「ココイチ廃棄カツ」は氷山の一角! 世間を賑わせた産廃業者ダイコー、製麺業者みのりフーズを主役とした食品廃棄物横流し事件。しかし、業界関係者への取材では、この件に対する驚きの声は聞こえなかった……。さまざまな問題が常態化している食品業界の裏側に迫る!
◆そもそもの問題は廃棄物や横流しに対する認識の違い
異物混入の疑いがあるとして、大手カレーチェーンの壱番屋が廃棄予定だったビーフカツを産廃業者ダイコーが無断で製麺業者のみのりフーズに横流しした食品廃棄物の流通問題。その後の調べで壱番屋のカツ以外にみのりフーズの倉庫から確認された食品108品目のうち、味噌や冷凍食品のフライドポテトなど約30品目がダイコーからの横流し品と判明した。
食品廃棄物の流通事情に詳しい河岸宏和氏は、「今回のビーフカツは商品を包む袋をそのままにして売ったからバレた」と明かす。
「もし袋からカツを出してパック詰めして、別の段ボールに梱包したら一切わからなかったはず。製造元を隠して廃棄するはずの商品を再出荷することは、食品・小売業界で広く行われているんです」
◆消費・賞味期限の変更は違法ではない
通常は商品ごとに印刷されている消費・賞味期限だが、横流しされた廃棄食品の場合は段ボールに印刷かシールで貼られているだけというケースも珍しくないとか。
「それは消費・賞味期限の日付変更をしやすくするため。食品衛生法では最終加工した日が製造日と定義され、“解凍日”や“ラップ詰めした日”など業者の都合によって再設定ができます。つまり、消費・賞味期限の変更自体は違法ではないのです。そこを巧みに突いた食品問屋の“悪知恵”であり、こうした状況が食品廃棄物の流通を許す一因になっています」(河岸氏)
実際、食品や小売り、飲食など各業界関係者に話を聞いたが、マニュアルで徹底管理された大手はともかく、鮮度が落ちたり、消費・賞味期限を少し過ぎたから廃棄との考えはあまりないようだ。
「少し変色したくらいのレバーならタダ同然ですが、買い取ってくれるところもあります。廃棄料を払わなくていいし、買い手側も保存料につけるから大丈夫と平然としています」(某焼き肉店従業員)という怖い話や、「その日仕入れて余った海鮮食材は鮮度的にお客さんに出せないため、家に持ち帰って自分で食べる」(居酒屋オーナー)や「賄い用食材に充てている」(ダイニングバー店主)のような自分たちで消費するケースもある。
【河岸宏和氏】
食品安全教育研究所代表。食肉処理場や食品工場をはじめ、さまざまな食の現場で品質管理に携わる。著書に『激安食品が30年後の日本を滅ぼす!』(辰巳出版)など
写真/消費者庁ホームページより
― 食品業界の闇 ―
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