『炭水化物が人類を滅ぼす』という、少々ショッキングなタイトルと、冒頭1行目には「本書では、中年オヤジでもスリムに変身できる方法を紹介する」という書き出し……。
『傷はぜったい消毒するな』(光文社新書)など、従来の常識を覆す傷の湿潤治療の提唱者としても知られる現役医師の夏井睦(まこと)氏が、自らの実体験からその有効性を確認した「糖質制限」を紹介する。
ただし、本書が単なるダイエット本と一線を画すのは夏井氏の旺盛な好奇心が、糖質(穀物などに含まれるでんぷん類や砂糖などの糖類)と人類との関係を徹底的に掘り下げる方向へと向かっている点だ。夏井氏に聞いた。
―「誰でも簡単に、短期間で努力なしに、ほぼ確実に痩せられる……」というのは大変魅力的ですが、「人類を滅ぼす」というタイトルの言葉はかなり強烈ですね。
「ええ、この本にも書いたのですが、そもそもの始まりは私の実体験でした。糖質、つまり炭水化物と砂糖類を制限したのです。ご飯の量を減らし、日本酒を糖質のない焼酎に変えただけで、70kgあった体重が、たった半年で11kgも減ったのです。しかも、高血圧まで治ってしまった……。
何しろ自分の体で『人体実験』ができるのですから、医者としてこんなに面白いコトはない。僕は一度何かに興味を持つと、徹底的に追求せずにはいられないタチです。『人類と食』というテーマについてどんどんと掘り下げてゆくうちに、人間の体にとって必要不可欠な栄養素だと思われていた炭水化物や砂糖類などの『糖質』が、実際には単なる『嗜好品』でしかなく、むしろ人間の体にさまざまな悪影響を及ぼしているという結論に至ったのです。
実際、私の周りで糖質制限を試した人たちには、ただ痩せるというダイエット効果だけでなく、さまざまな症状の改善が報告されています。一番わかりやすいのは糖尿病で糖質制限を行なえば、ほぼ間違いなく症状が改善する。
それならなぜ糖尿病の専門医がこれを勧めないのかといえば、糖質制限が広まるとインスリン注射を打つ患者さんがいなくなって商売にならないからです(笑)。
ほかの症状の改善でいえば、食事の後で眠くならなくなり、仕事や勉強の効率が上がった、睡眠障害やうつ病が改善した、バイアグラを飲まなくてもED(勃起不全)が治って勃つようになった……など、さまざまです。糖質制限を使わない手はありません」
―とはいえ、自分のように白いご飯もパスタもラーメンも大好きで、しかも甘党……という人間にとって、それらが全部食べられないというのは、なかなかハードルが高いです……。
「いや、別に無理やりやらなくてもいいんです。人類は今後、糖質制限をしてスリムで健康な人と、そうでない人に二分されていきますから(笑)。ただ、糖質さえ制限すれば肉も魚も、一般的にダイエットの敵といわれている油脂も制限しなくていいんですから、これほど楽で確実な方法はないと思います。
この本の後半にも書きましたが、歴史を振り返ると人類の生活は穀物という『炭水化物』と出会ったことで大きく変化し、そこからすべての『文化』『文明』が生まれたと言ってもいい。長い間、穀物がある種の『神』として崇められてきたのもそのためです。
しかし、穀物は単なる食物でしかなく、むしろ大量摂取によって人類を不健康にする『偽りの神』だったということに、われわれはそろそろ気づくべきなのです」
(取材・文/川喜田 研 撮影/山本尚明)
●夏井 睦(なつい・まこと)
1957年生まれ、秋田県出身。東北大学医学部卒業。練馬光が丘病院「傷の治療センター」長。消毒とガーゼによる治療撲滅を掲げ、インターネットサイト『新しい創傷治療』【http://www.woundtreatment.jp/】を開設
■『炭水化物が人類を滅ぼす 糖質制限からみた生命の科学』
光文社新書 924円
著者は自らの体で糖質制限を試し、その効果や危険性のなさを徹底検証。本書では、そのレポートとともに、栄養素としての糖質の性質、カロリーという概念とその算出法のいいかげんさを独自の考察を交え研究。さらに、糖質から見た農耕の起源にも迫る
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『傷はぜったい消毒するな』(光文社新書)など、従来の常識を覆す傷の湿潤治療の提唱者としても知られる現役医師の夏井睦(まこと)氏が、自らの実体験からその有効性を確認した「糖質制限」を紹介する。
ただし、本書が単なるダイエット本と一線を画すのは夏井氏の旺盛な好奇心が、糖質(穀物などに含まれるでんぷん類や砂糖などの糖類)と人類との関係を徹底的に掘り下げる方向へと向かっている点だ。夏井氏に聞いた。
―「誰でも簡単に、短期間で努力なしに、ほぼ確実に痩せられる……」というのは大変魅力的ですが、「人類を滅ぼす」というタイトルの言葉はかなり強烈ですね。
「ええ、この本にも書いたのですが、そもそもの始まりは私の実体験でした。糖質、つまり炭水化物と砂糖類を制限したのです。ご飯の量を減らし、日本酒を糖質のない焼酎に変えただけで、70kgあった体重が、たった半年で11kgも減ったのです。しかも、高血圧まで治ってしまった……。
何しろ自分の体で『人体実験』ができるのですから、医者としてこんなに面白いコトはない。僕は一度何かに興味を持つと、徹底的に追求せずにはいられないタチです。『人類と食』というテーマについてどんどんと掘り下げてゆくうちに、人間の体にとって必要不可欠な栄養素だと思われていた炭水化物や砂糖類などの『糖質』が、実際には単なる『嗜好品』でしかなく、むしろ人間の体にさまざまな悪影響を及ぼしているという結論に至ったのです。
実際、私の周りで糖質制限を試した人たちには、ただ痩せるというダイエット効果だけでなく、さまざまな症状の改善が報告されています。一番わかりやすいのは糖尿病で糖質制限を行なえば、ほぼ間違いなく症状が改善する。
それならなぜ糖尿病の専門医がこれを勧めないのかといえば、糖質制限が広まるとインスリン注射を打つ患者さんがいなくなって商売にならないからです(笑)。
ほかの症状の改善でいえば、食事の後で眠くならなくなり、仕事や勉強の効率が上がった、睡眠障害やうつ病が改善した、バイアグラを飲まなくてもED(勃起不全)が治って勃つようになった……など、さまざまです。糖質制限を使わない手はありません」
―とはいえ、自分のように白いご飯もパスタもラーメンも大好きで、しかも甘党……という人間にとって、それらが全部食べられないというのは、なかなかハードルが高いです……。
「いや、別に無理やりやらなくてもいいんです。人類は今後、糖質制限をしてスリムで健康な人と、そうでない人に二分されていきますから(笑)。ただ、糖質さえ制限すれば肉も魚も、一般的にダイエットの敵といわれている油脂も制限しなくていいんですから、これほど楽で確実な方法はないと思います。
この本の後半にも書きましたが、歴史を振り返ると人類の生活は穀物という『炭水化物』と出会ったことで大きく変化し、そこからすべての『文化』『文明』が生まれたと言ってもいい。長い間、穀物がある種の『神』として崇められてきたのもそのためです。
しかし、穀物は単なる食物でしかなく、むしろ大量摂取によって人類を不健康にする『偽りの神』だったということに、われわれはそろそろ気づくべきなのです」
(取材・文/川喜田 研 撮影/山本尚明)
●夏井 睦(なつい・まこと)
1957年生まれ、秋田県出身。東北大学医学部卒業。練馬光が丘病院「傷の治療センター」長。消毒とガーゼによる治療撲滅を掲げ、インターネットサイト『新しい創傷治療』【http://www.woundtreatment.jp/】を開設
■『炭水化物が人類を滅ぼす 糖質制限からみた生命の科学』
光文社新書 924円
著者は自らの体で糖質制限を試し、その効果や危険性のなさを徹底検証。本書では、そのレポートとともに、栄養素としての糖質の性質、カロリーという概念とその算出法のいいかげんさを独自の考察を交え研究。さらに、糖質から見た農耕の起源にも迫る
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