東京から南に約1000km、小笠原諸島の西之島の南南東約500mの海上に“新島”が出現したのは11月20日のこと。以降、新島は“成長”を続け、直径約200m、標高約25mという大きさにまでなっている(11月24日時点)。
海底にある火山が噴火し、その噴火口から大量の溶岩が半島状に突き出す形で海面に流れ込み、新しい溶岩島ができたのだ。
西之島近海で海底火山の噴火が確認されたのは、実に40年ぶり。なぜ、この時期に新島を誕生させるほどの活発な火山活動が始まったのか?
立命館大学 歴史都市防災研究所の高橋学教授がそのメカニズムを説明する。
「マグマは、大陸プレート同士がこすれ合うときに生じる高い摩擦熱によりプレートが溶かされて生成されます。今回、海底火山が噴火した場所は太平洋プレートがフィリピン海プレートの下に沈み込む境界付近。
ところが、この太平洋プレートの沈み込む速さが年間10cmだったのが、東日本大震災以降は30、40cmと、実に3、4倍もスピードアップしているんです。
そのため、年に3cmほどしか移動しないフィリピン海プレートに異様なストレスがかかり、震災前よりも大量のマグマが生成されるようになったため、今回の噴火が起こったと考えられます」
高橋教授によると、猛烈な速さで沈み込む太平洋プレートの影響で、西之島周辺はおろか、日本列島の太平洋側の広い範囲で大量のマグマが地中に生成されつつあるという。
ということは、さらなる新島が生まれる可能性がある?
「太平洋プレートの沈み込みによる摩擦熱により、大量のマグマがたまっていると考えられる、太平洋プレートとフィリピン海プレートの境目の西側。つまり、富士山から伊豆諸島、小笠原諸島にかけて、東西の幅200kmほどの帯状エリアで新島が誕生する可能性はゼロではありません」(高橋教授)
それは素晴らしい! 陸から約22kmまではその国の領海。太平洋上のあちこちに新しい島が次々に生まれれば、日本の領海がどんどん広がる。こんなめでたいことはない。
ところが、地震学者らによれば、喜んでばかりもいられないのだとか。どうして?
高橋教授がこう心配する。
「現段階では、地中にたまったマグマの量はそれほどでもないと思われます。だからこそ、今回の爆発は小さな島ができるくらいの、小規模な爆発にとどまったのでしょう。
しかし、このまま太平洋プレートがものすごい速さで沈み込み続けるなら、マグマがどんどんたまり、富士山から小笠原諸島にかけてだけでなく、東北、北海道エリアの火山までもが次々に噴火する事態も考えられるのです」
太平洋プレートは、関東沖、東北沖、北海道沖で北米プレートと境界を接している。
「関東、東北、北海道は北米プレートの上にあります。太平洋プレートと北米プレートの境目に、このままマグマがたまり続ければ、北米プレート上の火山、例えば八甲田山(はっこうださん/青森)や磐梯山(ばんだいさん/福島)などの活動が活発になると考えられます」(高橋教授)
首都圏も危うい。
「首都圏は太平洋プレートの上にフィリピン海プレートが乗り、さらにその上に北米プレートが重なっている場所。こんなプレート状況にある場所は世界でもここだけ。太平洋プレートの沈み込み速度のアップは、間違いなく首都圏の災害リスクを高めていることを忘れてはいけません」(高橋教授)
20世紀以降、マグニチュード8.8以上の地震が起きた後、その震源周辺では必ず大規模な火山爆発が起きている。だが、日本は2年前に同規模の大地震を体験したものの、まだ火山噴火は起きていない。
「つまり、今回の西之島の海底火山の噴火は、各地で起こるであろう本格的な火山噴火の『始まり』の段階、つまり初期段階と見なすべきなのです」(高橋教授)
そもそも海底火山の噴火で生まれた新島にしても、火口に海水が大量に流れ込んだ途端、水蒸気爆発を起こして粉々に吹っ飛んでしまうことも珍しくない。そうなれば、せっかくの領海拡大もぬか喜びになってしまう。
どうやら、無邪気に新島誕生を喜んでいる場合ではなさそう。地震や火山噴火など、迫りくる天災に備えたほうがよさそうだ。
(取材/ボールルーム) 【関連記事】
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海底にある火山が噴火し、その噴火口から大量の溶岩が半島状に突き出す形で海面に流れ込み、新しい溶岩島ができたのだ。
西之島近海で海底火山の噴火が確認されたのは、実に40年ぶり。なぜ、この時期に新島を誕生させるほどの活発な火山活動が始まったのか?
立命館大学 歴史都市防災研究所の高橋学教授がそのメカニズムを説明する。
「マグマは、大陸プレート同士がこすれ合うときに生じる高い摩擦熱によりプレートが溶かされて生成されます。今回、海底火山が噴火した場所は太平洋プレートがフィリピン海プレートの下に沈み込む境界付近。
ところが、この太平洋プレートの沈み込む速さが年間10cmだったのが、東日本大震災以降は30、40cmと、実に3、4倍もスピードアップしているんです。
そのため、年に3cmほどしか移動しないフィリピン海プレートに異様なストレスがかかり、震災前よりも大量のマグマが生成されるようになったため、今回の噴火が起こったと考えられます」
高橋教授によると、猛烈な速さで沈み込む太平洋プレートの影響で、西之島周辺はおろか、日本列島の太平洋側の広い範囲で大量のマグマが地中に生成されつつあるという。
ということは、さらなる新島が生まれる可能性がある?
「太平洋プレートの沈み込みによる摩擦熱により、大量のマグマがたまっていると考えられる、太平洋プレートとフィリピン海プレートの境目の西側。つまり、富士山から伊豆諸島、小笠原諸島にかけて、東西の幅200kmほどの帯状エリアで新島が誕生する可能性はゼロではありません」(高橋教授)
それは素晴らしい! 陸から約22kmまではその国の領海。太平洋上のあちこちに新しい島が次々に生まれれば、日本の領海がどんどん広がる。こんなめでたいことはない。
ところが、地震学者らによれば、喜んでばかりもいられないのだとか。どうして?
高橋教授がこう心配する。
「現段階では、地中にたまったマグマの量はそれほどでもないと思われます。だからこそ、今回の爆発は小さな島ができるくらいの、小規模な爆発にとどまったのでしょう。
しかし、このまま太平洋プレートがものすごい速さで沈み込み続けるなら、マグマがどんどんたまり、富士山から小笠原諸島にかけてだけでなく、東北、北海道エリアの火山までもが次々に噴火する事態も考えられるのです」
太平洋プレートは、関東沖、東北沖、北海道沖で北米プレートと境界を接している。
「関東、東北、北海道は北米プレートの上にあります。太平洋プレートと北米プレートの境目に、このままマグマがたまり続ければ、北米プレート上の火山、例えば八甲田山(はっこうださん/青森)や磐梯山(ばんだいさん/福島)などの活動が活発になると考えられます」(高橋教授)
首都圏も危うい。
「首都圏は太平洋プレートの上にフィリピン海プレートが乗り、さらにその上に北米プレートが重なっている場所。こんなプレート状況にある場所は世界でもここだけ。太平洋プレートの沈み込み速度のアップは、間違いなく首都圏の災害リスクを高めていることを忘れてはいけません」(高橋教授)
20世紀以降、マグニチュード8.8以上の地震が起きた後、その震源周辺では必ず大規模な火山爆発が起きている。だが、日本は2年前に同規模の大地震を体験したものの、まだ火山噴火は起きていない。
「つまり、今回の西之島の海底火山の噴火は、各地で起こるであろう本格的な火山噴火の『始まり』の段階、つまり初期段階と見なすべきなのです」(高橋教授)
そもそも海底火山の噴火で生まれた新島にしても、火口に海水が大量に流れ込んだ途端、水蒸気爆発を起こして粉々に吹っ飛んでしまうことも珍しくない。そうなれば、せっかくの領海拡大もぬか喜びになってしまう。
どうやら、無邪気に新島誕生を喜んでいる場合ではなさそう。地震や火山噴火など、迫りくる天災に備えたほうがよさそうだ。
(取材/ボールルーム) 【関連記事】
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