昨今、毎日のようにニュースで見かける“3Dプリンタ”というキーワード。果たして、巷で言われるように「21世紀の産業革命」を起こすようなものなのだろうか? 3Dプリンタの「現実」を追った。
◆銃制作などで話題だが、騒ぎすぎという懸念も?
クリス・アンダーソンが、著書『MAKERS-21世紀の産業革命が始まる』で取り上げ、一躍話題になっている3Dプリンタ。3DCGなどで作った3Dデータを立体にして造形する機器のことだが、「3Dデータがあれば、デスクトップでなんでも自作できる」として大きな反響を呼んでいる。最近では、「3Dプリンタで出力できる銃」のニュースが取り上げられ、日本でも物議を醸したことも記憶に新しい。
だが、世間が盛り上がる一方で、長年3Dプリンタに関わってきた人たちは、思いのほか冷静だ。
業界団体「3D-GAN」理事の水野操氏もその一人だ。
「そもそも3Dプリンタは、製造の現場では’90年代初頭から使われてきました。現在は安価なマシンが登場し、個人で所有できるようになりましたが、機器としては珍しいものではないんです」
さらに、あたかも「誰もが気軽になんでも自作できる」かのように報じられているが、実際は素人が購入して扱うには、ハードルが高いことも否めないという。
「3Dプリンタは、3Dデータがなければただの箱です(笑)。3Dプリンタを購入するなら、自分が出力したい立体物の3Dデータを作れるソフトと、それを扱うスキルが必要なんです」
さらに、ニュースで取り上げられるような、精巧でカラフルな造形物を見たことで、期待が必要以上に膨らみすぎている可能性も指摘する。
「僕は、個人用3Dプリンタで出力できる立体物のクオリティを知っているので、『まぁ、こんなものか』と納得しますが、見学に来た人の中には、ガッカリする方もいらっしゃいます(苦笑)」
⇒【写真】3Dプリンタで出力された立体物 http://nikkan-spa.jp/?attachment_id=452445
ニュースになった「3Dプリンタ銃」も、豪NSW州の警察が1700豪ドルの個人用3Dプリンタを使い作成したところ暴発し、使用者が危険だったほどだ。
とはいえ、実際に3Dデータから立体物ができ上がるのを目の当たりにすると、ワクワクせずにはいられない。また、銃のように、物騒なものだけでなく、3Dプリンタで作られた人工気管で一命を取りとめた赤ちゃんのニュースなど、明るい話題もある。3Dプリンタは、誰もが「メーカー」になることができる夢の機器になるかどうかは現時点で判断できないが、その可能性を感じさせるものであることは間違いない。
それでも欲しいという人にオススメの機種を挙げていただいた。
「Blade-1(約13万円)は、日本のメーカーが販売しているので、いちばん購入しやすいかと。ただ、Makerbot社のReplicator2(約20万円)、3D systems社のCube(安価なもので約16万円)や3DTouch(安価なもので約35万円) などは、日本の代理店から購入できます。これらの3Dプリンタは、どれも似たような性能を持っていますね」
また、購入せずとも3Dプリンタを用いたサービスは多数ある。それらに触れてみて、自身で判断してもいいだろう。
⇒「話題の3Dプリンタ、試してみるならここ」に続く http://nikkan-spa.jp/452425
【水野操氏】
「一般社団法人3Dデータを活用する会3D-GAN」理事。3D-GANは、相談サービスのほか、フィギュア原型師向けのモデリング講座などを開催している。詳細は、http://www.3d-gan.jp/
― 3分でわかる3Dプリンタの現実【1】 ―
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