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海でおしっこする? 世界中の人が「せーの!」で一気に海でおしっこしたらどうなるの?

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「いっせーの、せっ!」

海でおしっこしたことありますか? 海に何度も行けば行く程、もう海でおしっこしちゃえってなるものです。ダイバーなんてきっと海おしっこしている人が大半なのでは。こんなに広い海だもの、ちょっとおしっこしても平気へいき。では、世界中の人が一度に一気に海でおしっこしたらどうなるのでしょう? 考えもしなかった疑問を真面目に、科学的に取り組んだ事例を紹介します。
 

 


初めて海でおしっこしたのはいつのことだったか…。

きっと、まだ私が小さい時だったのだろう。家族でニュージャージーの海岸に夏休みに遊びに行った時だろう。ビーチに近い3部屋あるアパートを夏の間に借りて、毎年遊びに行っていたものだ。

(海で初めておしっこした時のことは覚えていないが)海から出たくない、ずっと入っていたいと思っていたのは鮮明に覚えている。父親が私を海に投げ込むのが楽しかったのだ。

なんとなくでいいから思い出せと言われれば、きっと初めて海でおしっこしたのは、そうやって父親に何度も海に投げ込まれている時だったのではないかと思う。海で長時間遊び、指はしわしわ、唇は真っ青、水着の中のあちこちに砂がはいっているとなると、わざわざ熱い歩道を通って道の向こうにあるビーチハウスのトイレに行くのはひどく面倒だ。また、両親もびしょびしょでトイレに急ぐ子どもをそんな所まで連れて行くのをきっと面倒だと思ったに違いない。

今でも、家族の恒例行事として私と夫は姪っ子をつれて同じニュージャージーの海岸に毎年のように遊びに来ている。初めて姪っ子と一緒に来たのは、彼女がまだ8歳の時。海でしちゃいなさいと尿意をもよおした姪っ子に言うと、彼女は初めはためらっていた。海の中でリラックスしてと伝えると、彼女は私を恥ずかしそうに見つめてきた。初めての海トイレトレーニングである。


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あれから4年、姪っ子も海でおしっこするのはお手のものだ。あとは、私の夫を説得するだけ。彼は海で用をたすことを嫌がる。嫌がる夫を私と姪っ子で挟み込み、2人で一緒に海でおしっこする。

私「姪っ子ちゃん、おしっこしたいって言ってなかった?」

姪っ子「うん。今したとこ。」

私「あら、私もよ。一緒だったね。ねぇ、あなた、そっちちょっと温かくない?」

さて、海でおしっこの話をこれ以上続ける前に、まず言っておきたいことがある。私は、プールやその他小さな水場でおしっこするよと言っているのではない。それはない。

しかし、海ならいいんじゃないだろうか

海でのおしっこはOKだ、というのを夫に理解してもらうために、私と姪っ子は科学的(そして化学的)視点から考えてみることにした。ビーチハウスのWiFiを使い、私と姪っ子が導きだした「海おしっこはOKである」という証明が以下である。


証明 A:基本的にはただの塩水である


おしっこ、尿とはつまり、体が必要としない化学化合物を身体の外にだす流れである。しかし、身体が必要としない/欲しないものだからといって、尿と共に出ていく化合物が人にとって有害だというわけではない(とはいえ、飲んだり目にいれてもいいという話でもないのだが)。1971年のNASAの報告書(No. CR-1802)に、平均的な人間の尿は95%以上は水分、そこに1-2g/L程度のナトリウムと塩素イオンが入っているというのだ。つまり、基本は水と塩

これは、海水に見られる分子と同じではないか。ブリタニカ大百科事典によると、海の96.5%は水だという。そこに尿よりももっと多い塩分、1リットル19gの塩化物と11gのナトリウムがはいっているのだ。なるほど、ここまでは問題ない。

尿と海水、この2つをもっと濃い少量で見てみると、それぞれに他にも塩の分子がはいっていることがわかる。例えば、尿にはカリウムがあり、これは約0.75g/Lの濃度。一方で海水のカリウムの濃度は0.4g/L。が、これはそこまで大きな違いではない。


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人間の尿の分子構造が海水と多少違うのは、クレアチンと尿素があるというところだ。どちらも体から窒素を外にだすために使われる。クレアチンは、筋組織の中にエネルギー源として貯蔵されるために作られる副産物の窒素環式化合物。通常、人の尿には平均して0.7g/Lほどの割合で含まれている。一方で尿素は、もっと濃く、9g/Lほどで、これは窒素が多いからである。この分子は肥料等によく使われる。また、保温用クリーム等にも使用される。


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証明 B:もし全人類が一気におしっこしたとしても…


全てのものは関係しあっている。人間の世界では、尿がちょっとばかし問題にみえる。が、尿は水の中で分解し、炭酸アンモニウムへと変化し、そして植物等の自然に吸収されるのだ。ブリタニカ大百科事典によると、窒素を含む化合物は、海に生息する生物が成長するのに重要な要素だという。

が、もしかして人の尿にある1リットル中に9グラムという量は、さすがに多すぎるではないか? そこで計算してみた。

ロンドンのキング・ジョージ病院の臨床生化学部の生物学者であるStuart Jones氏曰く、人は1度用をたすさいに、0.2-0.5リットルの尿を排出するという。ということは、平均して1回のおしっこで約3グラムの尿素がでるということだ。


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地球の人口は70億。さて、大西洋に全人類が1度に用をたしたとする。大西洋の水量は約3.5×10の20乗リットル。全人類が一度にしたおしっこに含まれる尿素は、約6×10の-11乗g/L。これを化学的にいうと、1ピコモルの尿素。つまり、ほーんのちょぴっとのことで、おしっこ水だと大騒ぎするような濃さでは全くないのである。

Jones氏は「もちろん、尿はやがて広がり(大西洋だけじゃなく)全ての海へと広がっていくわけですが、これには相当長い時間がかかりますけど、まぁ、ね」と語っている。


証明 C:海の生き物に支障はあるのか?


地球に住んでいるのは人間だけではない。私たちと共存するる生物が海にはたくさんいる。が、クジラやイルカが海の外に家があるとは思えない。ということは、海の中でおしっこしているのだ。

リサーチで見つけたこれらのレポートによると、ナガスクジラは日に970リットルもおしっこするという。さらに含まれるナトリウムと塩化物の量は、人間の23倍。

ここで再び、生物学者のJones氏登場。曰く、「ここで鍵となるのは、何十億という生き物によって、尿素は世界中で絶え間なく自然環境へと排出されており、結局はどこかで海にいきつくということ。これはまさに自然の当たり前の流れなのだ。むしろ、必要不可欠なもの。尿素、窒素の肥料となるこの成分なしでは、多くの植物は生きては行けなくなるだろう。」

次に、クジラや魚は排出しない人間の尿にしか含まれないものがあるだろう。例えば、整腸剤等の薬がそれだ。人間が排出したバースコントロールホルモンが魚を女性化させているという報告もある。また、抗不安薬が原因で、魚の生態が変化しているという研究もあがってきている。

上記の理由から、水が循環しない小さな水場での水中おしっこはすすめないのである。Jones氏は、これは彼の得意分野ではないとしながらも「不自然なまでに膨大な量が、川等の小さな水場に排泄されれば、その自然環境にダメージを与える問題がでてくることになるかもしれない」と話す。が、何度も言うが、これはかなりの人数が小さな水場でおしっこした場合であり、海でのおしっことはわけが違う。


証明 D:感染の心配なし?


尿とはそもそも不潔なものなのか? 健康な人間が排出する尿は無害である。Jones氏曰く、血液感染症を煩っていない人のものならば、おしっこはキレイだという。(逆に言うと、血液感染症を煩っている人は、海でおしっこしない方がいいのだ。)

さらに、Jones氏は以下のように続けた「1度身体の外に出てしまえば、尿はバクテリアにとって栄養満点のリッチなカクテルのようなもの」。だからこそ、時におしっこに虫がわくのである。しかし、海の中ならば、バクテリアを新たにわかせているのではなく、すでにそこにいるバクテリアに栄養を与えるだけなのだ。


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証明終わり。さらに証明を進めることもできるが、今回はここまで。これを見れば、私の夫も、私だけでなく、プロの見解がわかるだろう。Jones氏は言う「考えてないで、海でおしっこしちゃいなさい」と。「もともと尿は無害であり、さらに海の中ではすぐに薄まってしまう。海にはおしっこよりももっと危険で心配すべきものが他にあるだろうに。」

確かにそうだ。例えばサメの方がおしっこよりももっと心配である。

(※LAUREN WOLFさんのこの記事は、米Gizmodoが、Chemical & Engineering NewsのブログネットワークであるCENtral Scienceから許可を得て転載したものです。)


なるほど。じゃ、これからはもっとどうどうと海でおしっこできますね!


Images: Shutterstock/Christopher Parypa/Sylvie Bouchard/Max Topchii


そうこ(LAUREN WOLF - CENTRAL SCIENCE 米版)

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