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なぜショウジョウバエが実験動物としてよく使われるのか?

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よく生物学の実験ではショウジョウバエが利用されます。なぜショウジョウバエが実験動物としてよく使われてるのでしょうか?


どこにでもいる!
ショウジョウバエは世界中のほぼどこにでも棲んでいて、すぐつかまえることができます。しかも、遺伝学の材料として最適なのです。ショウジョウバエは、卵が親になって次の卵を生むまでの世代時間が短く、1週間から10日くらいしかかかりません。

飼育が簡単!
また、飼育も交配も容易で、一組の雌雄ペアで最高では1000匹以上という非常にたくさんの子孫を残します。餌も安く、取り扱いも容易です。

目で変異を確認しやすい!
古典的な遺伝学では、交配して子孫の形質を見ることが必須だったので、これは非常に有利でした。また、ショウジョウバエの変異の多くは、目で見てはっきりわかります。たとえば、本当は赤い目が白くなったり、茶色や紫色になるとか、羽がカールして丸まっているとか、茶色の体の色が真っ黒になったり、黄色になったりします。

遺伝の確認も簡単!
これらの理由に加えて、ショウジョウバエのオスは、そのオスの父親と母親からもらった染色体同士が組み替えを起こしません。つまり、父親の染色体の性質と母親の染色体の性質が、遺伝的に混ざらないのです。

メスの場合も、この組み替えを抑制するバランサー染色体というものが作られていて、これを使うことで、たくさんの遺伝子の性質を染色体ごと、子孫に安定して伝えることができます。

遺伝学の「黄金の道具」
これ以外にも、にもさまざまな独自の特徴があり、ショウジョウバエはまさに遺伝学の「黄金の道具」なのです。

さらに、最近のゲノム科学の急速な進展で、2000年にはショウジョウバエの全ゲノム配列が決定されました。そしてゲノムについても、ショウジョウバエは実に取り扱いやすい性質を持っていました。

まず、全ゲノムの長さが短かったことです。ショウジョウバエの全ゲノムは、1億2000万文字分しかありません。これでもずいぶん長いのですが、30億文字分の長さを持つ哺乳類に比べると20分の1以下です。

ところが、そのゲノムの上にある遺伝子の数は、ショウジョウバエでは16000個程度です。人間はまだ完全に確定はしていませんが、最新の推測でも35000個程度といわれているので、たったの2倍強です。

また、数は確かに2倍でも、哺乳類の場合、先に触れたピリオドも3種類、クリプトクロームも2種類と、よく似た遺伝子が複数存在することも多く、2倍の複雑さを持っているとは言えません。

そして、ひとつの遺伝子(タンパク質)の長さは、ハエでも人間でも、同じくらいのものが多いので、残りは、ほとんどがタンパク質にはならない部分です。進化過程で使われなくなった偽遺伝子などゴミもあります。これらは、今後、その深い意味が見出される可能性はありますが、現在のところあまり意味はないと考えられています。

実際、ヒトの染色体地図を見ると、遺伝子がちらほら並んでいますが、ショウジョウバエではぎっしりと詰まっています。そのため、分子生物学者にとっても、ショウジョウバエは、染色体DNAがコンパクトでとても取り扱いやすいのです。

そういった様々な理由により、生物学の実験にはショウジョウバエがよく利用されるのです。

参考リンク「氷河期がきたらどうする!?将来の食糧問題を解決する生物はハエ?」
参考本「時間の分子生物学(粂和彦)」


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