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「完走者はひとりが望ましい」。ツール・ド・フランスの精神は「人間の限界に挑戦する」

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世界最高峰の自転車レース「ツール・ド・フランス」(以下、ツール)。その記念すべき100回目となる今年の大会が、先月29日、フランスのコルシカ島でスタートした。

この後、7月21日までの3週間で全21ステージ・総走行距離3402.5kmを走り抜き、大会中はフランス国内はもちろんのこと、ヨーロッパ全体がこの自転車レースに釘付けになる。

“史上最も過酷なスポーツ”と呼ばれ、総合優勝の選手は英雄として人々から尊敬されるほどヨーロッパでは絶大な人気を誇るツール。もちろん、日本でもファンは多いだろう。だが一方で、「出場全選手がタイムを競う自転車レース?」くらいの認識の人も多いのでは?

そこで、よりレースを楽しむための基本をガイドしよう。

大前提として、ロードレースは1チーム9人で戦う団体競技で、各チームにはエースがひとりいる。そのエースを勝たせるためにほかの選手はアシストとしての仕事をする。アシストが何をするかというと、基本は風よけ。アシストは仲間と交代しながら風を受けてエースを守る。そのため、勝つのはエースひとりだが、その勝利はチーム全体で分かち合う。

毎日200km前後を走るわけだが、ステージには平坦基調のステージや、アルプス山脈やピレネー山脈を登る山岳ステージ、それにタイムトライアルと、日によってコースの様相は変わる。アシストも、平坦が得意だったり、山登りに適した選手がいるので、コースプロフィールによってチームの戦術は変わってくる。

そして、エースが狙うのは、マイヨ・ジョーヌという黄色いジャージ。これはステージごとのタイムを加算し、各ステージ終了時に合計タイムが短い選手が袖を通すことができる。つまり、合計タイムの順位が入れ替われば、一日ごとにイエロージャージを着る選手が変わることもある。そして、最終日を終えて合計タイムが少ない選手が総合優勝を勝ち取るのだ。

つまり、エースにマイヨ・ジョーヌを着せるために、チームが8名のアシスト選手を21のステージでどう走らせるか、そうした戦術に注目するとよりレースを楽しむことができるというわけだ。

もちろん、最終的には驚異的な体力がモノをいうのは間違いない。その過酷さを、現在、国内のJプロツアーに参戦するプロロードレースチーム・宇都宮ブリッツェンの監督で、スポーツ専門番組J-SPORTSのロードレースを巧みな話術で解説している栗村修さんに聞いた。

「ツールが始まった1903年といえばライト兄弟が初めて空を飛んだ年ですからね。それだけ歴史の厚みがあります。もともとロードレースというのは、労働者階級のスポーツで、ツールの主催者は最初に、『完走者はひとりが望ましい』と言ったそうです。それこそ死人が出てもいいや、ぐらいのノリだったんです。要は、人間の限界に挑戦するという形でツールは始まったんですね。まあ、アルプスの山岳地帯を登るだけでも尋常じゃないのに、下らせる時点で命の心配なんかしてないですよね(苦笑)」

山岳コースの下りでは100キロ以上も出るという。また、約200人が一団となって走るため、落車事故も頻繁に起きてしまう。

「一日にひとりぐらいは骨を折る選手が出るスポーツってあまりないですよね。僕も普通に解説してますからね、『あっ、鎖骨いってますね、これ』とか(笑)」(栗村氏)

選手の消費カロリーは1日に8000kcal。コンビニのおにぎりでいえば約45個分だ。それを時速40~50キロで走りながら補給し、レースは3週間続く。まさに選手は超人レベルなのだ。

人間の限界に挑戦するレース、それがツールであり、そこに最大の魅力がある。

(取材/頓所直人[GREEN HOUSE])

■週刊プレイボーイ28号「ツール・ド・フランス100回記念大会観戦ガイド」より 【関連記事】
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