2020年の東京五輪に向け、東京という街はどう変貌していくのだろうか?
1964年の東京五輪では国立競技場や代々木体育館など大型施設の建設・増築だけでなく、首都高や新幹線など各種交通インフラを徹底的に整備し、東京は都市として大変身。そして約50年が経ち、東京は世界有数の成熟都市となった。
今回、最も大きな変貌を遂げるのが、選手村とメディアセンター、多くの競技場が設置される晴海、豊洲、有明、台場といった湾岸エリアだ。このエリアは近年、すでに大型タワーマンションが続々と建設され、東日本大震災を経ても地価が上昇している。五輪招致決定直後から、このエリアのマンションは問い合わせやモデルルームへの来場者が殺到しているという。
不動産コンサルタントの長嶋修氏はこう語る。
「このエリアの不動産価格が今後も上がるのは確実です。ただ、問題はこの熱狂がいつまで続くか。大会まで7年ありますから、ともすると五輪後に“プチバブル崩壊”ともなりかねない。大事なことは、五輪後にどんな街にするかというコンセプトがしっかりしているかどうかです。
『五輪後も持続可能』というコンセプトを掲げていたロンドン五輪では、競技場などの箱モノは解体可能なものが多かったですし、解体しないものはどんな用途にするのか十分に検討されていました。東京でも同じようなコンセプトで開発されるなら、湾岸地域は『買い』。そうでないなら『夢の跡』となってしまうでしょう」
前回の東京五輪のメイン会場は、新宿区から渋谷区にかけての代々木・神宮エリアと世田谷区の駒沢エリア。当時の都心から見れば西側の“郊外”だったが、五輪のおかげで急速に発展し、文化の中心も東から西へシフトしたといわれている。
一方、今回の五輪の中心となる湾岸エリアは東京23区の南東部。東京スカイツリーの開業という追い風が吹いている東側に再び“覇権”が戻ってくるのか?
「五輪で恩恵を受けるのは、東側でも湾岸地域が中心。江東区でいえば豊洲や有明、辰巳といった辺りです。同じ区内でも東陽町、木場辺りから北の“内陸部”に関しては、マンション開発などの影響は限られるでしょう。東側も、荒川を越えた先には直接的な影響はほぼないでしょう」(不動産経済研究所・企画調査部)
都市論に詳しいライターの速水健朗氏もこう予測する。
「確かに最近、独身女性が住みたい街に人形町や月島など東側の下町が含まれるようになっており、代官山や中目黒、恵比寿など“西側偏重”の空気は崩れている。都心に近い割に地価が安いし、面白いカフェやバルが増えているからです。ただ、いくらスカイツリーがあっても、隅田川より東側は関係ないですね。地価は安いですが、古くから住む人々が多く土地の新陳代謝が遅い。西から東への“文化の流れ”のムーブメントが指摘されますが、僕は発展可能性があるのは都心に近い地域止まりだと思います」
選手村から8km以内に85%の競技場を集約させた東京五輪。街の変貌も、“コンパクト”に収まりそうだ。
(取材/木場隆仁、頓所直人)
■週刊プレイボーイ39号「五輪開催でTOKYOの『パワーバランス』はどう変わる?」より 【関連記事】
・三浦展「東京のつくられ方」散歩 第2回「東京五輪」がいまひとつ盛り上がらない理由を東京論の視点から考える(PART1)
・東京都のバスを24時間運行させても風営法を改正しなければ意味がない?
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1964年の東京五輪では国立競技場や代々木体育館など大型施設の建設・増築だけでなく、首都高や新幹線など各種交通インフラを徹底的に整備し、東京は都市として大変身。そして約50年が経ち、東京は世界有数の成熟都市となった。
今回、最も大きな変貌を遂げるのが、選手村とメディアセンター、多くの競技場が設置される晴海、豊洲、有明、台場といった湾岸エリアだ。このエリアは近年、すでに大型タワーマンションが続々と建設され、東日本大震災を経ても地価が上昇している。五輪招致決定直後から、このエリアのマンションは問い合わせやモデルルームへの来場者が殺到しているという。
不動産コンサルタントの長嶋修氏はこう語る。
「このエリアの不動産価格が今後も上がるのは確実です。ただ、問題はこの熱狂がいつまで続くか。大会まで7年ありますから、ともすると五輪後に“プチバブル崩壊”ともなりかねない。大事なことは、五輪後にどんな街にするかというコンセプトがしっかりしているかどうかです。
『五輪後も持続可能』というコンセプトを掲げていたロンドン五輪では、競技場などの箱モノは解体可能なものが多かったですし、解体しないものはどんな用途にするのか十分に検討されていました。東京でも同じようなコンセプトで開発されるなら、湾岸地域は『買い』。そうでないなら『夢の跡』となってしまうでしょう」
前回の東京五輪のメイン会場は、新宿区から渋谷区にかけての代々木・神宮エリアと世田谷区の駒沢エリア。当時の都心から見れば西側の“郊外”だったが、五輪のおかげで急速に発展し、文化の中心も東から西へシフトしたといわれている。
一方、今回の五輪の中心となる湾岸エリアは東京23区の南東部。東京スカイツリーの開業という追い風が吹いている東側に再び“覇権”が戻ってくるのか?
「五輪で恩恵を受けるのは、東側でも湾岸地域が中心。江東区でいえば豊洲や有明、辰巳といった辺りです。同じ区内でも東陽町、木場辺りから北の“内陸部”に関しては、マンション開発などの影響は限られるでしょう。東側も、荒川を越えた先には直接的な影響はほぼないでしょう」(不動産経済研究所・企画調査部)
都市論に詳しいライターの速水健朗氏もこう予測する。
「確かに最近、独身女性が住みたい街に人形町や月島など東側の下町が含まれるようになっており、代官山や中目黒、恵比寿など“西側偏重”の空気は崩れている。都心に近い割に地価が安いし、面白いカフェやバルが増えているからです。ただ、いくらスカイツリーがあっても、隅田川より東側は関係ないですね。地価は安いですが、古くから住む人々が多く土地の新陳代謝が遅い。西から東への“文化の流れ”のムーブメントが指摘されますが、僕は発展可能性があるのは都心に近い地域止まりだと思います」
選手村から8km以内に85%の競技場を集約させた東京五輪。街の変貌も、“コンパクト”に収まりそうだ。
(取材/木場隆仁、頓所直人)
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