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「新高速乗合バス制度」で格安ツアーバスが激減する

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昨年4月29日に発生し、多くの死傷者を出した「関越自動車道高速ツアーバス事故」を契機に、国土交通省はさまざまな安全策を急ピッチで進めてきた。

そして、この8月以降に発足させるのが、「高速乗合バス」と「高速ツアーバス」を一本化した「新高速乗合バス」制度だ。

そもそも一本化される以前の2つの違いは何か。まず「高速乗合バス」とは、路線バス会社が自社のドライバーと車両で運行するもの。バス停留所が設置され、乗降場所も決まっている。

これに対して「高速ツアーバス」は旅行会社が利用者を募り、貸切バス事業者のドライバーと車両で運行。停留所は通常設置しておらず、旅行会社から指定された場所(例えば「○○ビルの前」など)で乗降する。これは規制緩和によって生まれた業態で、多くの事業者が参入。ネットを使った予約システムと価格競争でこの5、6年、メキメキと成長を続けてきた。

では、このふたつが統合されると何が変わるのか? まず乗合バス事業者が自らの監督のもと、貸切バス事業者に運行を委託できるようになる。次に過労運転防止のため、ワンマン運行の上限距離が厳格化される。そして最後に、運行にあたっては、大都市圏のターミナル駅周辺でバス停留所確保が義務づけられることになる。

この新制度により、これまでツアーバスを運行していた事業者のなかには撤退せざるをえなくなった会社も少なからず存在する。千葉県に本拠を置き、君津・木更津から東京湾アクアラインを経由して東京までのツアーバス「東京アクアライナー」を運行する「房総エキスプレス」も、そのひとつだ。

「今回の制度改正では、バス停留所の確保が大きなネックとなります。当社がお客さまからいただく運賃は、木更津-東京間で、ひとり片道800円。そこから得られる利益の範囲内で、専用バス停留所を確保することはとても無理です。『高速ツアーバス連絡協議会』に加盟する大手ツアーバス会社は共同でバス停留所を設置するようですが、当社のような未加盟の中小バス会社は利用することができませんし、もし利用できたとしても、権利金や月々の料金が払えるかどうか……」(房総エキスプレス)



料金の安さで勝負してきた中小のバス会社にとっては、この「バス停留所の確保」費用が大きな重荷となる。

「公道上にバス停留所を設置することも検討し、実際に所轄の警察署から『ここなら大丈夫では?』とお墨付きをもらったところもあるのですが、道路管理者(役所)に申請すると、『近隣住民全員の同意を取ってきてくれ』と言われる始末でとてもとても……。やむを得ず撤退することになった次第です。当社はこれまで安全運行には十分な注意を払ってきました。あの事故をきっかけにした『ツアーバスの安全問題』が、なぜバス停留所に及ぶのか……。本当に残念です」(房総エキスプレス)

房総エキスプレスの撤退で、木更津-東京間の高速バスは、これまで乗合バスを運行していた2社が残るのみ。そしてその運賃は、ひとり片道1300円。従来、東京アクアライナーを利用していた人にとっては大幅な値上げとなる。

8月以降、高速バスの運賃や本数が大幅に変更されることが予測されるので、今まで利用していた人は注意が必要だ。

(撮影/岡倉禎志)

■週刊プレイボーイ31号「『格安ツアーバス』激減でお盆の足が大ピンチ!?」より 【関連記事】
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