今やチャリにもクルマ並みの高額保険が必要?
今年7月4日、自転車と歩行者との衝突事故をめぐる損害賠償請求で、神戸地裁は自転車を運転していた少年(当時、小学5年生)の母親に9500万円もの賠償金支払いを命じた。
少年は帰宅途中にマウンテンバイクで坂を時速20キロから30キロで下っていて、散歩中の60代女性に気づかずに正面衝突。転倒した女性は頭蓋骨を骨折し、現在も意識が戻っていない。
約1億円もの賠償額には驚くばかりだが、専門家の間では「被害女性の意識が戻らないことなどを加味すれば妥当」という声が多い。
また、1億円とはいわないまでも、「被害者のケガの程度によっては、自転車事故での数千万円にも上る高額賠償は過去にもある」(日本損害保険協会広報室・柴田文明氏)という。そして、賠償金を支払えず自己破産したというケースもあるようだ。
帰宅困難者が多数出た東日本大震災以降、自転車への注目度は高まり利用者も増えているように感じられるが、それに伴い、自転車が関係する交通事故も増えているのだろうか。
「交通事故全体の件数は減っており、自転車側の事故も減少しています。ただし、クルマやバイクに比べて自転車事故は減少のカーブが緩いため、交通事故全体に占める自転車事故の割合は増えているのです。なかでも、自転車と歩行者の事故は年間2500件から3000件で推移しており、決して減っているとは言い難い状況ですね」(自転車活用推進研究会理事・内海潤氏)
では、なぜ自転車と歩行者の事故は減らないのか。
「本来、車道を走行しなければいけない自転車が、歩道を通行することで歩行者との事故が起きてしまうことが多いです。そもそも自転車の歩道通行は、交通事故の多発が社会問題となっていた1970年の道路交通法改正で決められ、緊急避難的に自転車を歩道に上げたもの。それが慣習となってしまったわけです。法律でも歩道通行の際は徐行の義務がありますが認知されていませんし、徐行したのでは自転車のメリットも生かせません」(内海氏)
それに加えて、最近はヘッドホンやケータイ、無灯火、2台での並走、飲酒運転や信号無視などの交通違反をしている自転車も多い。
「そういう人は自ら事故を起こしにいくようなもの。絶対にやってはいけません」(内海氏)
しかしながら、交通ルールに則(のっと)り、安全運転をしていても避けられない事故もあるだろう。そこで、注目されているのが自転車保険だ。
都内のある大手自転車販売チェーンの店長が語る。
「実は今回の高額賠償判決が出る前から、自転車保険の問い合わせは増えていました。店としても、自転車を買う方には保険の話をするようにしていますよ」
自動車には強制加入の自賠責保険があるが、自転車にはない。
「事故を起こしてしまったときの無保険は、危機管理の考えが甘いといえます」(前出・内海氏)
では、自転車の保険には、どのようなものがあるのだろうか。
「年に一度、自転車ショップなどで点検、整備を受けた自転車に貼られるTSマークというものがあり、この付帯保険では、事故の被害者に最高で2000万円が補償されます。また、搭乗者の傷害補償もついています。そのほか、損害保険各社でも事故の相手方に支払われる個人賠償責任保険が用意されています。もし現在、損害保険に加入されているなら、追加加入もできるはず」(前出・柴田氏)
ほかにも、月々500円前後の保険料で最高1億円まで補償される自転車保険もある。身近な乗り物だけに、備えが大切なのである。
(取材・文/頓所直人) 【関連記事】
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少年は帰宅途中にマウンテンバイクで坂を時速20キロから30キロで下っていて、散歩中の60代女性に気づかずに正面衝突。転倒した女性は頭蓋骨を骨折し、現在も意識が戻っていない。
約1億円もの賠償額には驚くばかりだが、専門家の間では「被害女性の意識が戻らないことなどを加味すれば妥当」という声が多い。
また、1億円とはいわないまでも、「被害者のケガの程度によっては、自転車事故での数千万円にも上る高額賠償は過去にもある」(日本損害保険協会広報室・柴田文明氏)という。そして、賠償金を支払えず自己破産したというケースもあるようだ。
帰宅困難者が多数出た東日本大震災以降、自転車への注目度は高まり利用者も増えているように感じられるが、それに伴い、自転車が関係する交通事故も増えているのだろうか。
「交通事故全体の件数は減っており、自転車側の事故も減少しています。ただし、クルマやバイクに比べて自転車事故は減少のカーブが緩いため、交通事故全体に占める自転車事故の割合は増えているのです。なかでも、自転車と歩行者の事故は年間2500件から3000件で推移しており、決して減っているとは言い難い状況ですね」(自転車活用推進研究会理事・内海潤氏)
では、なぜ自転車と歩行者の事故は減らないのか。
「本来、車道を走行しなければいけない自転車が、歩道を通行することで歩行者との事故が起きてしまうことが多いです。そもそも自転車の歩道通行は、交通事故の多発が社会問題となっていた1970年の道路交通法改正で決められ、緊急避難的に自転車を歩道に上げたもの。それが慣習となってしまったわけです。法律でも歩道通行の際は徐行の義務がありますが認知されていませんし、徐行したのでは自転車のメリットも生かせません」(内海氏)
それに加えて、最近はヘッドホンやケータイ、無灯火、2台での並走、飲酒運転や信号無視などの交通違反をしている自転車も多い。
「そういう人は自ら事故を起こしにいくようなもの。絶対にやってはいけません」(内海氏)
しかしながら、交通ルールに則(のっと)り、安全運転をしていても避けられない事故もあるだろう。そこで、注目されているのが自転車保険だ。
都内のある大手自転車販売チェーンの店長が語る。
「実は今回の高額賠償判決が出る前から、自転車保険の問い合わせは増えていました。店としても、自転車を買う方には保険の話をするようにしていますよ」
自動車には強制加入の自賠責保険があるが、自転車にはない。
「事故を起こしてしまったときの無保険は、危機管理の考えが甘いといえます」(前出・内海氏)
では、自転車の保険には、どのようなものがあるのだろうか。
「年に一度、自転車ショップなどで点検、整備を受けた自転車に貼られるTSマークというものがあり、この付帯保険では、事故の被害者に最高で2000万円が補償されます。また、搭乗者の傷害補償もついています。そのほか、損害保険各社でも事故の相手方に支払われる個人賠償責任保険が用意されています。もし現在、損害保険に加入されているなら、追加加入もできるはず」(前出・柴田氏)
ほかにも、月々500円前後の保険料で最高1億円まで補償される自転車保険もある。身近な乗り物だけに、備えが大切なのである。
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