今年の夏は、気温だけでなくモノの値段もグングン上昇した。
例えば、ティッシュやトイレットペーパーなどの紙製品。大手製紙会社の幹部が吐露する。
「うちは円安が1円進めば、営業利益4億円が吹っ飛びます。長く価格転嫁は見送ってきましたが、もう耐え切れないと最近値上げしました。実は、秋に再値上げするという話もあります」
牛乳は10月から値上げする。乳業各社が酪農家から買い上げる生乳価格はリッター5円の値上げ、それを受けて乳業各社の出荷価格も1~4%程度値上げ。ところが、これでも経営はキツいと千葉県内の酪農家は言う。
「乳牛のエサはほとんど輸入に頼っているから生産コストが高くなってしょうがない。10月の値上げまで踏ん張れずに廃業する農家が出るかもしれないよ」
北海道・釧路でシーズンが始まった秋の味覚・サンマ漁も、かなり苦戦している。
「燃料が高すぎる。サンマ漁は水面を煌々(こうこう)と照らして魚を集めて獲るんだけど、集魚灯の発電機の燃料もあるから大変。しかも温暖化の影響か、ここ2年は漁場がどんどん東に遠のいているから、よけいにコストがかかる。それに輪をかけて、今年は漁獲量が少ない。漁に出ても、燃料費分をペイできるかどうか……」(釧路漁港の組合関係者)
経済評論家の山崎元氏が、現在の物価上昇を解説する。
「主な値上げの要因は、アベノミクスによる円安で、外国から輸入する原料のコストが上がっていることでしょう。いま政府は金融緩和をしてデフレを脱却しようとしているわけですが、経済政策の波及効果には順序があります。
まず円安にして株価を上げ→景気を良くして失業率を下げ→賃金が上がって消費が活発になり→最終的には物価が継続的に上がるようにする。現在はその状態をつくる途中の段階というわけです」
つまり、最近の値上げは「景気回復」や「賃金上昇」を伴ったものではないということ。
「それと、もうひとつの要因は原油の高騰。これは経済政策とは関係のない、喜ばしくない物価上昇ですね。エネルギー価格はかなり広い範囲で物価に影響しますし、原油価格がどう推移するかは世界情勢次第で予想がつきにくいですから」(山崎氏)
そしてもちろん、原油にも円安による輸入コスト増がさらに加わる。最近では、レギュラーガソリンの価格が1リットル当たり160円近辺に高止まりしているが、これでは輸送費だって高くつく。
景気回復のための初期段階である円安に加え、原油の高騰というダブルパンチ。賃金上昇の伴わない物価上昇は、しばらく続きそうだ。
(取材/頓所直人)
■週刊プレイボーイ36号「値上げの夏 悲鳴だらけの列島レポート」より 【関連記事】
・アベノミクスで給料が上がった職業、下がった職業
・気鋭のエコノミスト・永濱利廣が解説「2年後、景気回復の実感が広がります!」
・美人経済評論家が指摘!「今の円安・株高はアベノミクスのせいじゃないです」
・20代~30代男性の預貯金額、「50万円未満」が約半数の衝撃
・結局のところ、賃貸と持ち家はどちらが得なのか?
例えば、ティッシュやトイレットペーパーなどの紙製品。大手製紙会社の幹部が吐露する。
「うちは円安が1円進めば、営業利益4億円が吹っ飛びます。長く価格転嫁は見送ってきましたが、もう耐え切れないと最近値上げしました。実は、秋に再値上げするという話もあります」
牛乳は10月から値上げする。乳業各社が酪農家から買い上げる生乳価格はリッター5円の値上げ、それを受けて乳業各社の出荷価格も1~4%程度値上げ。ところが、これでも経営はキツいと千葉県内の酪農家は言う。
「乳牛のエサはほとんど輸入に頼っているから生産コストが高くなってしょうがない。10月の値上げまで踏ん張れずに廃業する農家が出るかもしれないよ」
北海道・釧路でシーズンが始まった秋の味覚・サンマ漁も、かなり苦戦している。
「燃料が高すぎる。サンマ漁は水面を煌々(こうこう)と照らして魚を集めて獲るんだけど、集魚灯の発電機の燃料もあるから大変。しかも温暖化の影響か、ここ2年は漁場がどんどん東に遠のいているから、よけいにコストがかかる。それに輪をかけて、今年は漁獲量が少ない。漁に出ても、燃料費分をペイできるかどうか……」(釧路漁港の組合関係者)
経済評論家の山崎元氏が、現在の物価上昇を解説する。
「主な値上げの要因は、アベノミクスによる円安で、外国から輸入する原料のコストが上がっていることでしょう。いま政府は金融緩和をしてデフレを脱却しようとしているわけですが、経済政策の波及効果には順序があります。
まず円安にして株価を上げ→景気を良くして失業率を下げ→賃金が上がって消費が活発になり→最終的には物価が継続的に上がるようにする。現在はその状態をつくる途中の段階というわけです」
つまり、最近の値上げは「景気回復」や「賃金上昇」を伴ったものではないということ。
「それと、もうひとつの要因は原油の高騰。これは経済政策とは関係のない、喜ばしくない物価上昇ですね。エネルギー価格はかなり広い範囲で物価に影響しますし、原油価格がどう推移するかは世界情勢次第で予想がつきにくいですから」(山崎氏)
そしてもちろん、原油にも円安による輸入コスト増がさらに加わる。最近では、レギュラーガソリンの価格が1リットル当たり160円近辺に高止まりしているが、これでは輸送費だって高くつく。
景気回復のための初期段階である円安に加え、原油の高騰というダブルパンチ。賃金上昇の伴わない物価上昇は、しばらく続きそうだ。
(取材/頓所直人)
■週刊プレイボーイ36号「値上げの夏 悲鳴だらけの列島レポート」より 【関連記事】
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