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同性愛者であることをカミングアウトすると、相手からはさまざまな反応が返ってきます。すごく良い反応の時もあれば、最悪な時も。誰かに打ち明けるたびに、少なくともひとつは、「カミングアウトの前に知っておきたかった」と思う教訓を得ることになります。
皆さんが同じような目にあわなくて済むよう、私自身のこれまでの失敗を紹介したいと思います。
※この翻訳記事の原文は、自身ゲイであることをカムアウトしている米 Lifehacker 記者、Adam Dachis によるものです。
私はカミングアウトを決意した時、まずは信頼できる数人の友人に打ち明けることから始めました。次は両親に話しました。その次は、全校集会で皆の前で告白しました。
この話をすると、たいていの人は私の行為を「すごく勇気があったね」と言ってくれます。でも実を言うと、ただ面倒くさかったからなのです。
カミングアウトは疲れます。そもそも必要なことではないはずだけれど、皆にわかってもらうには打ち明けるしかないのです。私は、たくさんいる家族の全員や、学校の生徒ひとりひとりに打ち明けなくてはならないのが面倒で、一度の発表で済まそうとしました。絆創膏をひと思いにはがすのと同じことです。
今でも自分の決断に悔いはありませんが(最大の理由は「面白いから」です)、「その時までに知っていれば、試練をもっとうまく乗り切れたのに」と思うこともたくさんあります。この記事では、特に重要な6つを取り上げます。
1.ゲイであることは、自分の個性のひとつでしかない
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最初にカミングアウトした時は、「人が自分をどう見るかはこれで決まってしまう」と恐れていました。「あいつは同性愛者だ」のひと言で片づけられて、自分の個性にあるほかの要素は無視されてしまうだろうと思っていたのです。
ところが、両親に告白した時、父は自分の兄弟にも同性愛者がいると言って、その人の言葉を私に教えてくれました。「私の性的指向は、私についてあなたが知っているたくさんのことのひとつに過ぎない。それは私のすべてではない」というものです。
その後、カミングアウトを続けていく中でも、その言葉は私の胸に刻まれていました。カミングアウトすれば、周囲があなたを見る目は変わります。それまでゲイだと思われていなかった人も、以後は、することなすこと色メガネで見られるようになるでしょう。周囲はあなたの行動を凝視して、それまで気に留めていなかった仕草なども「同性愛者っぽい」と捉えるようになるでしょう。あなたを受け入れるにしてもそうでないにしても、今までとは少し違う態度を取るようになります。特に両親は、子どもがゲイだと知ると、多くのことが変わってしまうと考えるかもしれません(実際には変わっていないのに)。
そこで、相手に対しては、「私は今までと何も変わっていない、ただ私のこの一面をあなたにも知ってほしいと決めただけだ」と伝えると良いでしょう。その一面は、あなたのほかの要素と合わせて評価されるべきものであり、あなたにはほかにもたくさんの個性があるのだから、周囲にもそのことを忘れずにいてもらいましょう。
2.人は予想外の反応をする
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両親にカミングアウトしたのは15歳の時でした。自分は「いかにもなゲイ」だから、少なくとも両親は気づいているだろうと思っていました。でも両親はわかっていなかったらしく、ひどく驚きました。今でも覚えていますが、母の目玉は、そのまま飛び出て床を転がっていくかと思うほどでした。
一方祖母は、「この子が3歳の時から気づいていた」と言い張りました。高校で仲の良かった友人のひとりは何も言いませんでした。ほかの人たちの反応もさまざまでした。すごく親身になってくれたり、まったく無頓着だったり、二度と話をしてくれなくなったり。ほとんどの相手の反応は、事前の予想とは違っていました。
相手がどんな反応をするかわかっているつもりでも、その都度、予測のつかなかった反応が生じます。予想外の反応がたくさん出てきますから、相手の反応を事前に予測しようと思うのは無駄です。それよりも、さまざまな種類の反応を想定して、それらに対して心の準備をしておきましょう。
相手が敵意を示したら、無条件に受け入れてくれたら、それとも気にしない様子なら...、それぞれ何と口にすべきか自問します。特定の人がどう反応するかを考えるよりも、誰かが取るかもしれない反応を思い描いて、それへの対応をあらかじめ用意しておくのです。いざとなったら、あらかじめ考えておいたのとは違った対応を取ることになるかもしれませんが、ともあれ、厳しい状況に対処するための戦略を用意しておけば、落ち着いてカミングアウトできるはずです。
3.性的な関係性について、もう一度学び直す必要がある
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ほとんどの場合、同性愛者の子どもたちは、ふさわしい性教育を受ける機会がありません。同性愛についてはつい最近まで、誰もまともに取り上げてきませんでしたし、今でも多くの人は話そうとしません。学校ではこの話題についてほとんど教えてくれないし、インターネットにも最良の情報はまず載っていません。その結果、同性愛者がカミングアウトを経て恋人を見つけるのは、ほかの人たちよりも少し遅くなりがちです。このことは、情緒面の成熟に一種の退行を引き起こします。カミングアウトと同時に、恋愛や交際、セックスについてのそれまでの知識を、組み立て直すことになります。
比較的若いうちに(つまり、同級生が恋人をつくりはじめるくらいの年齢で)カミングアウトを済ませた人なら、この問題はそれほど大きなものではないでしょう。けれども、もっと年をとってからカミングアウトした場合は、いったん思春期に戻って、自分の性をコントロールする方法を学びなおさなくてはなりません。
まともなサポートはほとんど得られません。もしあなたがこの部類に入るのなら、辛抱強く学んでいく以外、可能なことはあまりないでしょう。あなたは愛する人を見つける上で少々ハンデを負っており、たくさんの失敗を経験することになるのだと、肝に銘じるしかありません。大失敗はしないまでも、自分は子どもっぽくてバカみたいだと感じる機会はあるでしょう。実際そうなのですが、大丈夫。焦らずに少しずつ学んでいけば、思っているよりもずっと早く、ほかの人たちに追いつけます。
4.状況はすぐには良くならない
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カミングアウトしたらすぐに人生が好転する、ということはありません。むしろ悪くなるでしょう。カミングアウトする時は、「これを済ませたら自由になれる」と思うでしょうが、本当に自由になるまでには時間がかかるのです。
両親と同居しているティーンエイジャーなら、これまでこっそり楽しんできたデートやセックスも、急にさまざまなルールに縛られるようになるでしょう。成人なら逆に、急に可能性が広がって、どこから始めれば良いのかわからなくなってしまうかもしれません。何歳でカミングアウトしたとしても、次にどうすれば良いのかがわかるとは限りません。そのため、多くの問題に直面し、間違いを犯すことになりますが、それはやがて経験として身につきます。
ゆっくり行きましょう。勢いのままにカミングアウトして、新たに見つけた自由を謳歌しすぎると、カミングアウトで解決した問題よりも新たに抱え込んだ問題の方が多い、ということになりがちです。愛を急ぎすぎると傷つくこともあります。セックスの際に見境をなくして、健康面でリスクのある行為をしてしまうかもしれません。
すべての困難を避けられるわけではありませんが、ゲイは誰もが危険な大ジャンプをしなくてはいけないわけでもありません。あなたは本当の自分を隠さないという選択をしたのですから、時間をかけて、次に何をしたいか見つけていき、新しい状況をゆっくり試していきましょう。いつか事態は好転しますが、そのためには忍耐が必要なのです。
5.カミングアウトに終わりはない
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私が皆の前で演壇に立って、マイクを通してカミングアウトしたのは、一度で決着をつけて、同じことを二度と繰り返さずに済ませたかったからです。けれども、現実は思い通りになりませんでした。生活の中で接する人の顔ぶれが変われば、その都度あなたが何者かを説明する必要が出てきます。その状況を好きになれとは言いませんが、そうしなければならないのです。カミングアウトの必要性がなくなることはありません。たとえ人気ブログで告白記事を書いたとしてもです。
もし止めてしまったら、また本当の自分を隠してしまうことになります。昔なじみはそのことを知っていても、あなたが引っ越したり、転職したり、一度に大勢の人と知り合ったりしたら? 自分から言わない限り、周囲はあなたの性的指向がわかりません。そうなればすぐに、自分が何者かを隠しつづける生活に逆戻り。最初にカミングアウトした時の努力が、すべて無駄になってしまいます。
なにも、私がしたように、あなたの性的指向を大声で宣伝する必要はありません。会話の中で、自然とその話題を出すこともできます。あなたのパートナーのことを話してみましょう。誰か同性を指して、セクシーだと言ってみましょう。もし誰かに、異性の恋人がいるかどうか聞かれたら、いない理由を説明しましょう。
自分のことを伝えるのが苦手な人や、繰り返しにうんざりする人もいるでしょうが(私は後者です)、それでもしなくてはなりません。カミングアウトは受容につながります。少しユニークかもしれないが、それでも、彼らがそれまで知っていたのと同じ素晴らしい人間なのだ、と示すことなのです。あなたの「違い」を受け入れられる人が増えれば、その人たちはほかの人のことも、同じように受け入れられるでしょう。そうすることで、世界は誰にとっても少しずつ良くなっていくはずです。
6.もっと早くやっておけば良かったと思う日がくる
テレビを見ると、「ゲイのやつら」への憎しみを、まるでライフワークのようにあらわにする人がかなりいると感じるかもしれません。あるいは、ある種の趣味のように憎しみを楽しむ人たちもいます。カミングアウトの前には、こうした外部のメッセージが気になるものです。あなたの愛する人たちが、テレビの中の人たちと同じような攻撃的な反応を示す可能性を考えてしまうでしょう。その予想が当たってしまうこともありますが、たいていの場合は、心配のしすぎだったと気づくことになるはずです。
カミングアウトによって、あなたの人生にとって大切だと思う人を何人か失う可能性はあります。その可能性は低くありません。それでも、成長するにつれて得られる大切な教訓があります。それは、「永遠にそばにいてくれる人はいない」ということです。
私たちは、大事な人とは死ぬまで一緒だとロマンチックに考えたがるものです。中にはそういうケースもあるでしょうが、友情とは得てして、はかないものです。家族でさえ、常に全員とうまくやっていけるわけではありません。こう考えたところで、誰かに拒絶されて傷ついた心が癒えるわけではないでしょうが、時が経てば、それらも大したことではなくなるでしょう。
改めて周囲を見れば、あなたを支え、愛してくれる人たちもいるはずです。これからの人生では、もっとたくさん、そうした人々に出会えるでしょう。あなたは自由を選び取るのです。本当の自分を愛し、理解を深めていくチャンスが、あなたにはあるのです。そしていつかは、ただ正直になるだけのために、なぜこんなに長い時間がかかったのか、不思議に思うことでしょう。
やってみるまでは怖く感じるかもしれませんが、カミングアウトは、すべてを良くしていくための第一歩なのです。
Adam Dachis(原文/訳:風見隆、江藤千夏/ガリレオ)
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