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東京五輪のライバル、トルコのデモはなぜ起こったのか?

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5月31日、トルコの最大都市イスタンブールで始まったデモは、わずか1週間で数万人規模にまで膨れ上がった。エルドアン首相がデモ隊排除に実力行使を示唆するなど、未だ混乱は続いている。いったいトルコで何が起きているのか。トルコ駐在経験のある全国紙記者が解説する。

「事の発端は、タクシム公園の600本の樹木を再開発から守ろうという市民グループのささやかな運動でした。これをきっかけにして、エルドアン政権に対する不満が募っていた市民が集結し大規模なデモへと発展したわけです」

その不満の原因とは?

「首相は戒律の厳しい保守的なイスラム教の価値観を政策に盛り込もうとしています。その象徴的な法案が『夜間のアルコール類販売を禁止する』です。トルコはイスラム圏では自由で緩やかな宗教観の国ですから、国民の多くは今さらエルドアン首相が推し進める厳格なイスラム教国家になることは受け入れられないのではないか」(全国紙記者)

トルコの治安悪化は、われわれ日本人にも意外なカタチで影響を及ぼしかねない。それは、トルコのイスタンブールとスペインのマドリード、そして日本の東京が立候補している2020年夏季オリンピックの招致レースだ。

元日本体育協会事務局長でオリンピック評論家の伊藤公(いさお)氏が語る。

「3月、東京、マドリード、イスタンブールを国際オリンピック委員会(IOC)の評価委委員が回り、イスタンブールが優位に立っていたことは明らかでした。まずトルコは、アジアとヨーロッパの中間に位置し、ふたつの文化の“懸け橋”としての役割を担えること。そして、もうひとつはブラジルのリオデジャネイロ(2016年夏季オリンピック開催予定)が“南米大陸初のオリンピック開催”という大義で決まったように、イスタンブールには“イスラム圏初”という大義がある。何もしなくてもイスタンブールに追い風が吹いていた」

しかし、運悪く大規模なデモが起きてしまったワケだ。オリンピック招致レースへの影響は?

「IOC次期会長の最有力候補といわれているドイツ人のトーマス・バッハ氏は、トルコの反政府デモを受けて、『大会そのものは7年後だから、それまでに沈静化できれば問題はないだろう』とコメントしています。しかし、これまでイスタンブールを支持していたほかのIOC委員はショックを受けて考えを変える可能性がある。というのも、1968年のメキシコでは開催前日まで学生が反対運動をし、死者が300人も出たといわれているし、1972年のミュンヘンではテロ事件が起きた。いずれも開催地が決まってから問題が出てきた例ですが、IOCは過去の経験から治安問題に対して神経質にならざるを得ない」(伊藤氏)

オリンピック招致レースの先頭を走っていたはずのイスタンブールを直撃した大規模デモ。招致への影響という面でも、デモ隊への対応はトルコ政府の頭痛の種に違いない。

(取材・文/鈴木英介)

■週刊プレイボーイ26号「2020年夏季オリンピック招致“自滅レース”で最後の勝者になるのはどこだ!?」より 【関連記事】
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