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妹が大学生のとき、新しく買った車の支払いに苦しんでいました。私は彼女のために小切手を切ることにしました。ちょうど妹の誕生日が近づいていたので、誕生日カードに小切手を同封して送りました。もちろん、いずれはお金を返してもらうつもりでした。
ところが、10年たってもお金は返ってきません。それどころか、未来永劫、1円も返って来そうにありませんでした。たまりかねて妹にお金を返すように迫ると、醜い言い争いになりました。見かねた父が仲裁に入ったほどです。
愛する人たちに与えれば、素晴らしい気分になれます。とはいえ、一方的に与えてばかりでは、不快な気持ちも芽生えてきます。逆に、一方的にもらうばかりでも居心地が悪いものです。
世界的ベストセラー『食べて、祈って、恋をして』の著者、エリザベス・ギルバート氏は、自身の「気前が良すぎる」傾向について書いています。エリザベス氏には当時の自分を「与え過ぎる人」と呼びます。彼女は、相手がどう感じるかに関わりなく、際限なく与えてしまったそうです。ベストセラーのおかげで大金を得た後、ギルバート氏は「みんなの夢を叶え、障害を払いのけ、人生を変容させる請負人」になっていたそうです。
サイコセラピストでエグゼクティブコーチのJonathan Alpert氏は、「与え過ぎる人」と「他人を喜ばせる人」は似ていると言います。「与え過ぎる人」は、贈り物で友人をつなぎとめようとします。人から好かれるためには気前よくならねばと考えるのです。また、常に自分より他人を優先するのも問題です。例えば、上司を失望させるのが嫌で、家族の葬儀より仕事を優先する人がいます。「他人を喜ばせる人は、他者を失望させるのを恐れて、相手の要求に従っていまいます」。
あなたも心当たりが? 自分も「与え過ぎる人」かもと思うなら、以下を参考に、その不自然な状況から抜け出してください。
自分が「与え過ぎる人」なら
たまにごちそうしてあげるのは気分がいいものです。しかし、友人に会うたびにあなたがすべてお金を払っていたり、いつも誰かに大金を貸していたりする状態なら、いずれは破綻するでしょう。
どうして与え過ぎてしまうのか?
一般的に、与えすぎる人は自尊心が低いのだとAlpert氏は言います。「彼らは、他者から肯定されるには与えねばならないと思い込んでいます」。また、他人を喜ばすタイプの人も「お金を出すこと以外に、他者を喜ばせられるものを持ってないと感じている」のだそうです。
なぜ、問題なのか?
返済されない借金や、明らかな不平等(5回続けてディナーをおごるとか)は、人間関係を脅かします。「The Economist」に掲載された研究によると、驚くべきことに、人は「気前が良すぎる人」が好きではないそうです。人は、自己中心的な人間と同じくらい、自己が無さ過ぎる人間も嫌いなのです。なぜか? あなたの与え過ぎのせいで、自分たちが悪い人間のように見えたり、感じたりするからです。与えすぎる人は、贈り物をすることで他者とつながろうとします。しかし、それは喜びよりも罪悪感を呼び起こすのです。
また、Alpert氏も指摘する通り、与えたくて与えるのと、与えなければという義務感から与えるのでは、まるで違います。前者は素直に満足感を得られますが、後者は恨みにもつながります。友人が「お金がない」と言うのでランチをおごったのに、後日その友人がFacebookに休暇旅行を楽しんでいる写真をたくさんアップしていたらどんな気持ちがするでしょうか。「お金がないんじゃなかったの?」
では、どうすれば?
いちど自分の動機を調べてください。なぜあなたはそんなに与えるのですか? 何を得たいと望んでいる? Alpert氏はズバリ問いかけます。「友人関係を保つため?」。もしそうなら、立ち止まって考えてください。おおげさな贈り物などしなくても、人はあなたを愛してくれるはずです。
もしかすると、あなたにお金を遣わせようとする特定の友人がいるのかもしれません。「多くを要求する人の言いなりにならないでください」Mortgage Corp East社の融資担当者、Ryan Morgan氏は訴えます。「相手が悪いのではなく、与えるあなたが悪いのです」。
もし、友人を助けたい気持ちから無理をしているなら、丁寧に、でも正直に「あなたは大切な友人だけど、これ以上は与えられない」と言いましょう。「理由を細かく説明する必要はありません」マナーの専門家Thomas P. Farley氏は「シンプルに伝えれば十分です」と言います。
友人に「与える過ぎる人」がいるなら
私の友人のレイチェル(仮名)は、与えすぎる人の典型です。周囲の人たちに、100ドルもするスパの入場券や、高級な手作りせっけんのセットなど、高価な贈り物を与え続けています。ただランチを一緒に食べたというだけでです。私や友人たちも、はじめはレイチェルが贈り物をくれるのを喜んでいました。ところが、ある時から居心地の悪さに変わりました。あまりにも頻繁で、あまりにも一方的だからです。
与え過ぎはなぜ起きるか?
ギルバート氏はエッセイの中で、与え過ぎたのは、「人生の残りの時間を、無条件にかわいがられ、敬われ、賞賛され、愛されるため」だったと書いています。それゆえ、彼女は最も身近で最も愛している人びとに与え続けたのです。「感謝されることに依存していました。それはドラッグみたいな喜びでした」。また、与えることで「自分には不釣り合いな成功の、罪滅ぼしができる」と感じていたそうです。与えることで、彼女自身も心の安らぎを得ていたのです。
なぜ、問題なのか?
では何が問題なのでしょうか? Farley氏は、与えられている側も微妙な立場に立たされると言います。「きっと自分がキープされた友人のように感じるでしょう」。先ほどのレイチェルのケースでは、与えられる私たちは、そんなに物をもらえる理由がわからないし、お返しする余裕もなくて困っていました(お返しする必要性も感じません)。でも、お返しすべきなのでしょうか?
「与えられた人は、負い目を感じるでしょう」と、Morgan氏は言います。「例えば、私があなたのところへ行ってお金を貸して欲しいと頼んだとします。もちろんお金を貸してもらえたら助かります。しかし同時に、お金を借りねばならない自分は、無責任で、無節操、劣った人間だと感じるでしょう」。
お金の問題だけではありません。いつもご飯をおごってくれたり、プレゼントをくれる友人がいるなら、自分に問いかけてみてください。彼らが与えてくれなくなっても友達でいるか?と。贈り物の代償として友情を差し出しているなら、それは問題です。
では、どうすれば?
質問です。あなたは友人の与え過ぎを助長していませんか? まぎらわしい態度をとっていませんか? 例えば、あなたがディナーの伝票を細かくチェックし始めれば、友人はその場は自分がおごらなくてはいけないと感じるかもしれません。Farley氏はこう言います。「もしそんな行動をとっているなら、あなたは友人とのディナーを楽しんでいないか、本来は外食する余裕などない状況なのです」。
Farley氏は、状況を不自然だと感じるなら、与え過ぎる友人とゆっくり話し会ってみるべきだと言います。ただし、慎重に。多くの場合、与え過ぎる人は自分の行動が悪いことだとは思っていません。あなたの話にショックを受ける可能性があります。
Farley氏はアドバイスしています。「例えばこんな風に言ってみます。『あなたの親切には感謝しているわ。ありがとう。でも、これ以上もらい続けるわけにはいかないの』」。シンプルですが、要点を抑えてあり、相手を傷つけません。
最後に。これはあらゆることに当てはまりますが、不快な状況から抜け出したいなら、自ら行動して変化を起こしてください。
Are You an Over-Giver? When Generosity Is Bad For Your Friendships | LearnVest
Karyn Polewaczyk(原文/訳:伊藤貴之)
Image remixed from rnl and mast3r (Shutterstock).
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