この夏、帰省のため高速バスを予約しようと思ったら、「どこも満席で取れなかった」「いつも利用していたバスツアーが消滅していた」「昨年より運賃が上昇していた」などと驚いた人もいるのではないか。
実は、この8月から「新高速バス乗合制度」が始まり、ツアーバス業界が大きな変革を遂げたのである。
「新高速バス乗合制度」とは、昨年4月に発生した関越自動車道高速ツアーバス事故を受け、高速・貸切バスの安全と安心を回復するために、国土交通省が制定したもの。これにより、路線バス会社が自社のドライバーと車両で運行していた「高乗合バス」と、旅行会社が貸切バス事業者のドライバーと車両で運行していた「高速ツアーバス」の2つが統合され、以下のように規制されることになった。
・乗合バス事業者が自らの監督のもと、貸切バス事業者に運行を委託できる
・過労運転防止のため、ワンマン運行の上限距離が厳格化される
・運行にあたっては、大都市圏のターミナル駅周辺でバス停留所確保が義務づけられる
利用者にしてみると、見た目や予約方法などは以前のままなので、特に大きな変化があったようにも思えない。だが、バス事業者にしてみると、事業から撤退せざるをえない業者が出るほど深刻なのである。
その最大の理由が「バス停留所の確保」だ。『高速ツアーバス連絡協議会』に加盟している大手ツアーバス会社は、共同で停留所を設置する。だが、未加盟の中小バス会社は独自に停留所を設置しなければならない。これでは費用的にも、労力的にも全く割に合わないのだ。
関越自動車道高速ツアーバス事故がきっかけとなった今回の新制度に、なぜ、バス停留所の設置が義務付けられたのか? 国交省はその理由を、「違法駐停車や周辺環境への悪影響等の問題」としている。
確かに、週末の夜ともなれば、ツアーバスの車両が一部の路上を占拠し、歩道にはバスを待つ人があふれる状況だ。しかし、関越道の事故はあくまで乗務員や車両の管理体制の問題。停留所の義務化まで新規制で一緒にやってしまうのはちょっと乱暴ではないのだろうか。
そうした疑問に、あるバス業界関係者は、「新高速乗合バス制度導入の真の目的は格安業者の締め出し」だと話す。
「今回の新制度導入の背景に、乗合バス会社の圧力があるとウワサされています。乗合バスはこれまでツアーバスにかなりの乗客を奪われてきました。それを巻き返すため、関越道の事故に乗じて、安全運行とは直接関係のない『バス停留所の設置』の義務づけを訴えたのではないか?というのです。停留所の設置義務は、これまで価格破壊の先頭を走っていた中小ツアーバス会社にとって大きな負担になりますからね。大手ツアーバス会社にとっては今回の規制は願ったり叶ったりでしょう。新制度で新規参入が難しくなり、価格競争も緩やかになります。それが結果的に自分たちのシェアと利益を守ることにつながりますから」
これはあくまでもひとつの“推測”である。乗客の思いは「安全な運行」、ただそれだけだ。
(撮影/岡倉禎志) 【関連記事】
・「新高速乗合バス制度」で格安ツアーバスが激減する
・真性鉄オタ覆面座談会「俺たちは“鉄クズ”じゃない!」
・サッカー記者のブラジル訪問記「遠い、高い、悪い。でも、また行きたいのがブラジル」
・世界一周旅行は20万円(サーチャージ、空港使用税含)、4日間で可能
・“鉄ヲタ”がプランする、1週間で回れる「47都道府県主要駅の歩き方」
実は、この8月から「新高速バス乗合制度」が始まり、ツアーバス業界が大きな変革を遂げたのである。
「新高速バス乗合制度」とは、昨年4月に発生した関越自動車道高速ツアーバス事故を受け、高速・貸切バスの安全と安心を回復するために、国土交通省が制定したもの。これにより、路線バス会社が自社のドライバーと車両で運行していた「高乗合バス」と、旅行会社が貸切バス事業者のドライバーと車両で運行していた「高速ツアーバス」の2つが統合され、以下のように規制されることになった。
・乗合バス事業者が自らの監督のもと、貸切バス事業者に運行を委託できる
・過労運転防止のため、ワンマン運行の上限距離が厳格化される
・運行にあたっては、大都市圏のターミナル駅周辺でバス停留所確保が義務づけられる
利用者にしてみると、見た目や予約方法などは以前のままなので、特に大きな変化があったようにも思えない。だが、バス事業者にしてみると、事業から撤退せざるをえない業者が出るほど深刻なのである。
その最大の理由が「バス停留所の確保」だ。『高速ツアーバス連絡協議会』に加盟している大手ツアーバス会社は、共同で停留所を設置する。だが、未加盟の中小バス会社は独自に停留所を設置しなければならない。これでは費用的にも、労力的にも全く割に合わないのだ。
関越自動車道高速ツアーバス事故がきっかけとなった今回の新制度に、なぜ、バス停留所の設置が義務付けられたのか? 国交省はその理由を、「違法駐停車や周辺環境への悪影響等の問題」としている。
確かに、週末の夜ともなれば、ツアーバスの車両が一部の路上を占拠し、歩道にはバスを待つ人があふれる状況だ。しかし、関越道の事故はあくまで乗務員や車両の管理体制の問題。停留所の義務化まで新規制で一緒にやってしまうのはちょっと乱暴ではないのだろうか。
そうした疑問に、あるバス業界関係者は、「新高速乗合バス制度導入の真の目的は格安業者の締め出し」だと話す。
「今回の新制度導入の背景に、乗合バス会社の圧力があるとウワサされています。乗合バスはこれまでツアーバスにかなりの乗客を奪われてきました。それを巻き返すため、関越道の事故に乗じて、安全運行とは直接関係のない『バス停留所の設置』の義務づけを訴えたのではないか?というのです。停留所の設置義務は、これまで価格破壊の先頭を走っていた中小ツアーバス会社にとって大きな負担になりますからね。大手ツアーバス会社にとっては今回の規制は願ったり叶ったりでしょう。新制度で新規参入が難しくなり、価格競争も緩やかになります。それが結果的に自分たちのシェアと利益を守ることにつながりますから」
これはあくまでもひとつの“推測”である。乗客の思いは「安全な運行」、ただそれだけだ。
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