W杯グループリーグの抽選が行なわれ、世界各国がいよいよ戦闘モードに入った。
日本代表の最初の目標はグループリーグの突破だ。C組はコロンビア(FIFAランキング4位)、ギリシャ(同12位)、コートジボワール(同17位)、そして日本(同48位)。この4ヵ国で決勝トーナメント進出の2つの枠を争うことになる。
FIFAランキングで見る限り、日本は圧倒的格下だが、世間的には「楽な組に入った」「決勝トーナメント進出確実!」といった楽観論であふれている。
はたして専門家はどう見ているのか? 1974年の西ドイツ大会以来、W杯10大会連続観戦のサッカージャーナリスト、後藤健生氏はこう語る。
「個人的には、4ヵ国いずれの実力も拮抗(きっこう)しているという印象です。コロンビアは確かにトップシード国ではあるけれど、断然ずぬけているわけではないので、どの国にも勝ち上がるチャンスがある。日本にとって、良すぎるとまではいかないが、悪くない組に入ったのではないでしょうか」
とはいえ、さすがに「コロンビアは頭ひとつ抜けている」という声が多いのも事実。残る3国でひとつの枠を争うこと可能性が高い。
日本代表はどう戦うべきか、後藤氏が続ける。
「コートジボワールの選手は体が強く、ギリシャは上背のある選手が多い。そういったチームに対し、小さな選手が連動しながら機敏に動き回る日本の攻撃はかなり通用するはず。11月のオランダ戦やベルギー戦がいい例ですよ。
ただし、コートジボワールやギリシャの特徴は、逆に日本の守備の弱点に対してがっちりはまってしまうのが心配です。パワーとスピードを兼ね備えたドログバを止め切れるのか? そして、ゴール前の空中戦で、屈強なギリシャの選手に競り勝てるのか? 守備的ボランチの数を増やしたり、サイドバックに高さのある酒井宏樹を入れるといった対策が必要となりそうです。
ただ、いずれにしても完封するのは難しい。1失点程度に抑えて、相手より多くゴールを挙げて勝つというのが現実的な考え方でしょう」(後藤氏)
日本、ギリシャ、コートジボワールは熾烈な争いになりそう。だが、「日本には好材料がある」と後藤氏はいう。
「日本は3試合とも、ブラジル北東部、中西部の蒸し暑い都市で戦います。とはいえ、夏の東京の過酷さに比べたら天国みたいなもの(笑)。日本の選手は高校時代、夏の昼間の35℃ぐらいある炎天下でも強行軍で試合をやっているし、試合中のこまめな給水の大切さについても、子供の頃から教育されている。そして代表チームとしても、中東や東南アジアでW杯予選、アジア杯を戦うなかでデータが蓄積されていますから、暑さ対策なら世界のトップクラス。しかも、今年のコンフェデ杯を通じて、選手やスタッフがブラジルの気候を身をもって経験している。これらは他国にない大きなアドバンテージとなるはずです」(後藤氏)
しかし、アフリカ勢のコートジボワールなら、もっと暑さに強いはずでは?
「彼らはもともと熱帯地域に住んでいるだけに、かえって暑さに対する警戒心が薄いのです。大会前からの綿密な気候順応や試合中の給水といった対策を怠りがちで、試合の終盤になってアフリカ勢の足が止まるという試合を、過去のW杯で何度も見てきました。ブラジルW杯では前後半途中での給水タイム導入が検討されているようですが、そんなときでも水を飲まずにぼーっと立っている選手がいるかもしれません。それに最近のアフリカの一流選手はごく若いうちから欧州クラブに引き抜かれるので、なおさら暑さに対する耐性がない。だから、コートジボワールはけっこうブラジルの気候に苦しめられるというのが、僕の見立てです」(後藤氏)
暑い時期にサッカーをやる習慣のないギリシャに至っては言うに及ばず。力が拮抗した3ヵ国だけに、コンディションが勝敗を大きく左右する可能性が高い。日本の決勝トーナメント進出は、けっして楽観論ではないのだ!
(写真/益田佑一)
■週刊プレイボーイ52号「総力特集12ページ ブラジルW杯 超観戦ガイド!!」より 【関連記事】
・10月の東欧遠征から一転、ザックジャパンが息を吹き返した理由
・セルジオ越後の一蹴両断! 第334回「ようやくロシア脱出! ACミラン本田の爆発に期待したい!」
・サッカー記者のブラジル訪問記「遠い、高い、悪い。でも、また行きたいのがブラジル」
・セルジオ越後の一蹴両断! 第333回「ザックジャパンはいっそのこと“死の組”に入ったほうがいい!」
・ザックジャパンに入れるべき新戦力は「中村俊輔らのベテラン選手」という声
日本代表の最初の目標はグループリーグの突破だ。C組はコロンビア(FIFAランキング4位)、ギリシャ(同12位)、コートジボワール(同17位)、そして日本(同48位)。この4ヵ国で決勝トーナメント進出の2つの枠を争うことになる。
FIFAランキングで見る限り、日本は圧倒的格下だが、世間的には「楽な組に入った」「決勝トーナメント進出確実!」といった楽観論であふれている。
はたして専門家はどう見ているのか? 1974年の西ドイツ大会以来、W杯10大会連続観戦のサッカージャーナリスト、後藤健生氏はこう語る。
「個人的には、4ヵ国いずれの実力も拮抗(きっこう)しているという印象です。コロンビアは確かにトップシード国ではあるけれど、断然ずぬけているわけではないので、どの国にも勝ち上がるチャンスがある。日本にとって、良すぎるとまではいかないが、悪くない組に入ったのではないでしょうか」
とはいえ、さすがに「コロンビアは頭ひとつ抜けている」という声が多いのも事実。残る3国でひとつの枠を争うこと可能性が高い。
日本代表はどう戦うべきか、後藤氏が続ける。
「コートジボワールの選手は体が強く、ギリシャは上背のある選手が多い。そういったチームに対し、小さな選手が連動しながら機敏に動き回る日本の攻撃はかなり通用するはず。11月のオランダ戦やベルギー戦がいい例ですよ。
ただし、コートジボワールやギリシャの特徴は、逆に日本の守備の弱点に対してがっちりはまってしまうのが心配です。パワーとスピードを兼ね備えたドログバを止め切れるのか? そして、ゴール前の空中戦で、屈強なギリシャの選手に競り勝てるのか? 守備的ボランチの数を増やしたり、サイドバックに高さのある酒井宏樹を入れるといった対策が必要となりそうです。
ただ、いずれにしても完封するのは難しい。1失点程度に抑えて、相手より多くゴールを挙げて勝つというのが現実的な考え方でしょう」(後藤氏)
日本、ギリシャ、コートジボワールは熾烈な争いになりそう。だが、「日本には好材料がある」と後藤氏はいう。
「日本は3試合とも、ブラジル北東部、中西部の蒸し暑い都市で戦います。とはいえ、夏の東京の過酷さに比べたら天国みたいなもの(笑)。日本の選手は高校時代、夏の昼間の35℃ぐらいある炎天下でも強行軍で試合をやっているし、試合中のこまめな給水の大切さについても、子供の頃から教育されている。そして代表チームとしても、中東や東南アジアでW杯予選、アジア杯を戦うなかでデータが蓄積されていますから、暑さ対策なら世界のトップクラス。しかも、今年のコンフェデ杯を通じて、選手やスタッフがブラジルの気候を身をもって経験している。これらは他国にない大きなアドバンテージとなるはずです」(後藤氏)
しかし、アフリカ勢のコートジボワールなら、もっと暑さに強いはずでは?
「彼らはもともと熱帯地域に住んでいるだけに、かえって暑さに対する警戒心が薄いのです。大会前からの綿密な気候順応や試合中の給水といった対策を怠りがちで、試合の終盤になってアフリカ勢の足が止まるという試合を、過去のW杯で何度も見てきました。ブラジルW杯では前後半途中での給水タイム導入が検討されているようですが、そんなときでも水を飲まずにぼーっと立っている選手がいるかもしれません。それに最近のアフリカの一流選手はごく若いうちから欧州クラブに引き抜かれるので、なおさら暑さに対する耐性がない。だから、コートジボワールはけっこうブラジルの気候に苦しめられるというのが、僕の見立てです」(後藤氏)
暑い時期にサッカーをやる習慣のないギリシャに至っては言うに及ばず。力が拮抗した3ヵ国だけに、コンディションが勝敗を大きく左右する可能性が高い。日本の決勝トーナメント進出は、けっして楽観論ではないのだ!
(写真/益田佑一)
■週刊プレイボーイ52号「総力特集12ページ ブラジルW杯 超観戦ガイド!!」より 【関連記事】
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