
うっすーいシートで光を超吸収。
蛾の大きな目って、顕微鏡でよーーく見ると表面が特殊な構造になっていて、それが光の反射を抑えています。その構造をグラフェンで真似ることで、ただでさえ夢の素材であるグラフェンの使い道がさらに広がるかもしれません。
イギリスのサリー大学の研究チームは「ナノ・テクスチャリング」という新手法で、薄いグラフェンのシートの光の吸収効率を劇的に向上させました。その研究に関する論文はScience Advancesに掲載されています。
グラフェンには電気伝導性や強度の高さといったいろんな特長があって、夢の素材と言われています。いろんな形での実用化が期待されていて、グラフェン研究の先駆者であるAndre Geim氏とKonstantin Novoselov 氏は2010年にノーベル賞を受賞しました。
グラフェンは光学的にも、紫外線から可視光線、そして赤外線まで、幅広い周波数の光を均一に吸収できるという興味深い特徴があります。ただ問題は厚さが原子ひとつ分しかないので、光や熱の吸収効率は高くないことです。そのため今までは、光電子工学的な応用先が限られていました。
そこでサリー大学の研究者たちは、自然の素材にヒントを求めました。蛾の目は、光の反射を手がかりに獲物を探す捕食者から逃げやすいように、光をとても良く吸収する構造になっています。この性質は、目の表面に六角形に並んだ小さな突起が防音の壁のような感じで働くことで実現されています。ただ、蛾の場合音の反響ではなく光の反射が抑えられているわけです。
「蛾は目の微細な構造によって、非常に暗い環境でも目が見えます」論文共著者のRavi Silva氏はプレスリリースで言っています。「これは光を目の中心へと集めることで機能しており、さらに捕食者に居場所を知らせてしまう反射を抑えるという効果もあります。我々は同様の手法を使い、グラフェンを同じようにパターン化することで、非常に薄く、かつ効率的に光を吸収する素材を作り出しました。」
グラフェンのシートの光吸収率は、通常だと2~3%しかありません。でもSilva氏らの開発手法によって、95%というほぼ完ぺきな吸収率が実現されました。

Silva氏によれば、たとえばこの素材で太陽光パネルをコーティングすれば、発電効率を大幅に向上させられます。そうすれば、たとえば家の中のような薄暗いところでも太陽光発電が可能になり、将来の省電力な家電のエネルギーは壁紙発電で全部OK、なんてことになるかもしれません。また、蛾の目の構造はテレビやコンピューターのモニタをグレアフリーにするプラスチックの素材にも使われてきましたが、グラフェンも同じような形で使えるのかもしれません。
Image Credit:Brookhaven National Laboratory、University of Surrey
source: University of Surrey via Nanowerk News
Jennifer Ouellette - Gizmodo US[原文]
(miho)
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