朝の連続テレビ小説としてかつてない大人気ぶりを見せる『あまちゃん』。舞台は東北、第一話の物語は2008年からスタートしており、当初の話題といえば、2011年3月11日の震災をどう描くのか、ということだった。しかし番組開始後約四カ月、出演者の豪華さと宮藤官九郎脚本の面白さ(小ネタ等)、何よりヒロイン能年玲奈の魅力等で、震災云々はほとんど関係なく、絶大な支持を集めることに成功した。
が、防災の日の翌日である9月2日放送の第133話で、とうとう東日本大震災が登場した。登場してしまった。そしてその描き方に対する批判の声が上がった。曰く、原発事故をスルーしているのではないか、と。
絶大な人気を誇るドラマであるだけに、こうした批判に対する反論も即座に上がった。曰く、原発事故が問題となったのは3月11日より後じゃないのか(第133話は3月11日当日のみの話)、舞台の岩手と原発のある福島は距離が相当あるのに無理矢理関連付けろってのか、等々。
こうしたやりとりが、『あまちゃん』に震災が登場した9月2日に一挙に噴出した。が、実際のところ連続ドラマがその辺をどう描くのか、描くべきなのかは、放送一回分で判断できるものでもないだろう。
その後一週間少々経過するが、確かに『あまちゃん』の劇中では原発という言葉は出てこない。かといって原発事故を完全スルーしているわけでもなく、9月9日放送の第139話では、「東北の海産物は危険だという風評被害に対して何度も何度も水質調査をした」というセリフがある。
また、『あまちゃん』というドラマ自体を見ていれば分かることだが、震災そのものがテーマのドラマではない。右も左も分からないようなヒロインがいくつもの困難を周囲も巻き込んでやや過剰なまでに前向きに克服していくコメディだ。
震災はクライマックスに配置された最大の困難だが、ヒロインの力で克服すべきいくつもの困難の内のひとつ、ということでもある。震災の被害状況そのものを描くのは、物語の主眼ではないのである。原発反対の気持ちも分かるし、現実の、それも極めて記憶に新しい出来事を題材とする以上、あれこれ言いたくなってしまうのは仕方ないが、作品が何を描こうとしているのか、というところを無視してしまうのもどうかと思うのである。
ということで残りとうとう三週間弱となってしまった『あまちゃん』、これからも楽しみにしております! と言いつつ、まあ確かに原発事故についてもう一言二言ぐらいあった方が違和感もなく、批判もかわせたんじゃないかなーという気もしますが。
(田中 元)
※写真はNHK連続テレビ小説「あまちゃん」より
【関連情報】
NHK連続テレビ小説「あまちゃん」
http://www1.nhk.or.jp/amachan/
[ 関連リンク ]
「あまちゃん」リアルGMT発表、中でも異色のアイドルユニットが広島「MMJ」
あまちゃんファンの漫画家も多数参加! ファンブック発売記念イベント『あまちゃんオフ会』レポート
大人気ドラマ『あまちゃん』での東日本大震災後の展開はどうなる? ネットで議論活発化!