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株価の乱高下でトクをしているのは海外投資家だけ

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6月5日、安倍首相がアベノミクスの総仕上げともいえる「成長戦略」の中身を発表したが、その会見の最中に日本の株価が急落。その内容に落胆した市場関係者たちは、せめて日銀が金融面で追加策を打ち出すことに期待した。しかし11日、日銀の黒田総裁は特別な追加策を行なわないと発表。株価はさらに下落した。なぜ、こんなことになってしまったのか?

まずは5月下旬から続く株価の乱高下の舞台裏を知るべく、大手外資系金融機関のエコノミスト、T氏の解説を聞こう。

「ここ半年間で起きた激しい株価変動のほとんどは、外国の機関投資家たちによって起こされたものです。長年の不景気に苦しみ続けた日本の投資家たちの多くはアベノミクスを信じきれず、投資行動が慎重になってしまった。だから外国勢の素早い動きによってもたらされる株価変動に後から乗っかる形で右往左往してしまい、激しい乱高下が起きたのです」

しかし、後手にまわった日本勢の動きが今の株価を支えていると、T氏は続ける。

「つまり衆院選直後から徐々に株価を上昇させたのは外国勢で、それを見て安心した日本勢が乗っかり、さらに株価が上昇した。そして今度は“いろんな事情”で外国勢が株を売却して株価が下落し始めた。でも日本勢は高価格で購入しているから売却できないため、日経平均株価はギリギリの水準で踏みとどまっている情勢です」

“いろんな事情”とは、具体的になんなのか?

「最大の事情は、アメリカの中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)のバーナンキ議長が、リーマン・ショック以来続けてきた大規模なドルの量的緩和を予定より早く縮小するかもしれないとの発言を5月22日にしたことです」(T氏)

アメリカの量的緩和縮小が、日本株にも影響を与えていたというのだ。

「金融緩和は景気を刺激するために行ないます。緩和の逆は引き締めですが、一気にやると景気が冷え込む恐れがある。従って“緩和の縮小”という中間のステップを踏みながら、ゆっくりと出口に向かうのです。FRBが量的緩和の縮小を行なうかもしれないということは、アメリカの景気は本格的に上向きだと判断できる。だから外国の投資家たちは日本株を売り、そのお金でアメリカ株を買ったのです」(T氏)

しかし、乱高下の原因はそれだけではなかった。

「さらに別の事情も重なりました。多くのヘッジファンドが6月に決算を迎える。彼らは決算前に利益を確定させたいので、もとから日本株を売るタイミングを探っていた。そんなときにバーナンキ発言があったので、特に売りが集中したのだと思います。5月23日、日本国内では何も起きていないのに、唐突な印象で株価の下落が起きたのは以上のような事情が背景にあったのです」(T氏)

ちなみにヘッジファンドとは、少数の大口投資家から資金を集めるプライベート型の投資信託のこと。広く小口の投資を募る一般的な投資信託と違い、投資対象に規制がなく、顧客以外には情報公開の必要もない。小さなヘッジファンドでさえ、投資できる最低額は1億円以上の場合が多い。

大金持ちと機関投資家が顧客という、儲けるためならなんでもアリのヘッジファンドの都合も、日本の株価の急落に一役かっていたわけだ。

(取材・文/本誌政治経済特捜班)

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