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加藤嘉一「アメリカも中国も関係なく、『憲法』は国内問題として処理すべきです!」

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憲法改正の問題を語る際、しばしば取り上げられるのがアメリカや中国、韓国など「外国の反応」という視点。それは本当に“事の本質”を突いているでしょうか?

8月15日の終戦記念日に前後して、安倍首相が自ら「歴史的使命」と位置づける憲法改正をめぐり、さまざまな議論がありました。

戦後の日本は戦勝国のアメリカがつくった「平和憲法」のもとで、平和国家としての道を歩んできた。近年は“それ”が時代に即さず、無理や矛盾を生み始めているのも事実。自民党政権がおそらくあと3年は続くであろうことを考えると、今後は憲法改正の手続きに関する問題や、改正の本丸である集団的自衛権と国防軍の是非など、現実味を帯びた議論が白熱化していくでしょう。

海外に目を向けると、中国や韓国は「日本は軍国主義に戻るつもりか」などと激しく反発しています。一方、日本と安全保障条約を結ぶ同盟国であり、現在の日本国憲法をつくった張本人でもあるアメリカは、改正の是非に関しては曖昧(あいまい)な態度をとり続けています。

アメリカは終戦直後のGHQ統治時代に「日本を非軍事国家にする」「独立した民主主義国家にする」と言っていたにもかかわらず、朝鮮戦争や冷戦が勃発すると、自国の利益のために米軍基地を日本国内に置き、“反共産主義”の防波堤としての意味合いを日本に持たせた。尖閣諸島問題にしても、日中摩擦の原因のひとつは、1972年の沖縄返還の際にアメリカが「尖閣は日本の領土である」と明示しなかったことに見いだせる。

憲法改正論議に関しても、

「(有事の際、共に行動する可能性を考えれば)集団的自衛権は容認されるべきだ」

「しかし、一方で過去の“再現”が起き、日本において軍の存在が強大になりすぎてはまずい」

「(東アジア地域におけるアメリカの利益を考えれば)対中関係はできるだけ穏便に保ってほしい」

といった彼らの“希望”が公に表明されることは今後もおそらくない。ロビイング的に水面下で関連部門に伝えてくるのでしょう。






なぜ、アメリカは日本に対し、いつもこのような「冷徹なまでの曖昧さ」を発揮するのか。理由は明白です。アメリカは東アジアに死活的な利益を持っているが、自身は東アジア国家ではないから。地政学的に重要な場所ではあるけれど、問題が起きれば“対岸の火事” でしかない―もっと言えば、対岸の火事にしておきたいから。

だからこそ、ぼくは声を大にして言いたい。憲法問題は、中国や韓国からの外交的反発も、アメリカの“戦略的曖昧策”も超越して、「内政問題」として処理すべきです。結論が改憲であれ護憲であれ、何が日本国民のためになるのかを大いに議論し、自ら決めるべきです。

ぼく自身は、日本が主権国家である以上、集団的自衛権に関しては改憲するまでもなく、解釈の範囲に含めて行使すればいいと考えています。中国が台頭し、しかも米中が“接近”していく流れのなか、日本は自分の身を自分で守るべく体制を整えていかなければいけないと思います。

ただ、当然のことながら国内にはいろんな意見がある。アメリカから押しつけられた憲法など認めないという人もいれば、これまで平和を維持してきた憲法をなんとしても守り続けるべきだという人もいる。先ほどは内政問題と言いましたが、憲法改正に関する議論をオープンかつ活発に行なうことで、「日本が今、自分たちの未来を独立自主の精神で決めようとしている」ということを国際社会にアピールするいい機会にもなると思います。

安倍首相にお願いしたいのは、憲法改正を国民に問うのであれば、まずはロードマップを具体的に示し、さらに「平和国家の放棄ではない」と高らかに宣言すること。それなくして建設的な議論ができるというなら、その理由を逆に教えて!!

今週のひと言






「アメリカも中国も関係なく、






『憲法』は国内問題として処理すべきです!」

●加藤嘉一(かとう・よしかず)






日本語、中国語、英語でコラムを書く国際コラムニスト。1984年生まれ、静岡県出身。高校卒業後、単身で北京大学へ留学、同大学国際関係学院修士課程修了。2012年8月、約10年間暮らした中国を離れ渡米。現在はハーバード大学アジアセンターフェロー。最新刊『不器用を武器にする41の方法』(サンマーク出版)のほか、『逆転思考 激動の中国、ぼくは駆け抜けた』(小社刊)など著書多数。中国の今後を考える「加藤嘉一中国研究会」がついに発足! 【関連記事】
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