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アニメの制作費が安いのは古い習慣と多層構造

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世界からの注目度とは裏腹に、安い給料など悲惨な労働環境が話題になっている日本のアニメ業界。制作会社側はどのように考えているのだろうか。

とある老舗のアニメ制作会社の社長に話を聞くことができた。

「スタッフの皆さんにはいつも申し訳ないと思っています。でも、こうでもしないとやっていけません。実はアニメの制作費というのは非常に安く、制作会社は採算が取りにくい仕組みになっているんです。だから、アニメの制作会社の多くは作品を作っても赤字が出てしまう。しかも社内の内部留保もなく、常に自転車操業を強いられているような状況です」

なぜアニメの制作費は安いのか? アニメ雑誌の元編集者M氏がその理由を説明してくれた。

「古参のアニメ関係者から話を聞いたのですが、日本で連続テレビアニメが作られ始めた頃からアニメ業界の“低制作費、低賃金”体質は始まっていたようです。当時のアニメ制作会社は、格安で仕事を請け負っていました。そして、お金を出すテレビ局やスポンサーは『アニメは安価で作れるもの』と認識し、それが定着してしまった……ということだと思います」

また、1960年代から1970年代はアニメ自体が少なく、おもちゃやグッズなどの関連商品が飛ぶように売れた。当時はマンガや小説を原作としない、アニメ制作会社発のオリジナル作品が主流だったこともあり、制作会社にもそれなりのライセンス料(著作権使用料)が支払われていた。

しかし、不況により、アニメの制作費を一社で賄(まかな)うスポンサー企業が激減した。



「そこで生まれたのが『製作委員会方式』と呼ばれるシステムです。複数の企業が共同で出資するというもので、これによって制作費の調達が容易になっただけでなく、興行が失敗したときのリスクの分散にもつながりました。

しかし、数社が出資に絡んでいることもあってか、新しいアニメの企画は“利益が計算できない”ものは通りにくくなりました。その結果、人気がある小説やマンガが原作のアニメが増加、一方で制作会社発のオリジナルアニメは減少し、制作会社が稼ぎにくくなったのです。

もちろん、毎年、数多くのアニメが作られるのは『製作委員会方式』のおかげですし、新しいアニメの仕事がなければ制作会社は存在すらできないので、このシステムを否定できないのですが……」(M氏)

また、アニメ業界特有の多層構造も現場を苦しめる要因になっている。M氏が続ける。

「アニメ制作の現場には、まずテレビ局や広告代理店から直接アニメ制作を発注される『元請け』と呼ばれる制作会社があります。しかし、元請け会社の多くは、下請けの制作会社に各話の制作を任せるケースが多い。これが『グロス請け』と呼ばれるものです。

しかし、グロス請けの会社も制作能力に限界があるので、さらに下請けの会社、孫請けの会社に発注をかけることになる。つまり中間業者が多く、現場には微々たる金額しか下りてこないのです」

このように問題の原因はかなり根深い。しかし、このままでは制作現場が疲弊していくばかりなのは確かだ。

(取材/たにゆき) 【関連記事】
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