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自分を表現するのがアートなら、贋作はなんなんでしょうね…自分を殺すアート?
表現主義絵画から中国古来の名磁器まで、鑑定士も唸る中国の贋作ブームはなにかと悪い面ばかり報じられがちですが、本物と寸分違わぬ作品を再現するにはそれなりの技量も問われます。それはどの程度のものなのか?
どうしても知りたくなった中国生まれのロンドン在住アーティスト、ゼンハン・ハオ(Zhenhan Hao)さんは、英国王立芸術学院(RCA)修士号の卒論である実験を行いました。
裕福なクライアントを装って、模倣専門の工房2社の画家・陶芸家に作品を発注したのです。ただし通常のヨーロッパからの発注と違い、依頼したのは「自分を描くこと」。自分を殺すプロに、自分を出すよう頼んでみたんです。
ハオさんは米ギズにメールでこう書いてます。
「発注内容に触れる前に、ひとりひとりと話をして、気持ちが繋がるようにしました」、「各模造職人さんの経験とスキルに合わせて説明の内容も変えました」
こうして中国陶芸の主産地・景徳鎮(Jingdezhen)(中国・オランダ贋作陶器の産地でもある)の陶芸家ふたりには「働く自分の経験を描いた壺と鉢」、芸術品コピー主産地として有名な大芬村(Dafen Village)の画家5人には「自分の仕事場と自画像」を依頼。
続く数ヶ月間はメールや対面で会って交流を深めてゆきました。
こうしてでき上がったのがここにある作品なのですが、どうでしょう? 普段から模倣するよう体に叩き込まれた巨匠のスタイルはそのまんまなのだけど、これはこれで複雑で刺激的な新しいアートという気がしませんか?
例えばこちらは「アルルのゴッホの寝室」そのまんまで、オブジェがモダンになった「ゴッホ贋作絵師の寝室」。
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こちらは「バロック絵画の巨匠ピエール・シュブレイラスの贋作創作に励む画家の自画像(シュブレイラス調)」。
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古物骨董と思って近寄ってみると…。こちらのアーティストさんには「人、車など、地元の市場の光景を描く」よう依頼してみました。
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こちらは女性陶芸家にお願いした壺。陶器を創るまでの工程が丁寧に描かれています。
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「贋作職人自身のイマジネーションとクリエイティビティの発揮が求められる作品を職人さんと一緒に模索して作り上げたという感じですね」、「最後は友だちになってしまった人もいるし、ほとんどの人はもう一度お仕事ご一緒したいと言ってくれました」(ハオさん)
アートの模造に対する感じ方は様々ありますけど、模造と芸術の境目ってなんなんでしょうね。こうして相手の顔が見えると、ハッと胸をつかれます。他の作品はこちら。
[We Make Money Not Art]
KELSEY CAMPBELL-DOLLAGHAN(米版/satomi)
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