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ってどういうこと?
この白黒のタイヤのホイールみたいな絵は、ただ白地に黒の線でできています。でもこれをある見方で見ると、奇妙にも美しいものが見えてきます。絵が点滅し始めるんです。目の錯覚系の絵ってよくありますが、この絵がちょっと独特なのは、そこに自分の脳のα波のリズムが見られるってことです。
まず、この目の錯覚を体験するにはちょっと練習が必要かもしれません。白黒のホイールに焦点を合わせるんじゃなく、そこからほんの数インチ(1インチ=約2.5センチ)ほど離れたところを見つめます。ホイールを周辺視野に置いた状態にすると、その中央が明るい星のように瞬くのが見られるはずです。さらにその残像も見られて、2度美味しい錯覚になります。1分ほど明るく輝くホイールを見た後で、何もない白い壁なんかに目を移すと、色が反転して瞬くホイールがまた楽しめます。
この錯覚に着目したのは、神経科学者のロディカ・ソコリウク氏とルフィン・ヴァンルレン氏です。彼らは、この錯覚に見られる画像の点滅は脳のα波の動きを示すものだとする論文を発表しました。
「α波」ってよく聞く言葉ですが、これは人の脳波を初めて測定したハンス・ベルガーが最初に検知した脳の信号で、初めて発見されたために「α」と名付けられました。通常は10Hz(1秒間に10回)前後のサイクルですが、それがソコリウク氏とヴァンルレン氏が上の画像の錯覚とα波を関連付けた所以です。というのは、上の絵で点滅現象を見た被験者に、異なるリズム(周波数)で実際に点滅するホイールを数パターン見せ、どの周波数が錯覚で見たものと近かったか聞いてみました。すると、回答された周波数の平均値は9.1Hzとα波に近いものになったんです。
でもそれだけじゃありません。ソコリウク氏とヴァンルレン氏は、被験者のα波の動きと点滅する錯覚の間に直接的な相関をも発見しました。論文の概要には以下のようにあります。
脳波検査での後頭葉αのリズムには唯一、報告された錯覚と同様の経時変化があった。αの振れ幅が強いとき、被験者が錯覚を報告する確率は高まった。このように点滅現象に影響を受けた変化での発振周波数のピークは、被験者対被験者ベースでは、安静時に視覚刺激なしで測定した個人のα波の周波数と如実に相関していた。 そんなわけでこのホイールを見ると、普通じゃ見られないα波のリズムを目で見ることができるってことなんです。
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Adam Clark Estes(原文/miho)
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