
20代は、青春の延長線をブラブラするだけの、目的のない放浪者である。
そんな論調を良く耳にしますが、臨床心理学者のMeg Jay博士は、これを否定しています。むしろ20代は、「Defining Decade」つまり人生を決定付ける10年間だと言うのです。
Jay博士は、新刊『The Defining Decade: Why Your Twenties Matter and How to Make the Most of Them Now』やTEDの講演などで、大学卒業後のこの時期はキャリアの形成において非常に重要な期間であると主張しています。
今回Jay博士に電話インタビューを行い、20代にまつわる9つの「神話」(いいと言われていること)について、本当かどうかアドバイスをもらいました。仕事を辞めたいと思ったことがある人や、「短期」のつもりでやっていたバイトが3年も続いているような人は、ぜひ参考にしてください。
神話1:20代はそれほど重要ではない
今の(米国の)20代は「Y世代」と呼ばれ、自分たちの努力とは無関係のところで、経済不況に苦しめられてきた世代です。お金を貯めるにせよ、借りるにせよ、すでに親や祖父母から後れを取っているのです。だからと言って、休んでいればいいわけではありません。
「20代は動くとき。自分に変革をもたらすことができる、特別な期間です。あとで振り返ったとき、今思っているよりもずっと重要な時期になっているはずです」と博士は述べています。
先延ばしはやめましょう。今こそ、仕事、住む町、そして恋愛について、よく考えて選択をする時なのです。30代で送りたい人生に向けて、自分を高めていきましょう。「30前の選択なんてただの練習に過ぎない」と言った女性に対して、博士はこう答えたそうです。「どのパートのリハーサルをしているのかを考えなさい」
神話2:天職を見つけなさい
20代の多くが、社会に出る前になりたいものを見つけなければならないと考えています。ところがJay博士に言わせると、20代は「自分という資本」の構築に最適な期間。小さな経験を積み重ねながら、徐々にブレない自分を築いていけばいいのです。
例えば、夢をひたすら追いかけるのではなく、次につながるきっかけになる何かがあるのであれば、理想と違う仕事に就くのもありです。それは、ちょっと型破りなものであっても構いません。
心理学者として成功する前のJay博士は、Outward Bound(アウトドア教育を行う国際組織)のインストラクターをしていました。
「バークレーの大学院で、アイビー・リーグの大学を出ていないのは私だけでした。でも、Outward Boundの経験さえあれば、Ivyの肩書なんていりませんでした」と博士は振り返ります。
そう、実は博士も、「雇われない」20代を選び、興味深いパートタイムの仕事をしながら自分という資本を磨くことに重きを置いていたのです。
しばらくの間、短期のバイトで生計を立てるのもいいでしょう。でも、それと同時に、履歴書上で面接官の注意をひくようなことにも挑戦してみてください。
神話3:好きなことをすればいい!
未来への希望が抱けるようになるまでは、スキルや目標には現実的でいるべきです。「20代になると、何でも好きなことをすればいいと言われることもあるでしょう。でも、それは極論です」と博士は述べています。
精神分析医のChristopher Bollas氏は、「unthought knowns」という考えを提唱しています。これは、知っているはずなのに忘れてしまっている、または抑制してしまっている自分の中の何かのこと。例えば、動物に関わる仕事をするという子どものころの夢や、高校卒業後に諦めてしまった物理の才能などがこれに当たります。「無限の」可能性に圧倒されてしまわないよう、あなたのunthought knownsを基に実行可能な詳細計画をいくつか用意して、それらをつなぎ合わせていくといいでしょう。
神話4:天職を見つけたら、仕事が仕事じゃないように感じられる
どんな職業に就いたとしても、仕事は仕事です。
20代が陥りがちな神話があります。それは、「情熱を持って仕事を楽に進めるか、悲壮感を持って自分をデスクに縛り付けるか」というもの。もちろん、あなたに向かない仕事もあります。
でも、Jay博士によると、天職という考え方は、結婚したらずっと毎日が幸せでケンカもないと言っているのと同じ。実際は、すべての仕事は仕事。それを乗り越えてこそあなたは成長し、新しいスキルを身に付けることができるのです。
神話5:やりたいことは後からでもできる
Jay博士によると、30代の多くがこれまでの人生で専門的な選択肢を十分に検討しなかったことを後悔しているそうです。「もっと時間をかけて、チャンスがあるときにリスクを負って新しいキャリアに挑戦してみるべきだった」と。
雇用主は、社員が若いうちにリスクをとっておきたいもの。「誰もが、一緒に働きやすい若手の支援には熱心です。でも30代になってもやりたいことを見つけられないような社員は、雇用主からあまり相手にされなくなります」
Jay博士は新刊において、「21世紀のキャリアと人生は、ベルトコンベアに流されているうちに完成するようなものではなく、1つ1つのピースを自分で組み立てていかなければなりません」と記しています。
この言葉を胸に、欲しいピースに手を伸ばしてみましょう。子どもや住宅ローンがなければ、キャリアを追求するための引っ越しや転職は、あまり問題にはならないはずです。
神話6:イヤなら辞めればいい
「イヤなら辞めろ」という考え方をJay博士は否定します。上司に辞表を叩きつける前に、自分に以下の質問をしてみましょう。
この仕事の何が気に食わないのか? この経験からまだ何かを得られているのではないか? この仕事の好きなところはないだろうか? なぜここで働こうと思ったんだっけ?
経済的な検討も必要です。転職中の自分を支えられるだけの貯金がありますか? 貯金がなくて、かつ仕事から給与以外の何も得られていないような場合、転職に備えて今はお金を貯める時期かもしれません。
神話7:上司に恵まれなかったら辞めるべし
上司に恵まれないからといって、必ずしも辞める理由にはなりません。「悪い上司は、20代で経験するもっとも有害な出来事の1つ」とJay博士は言います。
でも、それを乗り越えることができるなら、仕事から得られるものはまだまだあるはず。「将来の成功に必要な何かを仕事から得られているのであれば、それを十分に貯めてから辞めればいいのです。次の仕事で、優れた上司のもとでそれを発揮しましょう」
「それから、辞めるときはできるだけ礼儀正しく去りましょう。世界は意外と小さいもの。悪い上司だって、いつの日かあなたを助けてくれる存在になるかもしれません」
神話8:転職を繰り返してはいけない
Jay博士は、20代のうちにいくつかの職やキャリアを転々とすることは「悪くないどころか素晴らしいこと。でも、30になるまでには何らかの暫定的な結論に達していられるよう、目標を定めることと効率を意識することが大切です」と述べています。同じように転職を繰り返している人の中でも、企業から求められる人材は、すべての決断に一貫したストーリーを持っている人です。
博士によると、「この5年間何をしましたかという質問を受けたら、挑戦してきたことと今やっていることを説明できなければなりません」。例えば、「人助けをするキャリアを選びたくて教師の道を志したが、やっぱり1対1の仕事がしたいと思い直し、社会活動に転向する」というのであれば、それは一貫したストーリーと言えるでしょう。「大人になってからでもキャリアチェンジは可能ですが、筋が通っていることが必要です」
神話9:20代は自分勝手である
Y世代は、自分勝手だといわれのない非難を受けています。でもJay博士は、多くの20代と仕事をするうちに、彼らは決してナルシストでも自分勝手でもなく、ただ経験が少ないだけであることがわかったそうです。
「上司は親でも教師でもありません。だからあなたの個人的な成長には関心がないのです。この誤解が、摩擦と間違いのもとになります」
「前向きな考え方は、年齢とともに身につくものではなく、練習と経験によって身につくのです」と博士は新刊に記しています。20代は、やがて職場に慣れることを学ぶでしょう。彼らに必要なのは、自分の能力を示すためのリアルタイムなチャンスだけなのです。
9 20-Something Myths That Will Stall Your Career | LearnVest
Alden Wicker(原文/訳:堀込泰三)
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