナス影響はあるとみるべきでしょう」
第1回投票で過半数を獲得する都市がなかった場合、最下位の都市を除いた2都市での決選投票となる。そして、仮にイスタンブールが1回目の投票で落選すると、東京とマドリードの決選投票となる。
IOC委員は104名(内訳はヨーロッパ45名、アジア23名、南北アメリカ18名、アフリカ12名、オセアニア6名)。そのうち98名が投票権を持ち、ヨーロッパ票は40もある。本来ならマドリードが有利となりそうだが? 長年、五輪とIOCの取材を続けるノンフィクション作家の松瀬学氏が解説する。
「投票の背景として忘れてはいけないのは、その次の2024年大会にフランスのパリが立候補する方針を打ち出していること。2024年は前回のパリ五輪から100周年ということもあり、パリとしてはどうしても開催したい。
また、同じくイタリアのローマも名乗りを上げようとしている。今回は会長選と追加競技決定投票も同時に行なわれる“三つどもえ選”。当然、各委員の投票行動は複雑な要素が絡んでくるので、そう単純な話ではありませんが、なかには『2020年はヨーロッパ開催を避けよう』と考える委員がいてもおかしくない」
さらに、マドリードは深刻な財政問題を抱え、スペイン国内で7月に死者79 名、負傷者130名以上を出した高速鉄道脱線事故が起こるなどインフラ面での不安要素も露呈している。
いずれにせよ、2都市とも懸念材料が多く、安全面、財政面で強い東京が“消去法”で残るというわけだ。
(取材/コバタカヒト)
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