俊足だからといって、盗塁を稼げるとは限らない――50m走5秒7という快足を持つDeNAの梶谷隆幸(24)には、この言葉がピタリと当てはまっていた。
昨年、オープン戦だけで10盗塁を決め、気の早いファンは「シーズンでも盗塁王になれる」と息巻いた。しかし、現実はそう簡単に思い通りにならなかった。『1番・遊撃』で開幕スタメンを勝ち取ったものの、まず出塁できない。ランナーのいる場面で、内野ゴロを放ち、併殺崩れで1塁に残っても、スタートが切れない。4月の盗塁企図はわずか2。いずれも失敗に終わった。
盗塁5、盗塁死8――大きな期待を寄せられたが、ブレイクすることなく、俊足・梶谷の2012年シーズンは幕を閉じた。
背水の陣で臨んだ2013年、梶谷は信じられないチョンボを連発する。
二塁でスタメンを張った4月9日の広島戦、3回表2死満塁で遊ゴロが飛ぶ。しかし、打球を処理した石川が二塁へ投げようとするも、なぜか梶谷はベースカバーに入らず、一塁方向へ走っていた。このあいだに2者が生還。潜在能力の高い梶谷を高く評価する中畑監督も、「あれは大チョンボ。プロのレベルじゃない。見過ごせない」と二軍落ちを決めた。
守備だけでなく、得意であるべきの走塁でもチョンボを犯した。6月3日の日本ハム戦では、6回表無死満塁で4番・ブランコが右飛を上げたが、浅い打球だったため3塁ランナーの金城はタッチアップを諦めた。
しかし、2塁ランナーの梶谷は3塁めがけて猛ダッシュ。結果、金城が押し出される形となり、併殺が完成。チャンスが潰えた。
考えられないミスが続いた梶谷だが、直後から打撃が覚醒した。6月5日以降、スタメン8試合のうち7試合でヒットを放ち、猛打賞も記録。突如として打ち始めたのだ。その後、右手のケガで二軍落ちをしたが、復帰した8月3日の中日戦では、いきなりの4安打。中日のストッパー・岩瀬から2ランを放つなど、鋭い当たりを連発した。
特筆すべき点は、盗塁技術が向上したことだ。6月8日、9日のオリックス戦では2試合連続で盗塁失敗。普通にベースランニングをすると速いのに、盗塁の場面になると、同じ選手とは思えないほどスピードに乗らない足取りで悠々タッチアウトになっていた。
それが、ケガから復帰した中日戦では、1回に二盗、三盗を決め、ブランコのタイムリーを生んだ。先制のチャンスである1死二塁からの三盗は勇気のいるもの。それを、一軍復帰試合でいきなり試みたところに、梶谷の成長が伺える。
爆発力のあるDeNA打線だが、盗塁は12球団最低の31(8月3日現在)。梶谷、荒波、石川、内村と走れる選手は揃っている。梶谷に触発され、俊足ランナーが機動力を生かすことができれば、相手にとっては更なる脅威となる。
※写真は横浜DeNAベイスターズオフィシャルサイトより
【関連情報】
横浜DeNAベイスターズ選手名鑑 梶谷隆幸
http://www.baystars.co.jp/team/player/2013/detail/63.php
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