「昨年と比べ、明らかにボールが飛ぶ感じがする」という選手会側の追及により、NPB(日本野球機構)が選手やチームに無断で球を改良していたことが発覚した「統一球」問題。加藤良三コミッショナーの進退を問う声も上がるほど事態は紛糾しているが、なぜNPBはそこまでして変更を隠したかったのだろうか?
パ・リーグ某球団幹部が、旧統一球をめぐる動きを振り返る。
「統一球導入元年の2011年9月、早くもナベツネさん(巨人の渡邉恒雄会長)が、あまりに本塁打が出にくいと記者団の前で不満をブチまけた。さらに昨年4月には、選手会も“飛ばなすぎる統一球の検証”をNPBに申し入れていました。そんななか、実は昨年の夏頃に一部で『統一球が少し飛ぶようになったのでは?』という話が出始めたんです。NPBの事務局は『変更していない』と回答しましたが、疑惑は収まらず、ある球団は実際にボールを輪切りにして、中の構造に違いがないかどうか確かめたほどです」
NPBが今回公表した反発係数の検査結果を信じるなら、昨年夏頃に使われていたボールがそれまでよりも「飛ぶ」ということはない。夏場になって投手に疲れが出て、打者がボールに対応し始めただけかもしれない。だが、少なくともかなり早い段階から統一球には不満の声が大きく、“圧力”と“疑惑”にさらされていたことは事実なのだ。
「2011年の統一球導入以後、得点が入りづらくなり、目に見えて逆転ゲームが減った。序盤に1、2点取ったらそのままゲームセットというような試合展開が急増し、昨年などは各球団とも観客動員がおしなべて落ちました。そこで昨年の秋、クライマックスシリーズに入る頃に、各球団がNPBに対して統一球の見直しを訴えたことがあったんです。このときもNPB幹部は『朝令暮改はしたくない』と、見直しに否定的な態度でした」(セ・リーグ某球団関係者)
しかし実際にはこの時期、NPBはすでにミズノ社へ新統一球を発注していた。つまり昨秋の段階で、早くも“最初のウソ”をついていたことになる。
「邪推になりますが、NPB側は『圧力に屈してボールを変えた』という見方をされたくなかったのかもしれない。コミッショナーの肝煎りで導入した統一球に、『それ見たことか、失敗だったじゃないか』という烙印(らくいん)が押されることは避けたかったのでしょう」(前出・パ某球団幹部)
そして、黙っていればわからない程度に“微調整”するだけのつもりが、想定以上に飛ぶようになってバレバレになり、認めるしかなくなってしまった――。この時期になって公表した理由は、そんな情けないものだったようだ。
■週刊プレイボーイ27号「深層検証 『統一球』とはなんだったのか?」より 【関連記事】
・【プロ野球】日本人選手のホームラン数が激減している理由は?
・4年後のWBCを待つ“消滅危機”
・落合博満がWBC監督を絶対に引き受けない理由
・【プロ野球】「飛ばない」だけじゃない。統一球が投手有利なこれだけの理由
・【プロ野球】飛ばないボール「低反発球」でプロ野球はどう変わる?
パ・リーグ某球団幹部が、旧統一球をめぐる動きを振り返る。
「統一球導入元年の2011年9月、早くもナベツネさん(巨人の渡邉恒雄会長)が、あまりに本塁打が出にくいと記者団の前で不満をブチまけた。さらに昨年4月には、選手会も“飛ばなすぎる統一球の検証”をNPBに申し入れていました。そんななか、実は昨年の夏頃に一部で『統一球が少し飛ぶようになったのでは?』という話が出始めたんです。NPBの事務局は『変更していない』と回答しましたが、疑惑は収まらず、ある球団は実際にボールを輪切りにして、中の構造に違いがないかどうか確かめたほどです」
NPBが今回公表した反発係数の検査結果を信じるなら、昨年夏頃に使われていたボールがそれまでよりも「飛ぶ」ということはない。夏場になって投手に疲れが出て、打者がボールに対応し始めただけかもしれない。だが、少なくともかなり早い段階から統一球には不満の声が大きく、“圧力”と“疑惑”にさらされていたことは事実なのだ。
「2011年の統一球導入以後、得点が入りづらくなり、目に見えて逆転ゲームが減った。序盤に1、2点取ったらそのままゲームセットというような試合展開が急増し、昨年などは各球団とも観客動員がおしなべて落ちました。そこで昨年の秋、クライマックスシリーズに入る頃に、各球団がNPBに対して統一球の見直しを訴えたことがあったんです。このときもNPB幹部は『朝令暮改はしたくない』と、見直しに否定的な態度でした」(セ・リーグ某球団関係者)
しかし実際にはこの時期、NPBはすでにミズノ社へ新統一球を発注していた。つまり昨秋の段階で、早くも“最初のウソ”をついていたことになる。
「邪推になりますが、NPB側は『圧力に屈してボールを変えた』という見方をされたくなかったのかもしれない。コミッショナーの肝煎りで導入した統一球に、『それ見たことか、失敗だったじゃないか』という烙印(らくいん)が押されることは避けたかったのでしょう」(前出・パ某球団幹部)
そして、黙っていればわからない程度に“微調整”するだけのつもりが、想定以上に飛ぶようになってバレバレになり、認めるしかなくなってしまった――。この時期になって公表した理由は、そんな情けないものだったようだ。
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