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藤子不二雄A氏『愛…しりそめし頃に…』最終巻刊行で43年におよぶ『まんが道』サーガ完結!

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藤子不二雄A氏の連載漫画『愛…しりそめし頃に…』の最終巻となる第12巻が先日刊行された。若手ながら多忙な日々を送る人気漫画家・満賀道雄と才野茂、そして彼らを取り巻く漫画家仲間の青春を描く作品だ。タイトルをご存じなくとも、満賀道雄と才野茂という名前でピンとくる方も多いだろう。そう、後に藤子不二雄(作中では満才茂道)と名乗る二人が少年時代に出会い、東京の木造アパート・トキワ荘へ移り住んでプロの漫画家へと成長していく姿を描いた漫画家漫画『まんが道』の続編なのである。

その『愛…しりそめし頃に…』の連載が今春終了し、最終話までを収録した単行本最終巻が先日刊行された、というわけだ。連載スタートから数えて18年、『まんが道』まで遡れば43年! 掲載誌やタイトル、時にはキャラクターデザインや一部の設定に変更がありながらも、ひとつの作品として続いてきた大河作品なのである。

そんな本作の魅力といえば、何をおいてもまずは日本漫画界の黎明期を形作った手塚治虫と後に続く漫画家たちによる、業界裏話としての側面だ。

手塚治虫の紹介でトキワ荘へ入居する満賀と才野。各地から上京してきては同じくトキワ荘に入居することになる寺田ヒロオや石森章太郎(=石ノ森章太郎)、赤塚不二夫ら、同世代の漫画家たちとの交流。拡大していく漫画市場。満才以外の漫画家はほとんどが実名で登場し、彼らの代表作がどのように生まれたのかを知ることも、時には現在(あるいは連載当時)では入手が難しい藤子作品の旧作の一部をそのまま読むこともできる、日本の漫画史を学ぶ恰好のテキスト、それが『まんが道』であり、続編の『愛…しりそめし頃に…』だ。

といっても、実話を元にしながらもフィクションの要素も大幅に入っているのも本作の特徴だ。特に終盤のエピソードでは、現実には彼らがトキワ荘を出た後の出来事を取り上げながらも、作中ではまだ多くがトキワ荘在住者として描かれ、歴史の改変が行われている部分も目立つ。しかしそんなのは些細なことだ。むしろ夢に向かって走り続ける若者たちの熱いハートに心揺さぶられ、俺も明日は檜になろう! と鼓舞してくれる青春群像劇として読むのが正しい。

その証拠に、本作の重要人物の一人である石ノ森章太郎は、自身の回顧録『章説・トキワ荘・春』でこう書いている。「青春には区切られた時間などない。ここではもはや、正確な時間と空間など意味をなさないのだ」と。

しかし、その青春群像劇が完結した。満賀と才野がトキワ荘を出るわけではない。コンビを解消するわけでもない。だが、先輩格のある漫画家が引退を表明し、ラーメン大好き小池さんのモデルとなった鈴木伸一がアニメーターへと転向し、藤子と石ノ森と赤塚が真の国民的漫画家へとのし上がることになった代表作の誕生があり、尊敬する手塚治虫に素敵過ぎる言葉をかけられるという、ひとつの大きな区切りが描かれる。

そしておそらく、この記事を読んでいる方々の多くは、ここから先の藤子不二雄作品に触れて育った世代だろう。その後のことは我々はリアルタイムである程度知っているのだ。まだまだいくらでも続けられそうな内容ながら、このタイミングでの完結は、だからちょうどいいのだ。

満賀道雄こと安孫子素雄こと藤子不二雄A先生、長らくお疲れさまでした! 作品を読み返して尻を叩かれ鼓舞され元気をもらいながら、次回作も期待してます!

(田中元)

※写真は、小学館サイトより

【関連リンク】
愛…しりそめし頃に… 12
http://www.shogakukan.co.jp/comics/detail/_isbn_9784091853387

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