1960年の初優勝、その後の長い低迷期、98年の38年ぶりの優勝、そして現在まで続く低迷期。その間、球団名は大洋ホエールズ→横浜大洋ホエールズ→横浜ベイスターズ→横浜DeNAベイスターズと変遷し、親会社もマルハからTBS、DeNAへと移り変わった。
それぞれの時代のプレーヤー、首脳陣、球団幹部など“当事者”たちの証言で浮き彫りになる、創設から2012年までに積み重ねた「4522敗」の歴史。伝統とは何か? なぜ優勝できた? なぜ弱くなってしまった? 幼少期から大洋・横浜を愛してやまない村瀬秀信氏が、過剰なまでの思い入れを込めてまとめ上げたのが『4522敗の記憶 ホエールズ&ベイスターズ涙の球団史』だ。
―近藤昭仁(あきひと)、平松政次(まさじ)、遠藤一彦(かずひこ)、高木豊、佐々木主浩(かづひろ)、石井琢朗(たくろう)、谷繁元信(たにしげもとのぶ)、鈴木尚典(たかのり)、内川聖一……。横浜ファンならずとも、証言者の名前を見るだけでグッときますね。
「名前を出せなかった方も含め、全部で40人以上にインタビューしたと思います。皆さん、本当に言いたいことがたくさんあるんですよ。ある人は30分の予定が4時間になり、ある人は5時間話してもまだ言い足りず、翌朝一番で電話をかけてきてくれたり。情報量としては、あと5冊書けるくらいあります(笑)」
―パズルのピースは山のようにあったと。
「でも、ひとつのプレーにしても、ひとつの出来事にしても、人によって見方も違えば、抱いていた思いも違うわけですよ。だから、それぞれの事柄に対して『当時のチーム状況はこうで、個人的にはこういう成績だったから、この人はこういう言い方をしているんだな』とか、そういうところまで調べて、発言のニュアンスを汲くみ取っていきました」
―……恐ろしい作業ですね。
「インタビューの内容はどの方もすべて本当に面白かったし、話を聞きながら泣いてしまったことも5、6回ありました。グラウンドで戦った人たちはみんな本気で『勝ちたい』と思っていた。そこにウソはないんです。それをひとつの流れにまとめるわけですから、もう最後は“僕の視点”で書くしかなかったですね。
それだけに、ファンの反響は怖いです。ファンにもそれぞれの思いがありますから。でも、一生に一度の仕事ですよ。これだけの材料をもらって、子供の頃からずっと好きなチームの歴史を書かせてもらえるなんて」
―それがこうして一冊の本にまとまったものを、誰にいちばん読んでほしいと思いますか?
「そうですねえ……現球団のDeNAの人たちと……あとはやっぱり中畑清監督ですね。僕、中畑監督にインタビューしたとき、しょっぱなから号泣しちゃったんです。『僕はあなたが嫌いでした。巨人の人がベイスターズの監督になるなんて、と。でも、去年一年間……ありがとうございました』と伝えたら、もう決壊してしまって(笑)」
―でも、これだけ多くの関係者を取材して、球団の“暗部”もたくさんのぞいてしまったわけですよね。それでも、やっぱりベイスターズが好きですか?
「愛情は変わらないですね。自分では憎まれ口も叩くけど、それを他人に言われるとカチンとくる、みたいな。JR関内(かんない)駅を出て、Y字形の照明を見上げながらスタジアムに向かう高揚感。そこに行けば同じように応援しているファンに会える。大手を振って『大好きです!』っていう感覚じゃないんですけど……もう故郷みたいな感じですよ。それはたぶんずっと変わらないと思います」
(撮影/高橋定敬)
●村瀬秀信(むらせ・ひでのぶ)
1975年生まれ、神奈川県出身。横浜スタジアムの脇を流れる大岡川で産湯をつかう。92年、野球部の練習をサボりホエールズ最終戦を観戦するも、翌朝の神奈川新聞に写真が載ってバレる。著書に『プロ野球 最期の言葉』がある
■『4522敗の記憶 ホエールズ&ベイスターズ涙の球団史』
双葉社 1575円
ホエールズ時代の大物OB、伝説の1998年の優勝メンバー、2000年以降の“暗黒期”にもがいた主力選手、各時代の球団幹部……。大洋・横浜の愛と涙に満ちた球団史を、多くの関係者たちの証言で総括。歓喜の瞬間よ、再び!
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それぞれの時代のプレーヤー、首脳陣、球団幹部など“当事者”たちの証言で浮き彫りになる、創設から2012年までに積み重ねた「4522敗」の歴史。伝統とは何か? なぜ優勝できた? なぜ弱くなってしまった? 幼少期から大洋・横浜を愛してやまない村瀬秀信氏が、過剰なまでの思い入れを込めてまとめ上げたのが『4522敗の記憶 ホエールズ&ベイスターズ涙の球団史』だ。
―近藤昭仁(あきひと)、平松政次(まさじ)、遠藤一彦(かずひこ)、高木豊、佐々木主浩(かづひろ)、石井琢朗(たくろう)、谷繁元信(たにしげもとのぶ)、鈴木尚典(たかのり)、内川聖一……。横浜ファンならずとも、証言者の名前を見るだけでグッときますね。
「名前を出せなかった方も含め、全部で40人以上にインタビューしたと思います。皆さん、本当に言いたいことがたくさんあるんですよ。ある人は30分の予定が4時間になり、ある人は5時間話してもまだ言い足りず、翌朝一番で電話をかけてきてくれたり。情報量としては、あと5冊書けるくらいあります(笑)」
―パズルのピースは山のようにあったと。
「でも、ひとつのプレーにしても、ひとつの出来事にしても、人によって見方も違えば、抱いていた思いも違うわけですよ。だから、それぞれの事柄に対して『当時のチーム状況はこうで、個人的にはこういう成績だったから、この人はこういう言い方をしているんだな』とか、そういうところまで調べて、発言のニュアンスを汲くみ取っていきました」
―……恐ろしい作業ですね。
「インタビューの内容はどの方もすべて本当に面白かったし、話を聞きながら泣いてしまったことも5、6回ありました。グラウンドで戦った人たちはみんな本気で『勝ちたい』と思っていた。そこにウソはないんです。それをひとつの流れにまとめるわけですから、もう最後は“僕の視点”で書くしかなかったですね。
それだけに、ファンの反響は怖いです。ファンにもそれぞれの思いがありますから。でも、一生に一度の仕事ですよ。これだけの材料をもらって、子供の頃からずっと好きなチームの歴史を書かせてもらえるなんて」
―それがこうして一冊の本にまとまったものを、誰にいちばん読んでほしいと思いますか?
「そうですねえ……現球団のDeNAの人たちと……あとはやっぱり中畑清監督ですね。僕、中畑監督にインタビューしたとき、しょっぱなから号泣しちゃったんです。『僕はあなたが嫌いでした。巨人の人がベイスターズの監督になるなんて、と。でも、去年一年間……ありがとうございました』と伝えたら、もう決壊してしまって(笑)」
―でも、これだけ多くの関係者を取材して、球団の“暗部”もたくさんのぞいてしまったわけですよね。それでも、やっぱりベイスターズが好きですか?
「愛情は変わらないですね。自分では憎まれ口も叩くけど、それを他人に言われるとカチンとくる、みたいな。JR関内(かんない)駅を出て、Y字形の照明を見上げながらスタジアムに向かう高揚感。そこに行けば同じように応援しているファンに会える。大手を振って『大好きです!』っていう感覚じゃないんですけど……もう故郷みたいな感じですよ。それはたぶんずっと変わらないと思います」
(撮影/高橋定敬)
●村瀬秀信(むらせ・ひでのぶ)
1975年生まれ、神奈川県出身。横浜スタジアムの脇を流れる大岡川で産湯をつかう。92年、野球部の練習をサボりホエールズ最終戦を観戦するも、翌朝の神奈川新聞に写真が載ってバレる。著書に『プロ野球 最期の言葉』がある
■『4522敗の記憶 ホエールズ&ベイスターズ涙の球団史』
双葉社 1575円
ホエールズ時代の大物OB、伝説の1998年の優勝メンバー、2000年以降の“暗黒期”にもがいた主力選手、各時代の球団幹部……。大洋・横浜の愛と涙に満ちた球団史を、多くの関係者たちの証言で総括。歓喜の瞬間よ、再び!
・2000本安打達成記念対談 谷繁元信×江夏豊「思いどおりにならないから、我慢して次に答えを出すしかないんです」
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・横浜DeNAベイスターズの新マスコット「スターマン」はホッシーのペットだった!
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